999195 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

サイド自由欄

カレンダー

コメント新着

バックナンバー

2024.04
2024.03
2024.02
2024.01
2023.12
2011.11.20
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
―5年前、人里離れたアイルーの村<夜>―

子アイルー (ふら……ふら……)
子アイルー (ドサッ)
子アイルー 「…………」
子アイルー (体中から力が抜けていくニャ……)
子アイルー (父ちゃん、母ちゃん…………)
子アイルー (待ってるニャ……今、オイラが行くニャ…………)

子アイルー (………………)
 >ザァァァァァァ―ッ!!
子アイルー (ハッ!!)
子アイルー (うう……雨が冷たいニャ……)
子アイルー 「!! 父ちゃん! 母ちゃん!!」
子アイルー 「か……体が動かんニャ…………」
子アイルー 「頑張るニャおいら……もうすぐ村だニャ……」

子アイルー 「………………」
子アイルー 「な……何だニャ……これは…………」

彼が見たのは、ボロボロに壊れた、自分が育った村だった
すべてが粉々に砕け散っていた
そして散乱する、猫だったもの
隣の家族。村長さん
知っている顔がたくさんいた

たくさんいた

誰も、もう動かなかった

子アイルー 「父ちゃん!! 母ちゃん!!」
父アイルー 「…………」
母アイルー 「…………」
子アイルー 「しっかりするニャ! 今薬草をつけるニャ!!」
子アイルー 「…………血が……血が止まらんニャ!!!」
子アイルー 「誰かー!!! 誰かいないかニャ!!!!」
子アイルー 「父ちゃんが!! 母ちゃんが!!!」
子アイルー 「おいらの父ちゃんと母ちゃんだニャ!! 助けてくれニャー!!!」

子アイルー 「誰か―!!!!!!!」
 >グルルルルルルル……
子アイルー (ビクッ)
子アイルー (な……何か村の奥にいるニャ……)
子アイルー (でっかい何かが…………)
子アイルー (こっちを見てるニャ…………)
××××××× 「グルルルルルルルルル…………」

子アイルー 「だ……誰でもいいニャ!! 父ちゃんと母ちゃんが……」
子アイルー 「い……い、息をしてないんだニャ!!!!!!」
子アイルー 「見てないで助けてくれニャ!!!」
子アイルー 「お願いだから助けてくれニャ!!!!」
××××××× 『クク…………カカ…………』
子アイルー 「!! 何がおかしいんだニャ!!!! 助け……」
××××××× 『カカカカカカカカカ!!! クク……ハハハハハハハハハハ!!!!!!』
子アイルー (ビクッ!!!)

××××××× 『息がない? 助けろ? 何故?』
××××××× 『お前に、そこまでのリスクを背負うだけの覚悟はあるのか?』
子アイルー 「お……お前……お前が…………!!!」
××××××× 『猫ごときにお前呼ばわりされる筋合いはない』
子アイルー 「な……何でだニャ!? オイラ達が何か悪いことをしたかニャ!!」
子アイルー 「何でこんなこと……こんなひどいこと……」
子アイルー 「お前には心がないのかニャー!!!!!!!」

××××××× 『心……?』
××××××× 『ほう……面白いことを言う猫だ』
××××××× 『ならば問おう。心とは何だ?』
子アイルー 「ごちゃごちゃうるさいニャ!!! お前を倒して、父ちゃんと母ちゃんの手当てをするニャ!!」
子アイルー (ふら……ふら……)
子アイルー 「ここから出ていくニャー!!!!」
××××××× 『ふん……答えを期待した我が馬鹿だったか……』
 >ヒュバッ!!!
子アイルー 「ギニャアアアアア!!!」
 >ドゴッ!!!!

子アイルー (ズルズル……)
子アイルー (ドサッ……)
子アイルー (か……風……?)
子アイルー (すんげぇ突風が……オイラを吹っ飛ばして…………)
子アイルー 「父ちゃん……」
子アイルー 「母ちゃん…………」
父アイルー 「…………」
母アイルー 「…………」
子アイルー 「うおおおおお!!!!!」

××××××× 『ほう……まだ立ち上がるか』
子アイルー 「やかましいニャこの外道!!!」
子アイルー 「オイラは……オイラは絶対にお前を許さないニャ!!!!」
××××××× 『クク……カカカカカカッ!!!』
××××××× 『すぐに殺してやろうかと思ったが、なかなかどうして、良い憎しみを持っている』
××××××× 『生かしてやろう』
××××××× 『我を憎め。憎みつくせ。それが我の力となり糧となる』
子アイルー 「どうして……どうしてみんなを……」
子アイルー 「みんなを……殺したニャー!!!!!!!!」
子アイルー 「答えろぉぉぉぉおお!!!!!」

××××××× 『どうして?』
××××××× 『ふむ……どうしてだろうな……』
××××××× 『暇つぶし……か?』
子アイルー 「暇つぶし…………?」
子アイルー 「…………暇つぶし…………?」
子アイルー 「暇つぶし……!!!!!!!?」
子アイルー 「く……ぐ……(ギリギリ)」
子アイルー 「うおおおおおお!!!!!!(バッ!!!)」

××××××× 『良い目だ。憎しみで張り裂けそうになっている』
××××××× 『我を憎め、猫よ。お前の友人と、家族を殺した我を憎め』
××××××× 『我の声を、忘れるな』
××××××× 『さすれば、いつかまた会いまみえる時が来る』
子アイルー 「やかましいニャアアア!!!!」
 >ビュゥゥゥゥッ!!!!
子アイルー 「ギャアアア!!!!」
××××××× 『そのまま海まで飛んで行け……』
××××××× 『運が良ければ助かるだろう』
××××××× 『運が良ければ……な』
××××××× 『クククク……カーハッハハハハハハハハハハ!!!!!!』


