(追記)(再掲)夜間シッター、一晩15000円。
(2010年のエッセイを再掲) 先日悲痛な事件が起きた。大阪府に住む母親が育児放棄し、長期帰宅しなかったため、1歳と3歳の姉弟がマンションで餓死してしまったのだ。23歳の若い母親は、ホスト遊びが楽しかったため、と放置の理由を語ったという。 私もまた2人の子どもを育てるシングルマザーである。離婚したのは子どもが1歳の時だったけれど、その頃はホスト遊びが密かな楽しみだったからよく似ている。私は泊まりのシッターさんに来てもらって夜遊びに行ったが、彼女はそれをせず、託児所にも預けず、子どもを放置した、そこが違うだけかもしれない。 この事件について世間の怒りや嘆きは大きい。「子どもよりホストがいいのか」という声を目にするたびに胸が詰まる。そんなことはない。ただ、私も誰かに甘えたかったのだ。 子どもは24時間際限なく甘えてくるけれど、夫がいないシングルマザーは他に同居家族がいなければ、誰にも甘えることができない。夫がいたころはこぼせた愚痴も、誰も聞いてくれる人がいない。これは相当つらいことだ。すべてのイライラを自己処理しなくてはならないのだから。 暮らしに大人の男がいなくなり、その穴を補うかのように私はホストに甘えたり愚痴ったり、時には恋愛ごっこもした。そうすることで、淋しさもストレスも流してきたのだ。 母と子だけで向き合うのはつらい。子どものわけのわからないわがままでギーギー泣き叫ばれた時など、何度か私も泣いた。このままでは親子ともにダメになる、と月に一度はホストクラブを利用し続けた。あのときホストクラブがなかったら。みかちゃん、がんばってるんだね、と認めてくれた彼らがいなかったら、私はどうなっていたかわからない。 6日にAERAでの連載をまとめたエッセイ本「ソーシャルライフログ」が朝日新聞出版される。奇遇にもそこにはホストクラブで遊ぶシングルマザーの私の日常が書かれている。私は「遊んで」いたのではなく「助けを求めて」いた。子どもを棄てた今回の事件の母親もそういう気持ちはあったのではないかなと思う。シングルマザーには夜中にグチを聞いてくれる存在が必要かもしれない。気軽にかけられる「グチダイヤル」ができたらいいかも、と、ふと考えてしまった。【送料無料選択可!】ソーシャルライフログ 電子小説家の自分(単行本・ムック) / 内藤 みか 著今度この事件が映画化されると知って、2010年にAERA-netに掲載されたエッセイをブログに再掲載しました。映画「子宮に沈める」公式サイトはこちら。 追記:子ども達が12歳と17歳になった今、私はホストクラブに行きたいという気持ちがほとんどないと言っていい状態になった。イケメン舞台のお手伝いをしていて、毎日イケメンに囲まれているからといえばそうかもしれないけれど、子ども達の成長が大きい。日々のよもやま話やニュースについて語り合えるようになったので、だいぶ淋しくなくなった。淋しいといえば特定の恋人がいないことだけれど、まあそれもいつかご縁があることでしょう……(ないかもしれないけど)。何が言いたいかというと、子どもがある程度大人と会話ができるくらい、そう、中学生になるくらいまでは、シングルマザーは子ども以外の話し相手が必要なのではないかと思う。ご近所で立ち話をする余裕のあるシングルマザーならいいけれど、そうじゃない環境の人がいろいろと「さみしさがつのるあまり」救いを求めていろいろなことをしてしまうのではないかなと思っている。<さらに追記>シングルマザーだけがホストクラブを利用しているように誤解されたらいけないので追記しておきます。ご主人がいる子育て中のかたも、ホストクラブに行ってます。ご主人にお子さんをみていてもらうのかどこかに預けているのか、それは、わからないけれど……。ご主人がいるのに来るということは、ご主人が話を聞いてくれなかったり、なんらかの不満があるからなんだろうなと感じています。