渡辺淳一著「化粧」上下巻
読ませていただきましたーーっ!
最近恋愛ものを読みたいなってずっと思っていたのですが、本を探しているうちに「恋愛もの」って何ぞや?と疑問に思うようになってしまいました。
また、自分が読みたいと思っている「恋愛もの」のスタイルというか好みも結構左右される。
この「化粧」という物語は数ある恋愛ものの中でも「ラブストーリー」などと言われるロマンチックな物語ではなく、女たちの恋愛模様を描いた作品、と言えるもので、心理描写なんかはほんと、さすがと思えるほど微細で女として共感できる部分も多いのですが、やっぱり男性視点ともいえるかなぁと感じました。
ラブストーリーではないですねw
丁度最近渡辺淳一さんも亡くなられて追悼記念ということで図書館にもおすすめ図書として展示されていたので、読書初心者としてはちょっとハードルが高いかもしれないけど、読んでみよう、と思って借りたモノでした。
もちろんラブストーリーものが読みたくてそれ系等を探していたのもありますが、以前ネットで、この「化粧」は恋愛ものとしておすすめ、と書かれていたので手に取ってみたのであります。しかししかし、やっぱり小説家として大物、というか、文章のうまさが際立ちました。
状況描写、心理描写、すべてが分かりやすく、それにとてもリアリティがあってするっと物語が頭に入ってきましたよ。文章を書くのが上手い人というのは、こういう部分が違うんでしょうね。
それにすごいと思ったのは、女性の服装に関する描写です。
たとえば、ちょっと引用すると……
「スカートは黒の膝までのタイトで横にかなり深いスリットが入っている。シャツは白い地模様で、ウエストを赤い皮で締め、その上にスパンコールの飾りのついたカシミヤのセーターを着て、皮のスエードのブルゾンをひっかけてきた」
これ初版が1982年だから私が生まれた頃ですw渡辺淳一の年齢はというと……1933年生まれだから、49歳の時の作品ってことですか……w
驚愕……w
心理描写とか状況描写以前の問題で、男性なのにこういうファッションの言葉がスラスラ出てくるって言うのは、よっぽどきちんと言葉を調べてから書いているんでしょうね~。ほんと、すごいです。
もちろん私がすごいと思うのはこれだけではなくて、この物語は京都が舞台です。だから3姉妹の言葉も当然京都弁なんですよね。それに長女は舞妓をやっていたし、祇園とか花街のこととか、そこでのルールとか、料亭での芸妓、舞妓の動きとか、習わしとか、まぁ小説にするからそういうことを調べるのは当然なんでしょうけど、本当によく調査されてます。
だって渡辺淳一さんは北海道出身なんですよ?
そういう部分をひっくるめて、さすがとしか言えませんw
ただ私の求めるラブストーリーものとしては……ちょっと的が外れていましたw
やっぱりこれはラブストーリーものではなく、「女の恋愛模様を描いた」男の描く物語ですよw
すっごく大人な世界が展開されておりました。
京都の老舗料亭の女将の娘、3姉妹のそれぞれの恋愛模様を描いているのですが、26歳から東京の銀座でクラブ経営をする長女、23歳でお見合い結婚し料亭を継いだ次女、大学生で自由奔放な三女。
特に、長女がね……w
世界が大人すぎて付いていけなかったw
十代から舞妓として活躍し、26でクラブを経営する美人ママで財界人と顔見知りで、社長とか専務とかにモテまくり。もちろん美女。
私にはかな~り縁もゆかりもない世界ですw
25.6の頃私何してた? なぁんもしてないぞ!w
いや~……w
参りましたw
そこで長女はいろんな男に迫られたりするわけです。その中には長女自身も本気になってしまう相手もいたり……。しかししかし、なんというか、モテまくる美女の話はちょっとお腹いっぱいになってしまいました(笑)
しかも舞台は京都の料亭と東京の銀座のクラブ。縁もないし……なんというか雲の上の話みたいで私にはちょっと親近感がわかず、美人は大変だなぁ、としか思えなかったのです( ・ิω・ิ)
もちろんストーリー自体はすごくよかったです。
過去に映画化もされているみたいですしね。長女・頼子の役は松坂慶子さん!
頼子の愛した男が仇の息子だったという数奇な運命はほんと、切なかったです。
次女の里子も本当に好きな男と一緒にいられない結果になってしまうのは切ないながらも、でも世の中結局うまく回るんだなぁなんて変に納得して見たり。「オールアバウトマイマザー」なんて映画をふと思い出してみたり。
←映画。簡単に言うと、「女はあまり計算しないで本能的にに子供を産む」って感じの物語。
三女の槇子が一番自由奔放で、物語の良心的な存在でしたね。一番ちゃっかりしてて明るいし、一番計算高くて。でも今後その計算高さが槇子自身に返ってきそうな気がする。たとえば名声も金もある男と結婚して安泰なのにふいに不倫をして本気になっちゃったりね……w本人はそんなバカなことしないって言ってましたけど、さぁどうだかw
槇子の印象的なセリフをちょっと載せて終わりたいと思います。
夫の小泉士郎との新婚旅行についての愚痴
(ハワイに新婚旅行なんてやめておけばよかった、という槇子に里子が、)
里子(次女)「けど、正式に結婚してその思い出に旅行するっていうのはまた別と違う?」
槇子「そら結婚式のときはちょっとそんな気いしたけど、二人になったら、全然。それに士郎さんいうたらドジで、マウイ島に行ってみたらホテル予約したはらへんのえ。あの人、おろおろして、結局、うちがフロントにかけおうて、別のホテルを探してもろたんやから」
このシーンで思わず爆笑しましたw
何気なく愚痴ってるけど、士郎さんいい人やんwドジなとこがかわいいw
私この物語を読んで、京都弁がちょっとしゃべれるようになったかもしれません(笑)