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台湾役者日記

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2005年01月03日
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カテゴリ:未決函
■ POISON

「POISON」にはビールもあればスコッチもある。ジンも置いてある。簡単なカクテルも作ってくれる。ソフトドリンクならオレンジジュースのようなものがあったと思う。それぞれ1杯いくらで出してくれるが、酒を1本入れてボトルキープすれば費用は最初のボトル代しかかからない。次からは、水割りにする水もオンザロックにする氷もタダ。時によってはピーナツなんかのつまみもタダで出してくれる。まさに常連客を相手にした料金体系であると言えよう。

俺が飲むのはジンで、1本2800元。メイドインUKの「ビーフイーター」。スーパーへ行けば450元くらいで手に入るから約6倍の価格になるが、それでも林森北路の日本人相手のスナックやクラブのボトル代に比べればはるかに安い。次回以降の水や氷代を先払いしていると思えばきわめてリーズナブルな料金設定だ。

で、俺は行くといつもこのキープしてあるジンを飲むんだが、ひとりで行くと結局全然おカネを使わないことになってしまう。しかも酒量はわずか。1回行っても2センチも減らない。女の子に何かを飲ませれば1杯ごとにいくらかが別にかかることになるが、他に客のいない早い時間、早出の人二人と俺、みたいな店内でとりとめもなく世間話なんかしてると、ことさらに「何か飲みなよ」とか勧めるような雰囲気ではなく、こっちも全然酒が進まない。7ミリくらい飲んだらとっとと帰ってしまうことになる。だからと言って、店が混んでくると女の子はあっちこっち飛び回って落ち着かないし、景気のいい客が彼女らに奢りまくるんで、これもやはり費用負担ゼロで俺なんかは早々に退散することになる。

要するに、ひとりで「POISON」へ行くかぎり全然カネを使わないし、ジンはいっこうに減らない。第一ひとりで酒を飲む習慣がないんで、そもそもそんなに頻繁には行かない。だからますますボトルのジンの減りは遅くなる。ちなみに、この店ではボトルキープに期限がない。それをいいことに、去年なんかは半年以上も行かない時期があった。それでも行けばちゃんとボトルが残っている。

小出正之監督『二月的故事』に出てくる「PUB」のシーンはここで撮った。

2003年1月26日、日曜日、撮影初日。

朝から「路地」のシーンと「屋上」のシーンを撮り、17時から「POISON」に入った。「POISON」の開店時刻はほんとはもっと遅いんだが、事前に店の人にお願いして女の子に一人、早く出てきてもらい、店を開けてもらったのだ。

いやあ、ジン1本を1年かけて飲むような客のために、よく協力してくれた。

この前年の夏、小出監督と森貞二撮影監督は映画の準備のために台北に滞在していたが、そのときに俺は二人を連れてこの店に来ていた。連れて行けるような友達はすべて連れて行くようにしないと、普段外で飲まない俺にはパブへ行く機会なんか全然ない。だから、日本から友人知人が来ると必ず、食事の後、この「POISON」に引っ張っていくことにしているのだ。ぎゃくに、他の店を知らない俺にとって、「POISON」は、知人を連れて行ける貴重な酒場ということになる。

店の奥にはダーツの出来るスペースがあって、ダーツ好きの小出監督はこのロケーションがいたく気に入ってしまった。『二月』脚本初稿には「喫茶店」のシーンがあった。それを「パブ」に変えて撮れないか、「POISON」を使ってみてはどうか、そう監督に相談してみた。すると小出監督は喜んで、「それはいい! リア(ヒロイン)にダーツをさせよう!」ということになったのだ。

21時までには撮影を終える、という約束だったんだが、なかなかすぐには終わらない。ついに客が入って来はじめて、店の女主人からストップ要請が出た。なんとか拝み倒して続行しようとしたが、「うちも商売なんで、カンベンしてよ」と言われ、全員悲痛な表情で撤収にかかった。すると、この日早出してくれた女の子が、「明日、もう1回撮れば? 昼から出てきてあげるわよ」と言ってくれた。もちろんわれわれはありがたくその申し出を受け入れ、翌1月27日、午後いっぱいかけて、残りのカットをしっかり撮影したのだった。

この2日目、月曜日の撮影のため、サラリーマンだったわたしは午後から会社を早引けした。

というような歴史的経緯のある店へ、俺はK氏を連れて行こうとしていた。前回いつ行ったか忘れた。そろそろ行ってジンを飲まないといかん、と思っていたところへK氏は来たのだった。


農安街「Poison」2005年1月1日

▲農安街「Poison」のダーツボード 2005年1月1日


(つづく)






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Last updated  2005年01月07日 03時59分11秒
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