どれだけ海を漂っていたのか分からない
彼は、もう自分は死んでしまうのだと思った

それも、またいいのかもしれないと彼は思った
父や母、そして仲間達がいる場所にいけるのであれば、それもまたいいのではないか
彼はそう思った

しかし、彼の体は意思に反して水面を目指していた
どうして水面を目指すのか、それは彼にも分からなかった
それは、憎しみから来るものだったのか
それとも、ただ単に生きたい、それ一念だったのか
彼には、よく分からなかった

意識が段々と下に落ちていく中、彼の体は上を目指していた
上に
もっと上に
沈み行く体は、意に反して動き続けていた

脆弱な猫の体で、彼は、何故か必死に生きようとしていた

何時間……いや、何日経った頃だか、彼にはよく分からなかった
気づいた時、彼は見知らぬ人間に抱えられていた


子アイルー 「………………」
ハンター 「……目が覚めた……」
子アイルー 「……!! お前は……!!(ズキッ) ギニャ……!!」
ハンター 「…………動かない方がいいよ。足が、折れてる…………」
子アイルー 「(ズキズキ)う……うぅ……」
子アイルー 「な……何だニャ……ここは……」

彼が見たのは、見慣れぬ高い天井
そして、暖かい火がともっている暖炉
何もかもがのサイズが大きい、まるで別世界の家の中だった

ハンター 「今、スープを温めるから……」
子アイルー 「何なんだニャお前……! 人間……!!?」
ハンター 「人間の言葉が分かるのね……どこから来たの……?」
子アイルー 「や……やかましいニャ! おいらを早く……村のところに……」
ハンター 「?」
子アイルー 「父ちゃんと、母ちゃんが……死んじまうニャ!!!!」

ハンター 「どういうこと?」
子アイルー 「おいらは……行かなきゃならんニャ…………(ドサッ)」
ハンター 「ちょっと……動かない方が……」
子アイルー 「触るんじゃないニャ!!(バシッ!)」
ハンター 「!!」
子アイルー 「おいらが行かなきゃ……行かなきゃいかんのニャ…………」
子アイルー 「父ちゃんは厳しいけど、本当は優しくて……」
子アイルー 「母ちゃんはおっちょこちょいだけど、お人よしで……いい猫で……」
子アイルー 「でも、おいらがいないとダメな……家族なんだニャ!!」

子アイルー 「父ちゃんと母ちゃんは、おいらを守ってくれたニャ……」
子アイルー 「だからおいらは……今度はおいらが……」
子アイルー 「父ちゃんと母ちゃんを、守らなきゃいけないんだニャ!!!」
ハンター 「…………」
ハンター 「そう……お父さんと、お母さんを……」
ハンター 「あなた、亡くしたのね」
子アイルー 「!!!!!!」
ハンター 「…………」

子アイルー 「な……何を言ってるニャ…………」
子アイルー 「おいらは家に帰るニャ……」
子アイルー 「家に帰ったら、父ちゃんと母ちゃんがいて……」
子アイルー 「村長さんや、情報屋もいて……」
子アイルー 「長屋も、大きくなって、村のみんなも増えてきて……」
子アイルー 「だから……だから……」
子アイルー 「村は、まだこれからだニャ……」
子アイルー 「これから、村は………………」
子アイルー 「………………村は………………」

ハンター 「………………」
子アイルー 「そうだニャ! これからだニャ!!!」
子アイルー 「あんな化け物にやられるおいら達じゃないニャ!!」
子アイルー 「父ちゃんは強いんだニャ! 村の中でも一、二を争う豪腕なんだニャ!!!」
子アイルー 「母ちゃんの料理は世界一なんだニャ!!」
子アイルー 「みんな、みんな一生懸命生きてたニャ!!!」
ハンター 「………………」
子アイルー 「だから……」
子アイルー 「だから、みんなが…………」
子アイルー 「みんなが………………」

子アイルー 「みんなが死んだなんて、そんなの嘘だニャ!!!!」
子アイルー 「嘘だニャ!!!」
子アイルー 「嘘だニャー!!!!!」
ハンター 「………………」
子アイルー 「はぁ……はぁ…………(ズキズキ)」
ハンター 「うん……そうだね……」
子アイルー 「!!!」
ハンター 「よく分からないけど……きっとそうだよ……」
ハンター 「大丈夫だよ……」
ハンター 「大丈夫だから……」

子アイルー 「お……お前に……お前なんかに、何が分かるニャ!!!」
子アイルー 「お前に、おいらの気持ちが分かるわけがないニャ!!!」
子アイルー 「そもそもお前は何だニャ!!!」
ハンター 「私は弓。このあたりを中心に狩りをしているハンターよ……」
子アイルー 「ハンター…………」
子アイルー 「お、お願いがあるニャ!!!」
子アイルー 「おいらを村まで連れてってくれニャ!!」
子アイルー 「父ちゃんと、母ちゃんが待ってるニャ!!!!!」

弓 「………………」
弓 「…………そうだね…………うん、分かった」
子アイルー 「!! 本当かニャ!?」
弓 「いいよ……それで、君の気持ちがおさまるなら」
子アイルー 「今すぐ行くニャ!! グズグズするなニャ!!!!!」
弓 「………………」
弓 「…………うん」

目次に戻る





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011.11.20 22:29:06
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.