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台湾役者日記

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2004年06月23日
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カテゴリ:未決函
いましばらく「すごろく」の喩えを続けてみよう。

すごろくで誰よりも速く「上がり」たいと思ったら、二つの方法がある。サイコロに仕掛けをして大きな目を出すか、初めから「上がり」の近くに自分がいるようなすごろく盤を用意するかだ。

幕末から維新にかけての政治闘争では、この二つの次元のゲームが複雑に組み合わされていた。「新選組」は古いすごろく盤の上で「上がり」を目指して奮闘する。「志士」と呼ばれる連中はすごろく盤自体を新しいものに変えようとする。「志士すごろく」だってひとつじゃすまない。当たり前の話だが、その各種「志士すごろく」の盤面においても「上がり」を目指す競争は果てしなく行われる。しかも「謙譲社会」の習慣を悪用して無能ながら居直るやつが、新盤上にも現れたりする。そうかと思うと「幕府すごろく」よりも古くさい「復古すごろく」みたいなのも出てくる。

もう何がなんだか、誰が善人で誰が悪人なんだか分からないような混乱ぶりだ。

ドラマ世界における善人とは、与えられたすごろく盤の上で、一所懸命に、細工も何もなしに、与えられたサイコロを振って生きている人のことを言う。サイコロに仕掛けをしたりすごろく盤そのものを変えたりするやつは、基本的には悪人なのだ。

ところが幕末においては、ここにもうひとつ別のすごろく盤が存在した。それは「世界史」というすごろく盤だ。「幕府すごろく」も各種「志士すごろく」も、実はこの大きな「世界史すごろく」盤上の一個の駒の背中に置かれた小さな小さなすごろく盤に過ぎなかった。「世界史すごろく」盤上でおのれの駒が死んだら、今自分が参加して(させられて)いる「すごろく」の世界がまるごと消失する。幕末政治ゲームの参加者の意識においては、おのれ一個の「分(ぶん)」を上げることとおのれの属する社会を救うこととが一体のものとして捉えられていた。

さあそうすると、「善人」と「悪人」は、どう区別がつくのか。

皆を救う。エゲレスやらメリケンやらの言いなりにゃならねえ。そのためにゃあ「すごろく盤」を取っ替えちまわねえとどうしようもねえ。そう思い込んでいるやつから見れば、古い「すごろく盤」にしがみついて懸命に仕掛けのない(あるいは胴元に有利な仕掛けのある)サイコロを延々と振り続けている「善人」は、これはもう積極的に「悪い人」になっちゃうわけである。

そうかと言って「皆のため。天下のため」と言い立ててるやつが「善人」なのかと言うと、そんなこともない。そいつの信じ込んでる「すごろく」が実はどうしようもない欠陥品で、改良型のが出てきた瞬間にそいつもたちまち「悪人」になっちゃう、ということもあり得る。昨日の「志士」に明日は「天誅」が下っちゃったりするのである。しかも「改良型」だと思ったのが勘違いで、結局さっき殺したあいつの方が正しかった、なんてことも間々あったりしたんだと思う。

これはもう大変な世の中だ。じっとしてても危ない。それは「分(ぶん)」の高いやつほど危ないのだ。だからこそ軽輩者にもチャンスがめぐってくる。だからこそ「芹沢」が「浪士組筆頭局長」になれたりもする。

もともと危ないポジションだった。それを自分は十分にこなせると「芹沢」は踏んでいたのだろう。しかしながら「駒」としてのおのれをどう動かすかについての「構想力」という点では、「土方」の方がはるかに上だった。それはそうだ。「土方」には最初から、「近藤」を旗頭に立てて「幕府すごろく」の「上がり」を目指す、というミッションがあった。ミッションがあるからビジョンが立つ。ビジョンが立つから無軌道な振る舞いはしない。同じ人殺しでも「土方」のは、ミッションのための人殺し。だから全然悪びれない。

ところが「芹沢」ときたら、とりあえずは「浪士組」を牛耳って食い扶持を確保しながら模様眺め、という姿勢だ。ミッションもなにもあったもんじゃない。そんな青臭いことはもう卒業しました、てなもんだ。人を斬るのだって、後先のことを考えてやってない。たんなる鬱憤晴らし。「世が世なら、ここでこんなちんけな『組』の『局長』なんぞに収まってるおれじゃあねえんだ」と言わんばかりのふて腐りぶり。「それならそこをどけ。どかぬなら、死ね」と、こりゃ「土方」でなくても思わざるを得ない。

「芹沢」は殺されるしかなかったのだ。


(つづく)






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Last updated  2004年06月24日 04時17分26秒
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