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10.深淵の彩鎌


―十数年前―

ナナ・テスカトリ 「この子をしばらくこの島に預けます」
         「深く心に傷を、そして体に大きな障害を持った子です」
         「あなた達を信用してお預けします」
         「どうか、優しくしてあげてください」
ラージャン 「…………」
アビオルグ 「あァ? 無愛想な奴だな……」
      「いいか、この島は俺達の島だ。俺をさておいてでかい顔したら……」
ラージャン 「…………」
アビオルグ 「何とか言ったらどうなんだ、あァ!?」

ナナ・テスカトリ 「アビオルグ、初対面ですよ。もう少し優しく接してあげることはできないのですか」
アビオルグ 「そうは言っても……俺はこいつの目、何か好きになれない」
ラージャン 「…………」
アビオルグ 「ドス黒いぜ。同族殺しの目だ」
ラージャン (ピクッ)
      「……取り消せ」
アビオルグ 「あ?」
ラージャン 「同族殺しだと……? 取り消せ……」
ナナ・テスカトリ 「こら、二人共……」
アビオルグ 「嫌だね。俺は正直なんだ。思ったことをそのまま言う」
      「そして俺の直感は外れたことがない」
      「お前は近い将来、必ず同族を殺す目をしてる」
      「もう殺してるのかもしれんがな」

ラージャン 「(ギリ……)もう一度言ってみろ……!!」
アビオルグ 「何回でも言ってやるよ。お前と一緒には住めない」
      「この島から出ていけ。お前は俺達にとっての災厄になる」
 >ピシャァァァァアンッ!!!
 >バリ……バリ……バリ……
ラージャン(激高) 「取り消せと言っている……」
 >グググ……
 >ゴゴゴゴゴゴ
アビオルグ(怒り) 「嫌だね!!!」
 >ガッ
ラージャン(激高) 「そうか……なら、死ね!!」
アビオルグ(怒り) 「面白れぇ!! 叩き出してやるぜ!!」

 >ドッガァァァァァァンッ!!!
 >グラグラグラ
ナナ・テスカトリ 「二人共、やめなさいー!!!」
ラージャン(激高) 「ヒャハッ! ヒャハハハハハ!!!」
 >ズドドドドドドドドド!!!
アビオルグ(怒り) 「フハハハ……ハハハハハハハ!!!!」
 >ドドドドドドドドドドド!!!
ナナ・テスカトリ 「……ふぅ……」
         「どうしますか?」
テオ・テスカトル 「放っておくがいい」
ナナ・テスカトリ 「しかし……」
テオ・テスカトル 「そうすることで芽生える友情もあるものだ。特に、男と男の場合はな」


―名前がない島、アビオルグの巣、夜―

小鉄 (ハッ……!!!)
 >ガバッ
小鉄 (こ……ここはどこだニャ……?)
   (体が猛烈にダルいニャ……)
   (熱が出てるのかニャ……)
   (…………)
   (洞窟……? どうしてオイラ、こんなところに……)
 >ズルッ……クチャクチャ……モグモグ……
小鉄 「!!!」
アビオルグ 「……(ゴクン)」
小鉄 「うわぁぁ!!」

アビオルグ 「…………何だ、死んでいなかったのか」
      「しぶとい猫だ……」
小鉄 「お、おお……お前は! アビオルグ!!!」
アビオルグ 「何度でも言うぞ。てめぇらに呼び捨てにされる程落ちぶれちゃいねぇ」
      「『さん』をつけろ。クソ猫」
小鉄 「うるせぇニャ!! 貴様が襲ってこなきゃ、迅雷が……」
 >ふらっ……
小鉄 「ぐ……」
アビオルグ 「あの黒い雷を受けて生きていられることの方が不思議なんだ」
      「静かにしてろ」
小鉄 「やかましいニャ! こんなところ出ていってやるニャ……!!」
 >ふらふら……

アビオルグ 「おい猫……」
小鉄 「迅雷が……迅雷がオイラを待ってるニャ……」
   「あいつはどこだニャ……オイラが、しっかりしなきゃ……」
 >ドサッ……
小鉄 「ニャ……」
   「何で……地面が前にあるニャ……」
   「体が動かんニャ……」
アビオルグ 「呆れたしぶとさだ……」
      「もしかしてお前、痛みを感じていないのか?」
小鉄 「ニャ!? どうしてそれを……」
アビオルグ 「お守りを持つ猫か……その胸に下げている石のせいだな」
 >ググッ……
小鉄 「こ……これは借り物だニャ! 貴様なんぞに渡さんニャ……!!」

アビオルグ 「……ふん」
      「クソ猫からモノを分捕るつもりはねぇ……」
小鉄 「オイラは……クソ猫じゃないニャ……」
   「小鉄という、れっきとした名前があるニャ……」
アビオルグ 「てめぇなんぞクソ猫で充分だ。名前なんて御大層な代物、人間みてぇで反吐が出る」
小鉄 「お前なんて……オイラ一匹で充分だニャ……!!(グググ……)」
   「成敗して……くれるニャ…………」
アビオルグ 「やめておけ。ベニテングダケを炙った粉を、てめぇに飲ませてある」
      「しばらくは体が痺れて上手く動かない筈だ」
小鉄 「何てものを飲ませるニャ……!!!」
アビオルグ 「何をぬかす。ベニテングダケは炙ると回復力を高める薬になる」
 >ボリボリ……クチャクチャ……
 >ゴクン
アビオルグ 「食っておけ。力を補給しなければ、いくら痛みを感じていないとはいえ死ぬぞ」
 >ポイッ
 >ベチャリ

小鉄 「うげぇ……ケルビの肉かニャ……」
アビオルグ 「焼いてある。てめぇら猫には俺の食い残しで充分だ」
小鉄 「敵の塩は受けんニャ……!!」
アビオルグ 「そうか。ならそこで野垂れ死ね。迅雷とやらを助けに行く事も出来ずにな」
小鉄 「!!!」
   「そうだニャ……迅雷はどこに……」
   「まさか、貴様が……!!!」
アビオルグ 「違う」
小鉄 「……?」
アビオルグ 「小僧をさらったのは、『タイクンザムザ』……」
      「俺の妹の墓を乗っ取った、この島の呪われた民だ」

小鉄 「タイクンザムザ……」
   「聞いたことがあるニャ……」
   「異常な繁殖力と強さで、流れ着いた島を死の島に変えてしまうという……外来種……」
   「そ、それが何で迅雷をさらうニャ!?」
アビオルグ 「さぁな……」
小鉄 「さぁ……って……」
アビオルグ 「だが、俺はこの島で、多くのタイクンザムザを殺してきた」
      「その中でも、一匹生き残った巨大なヤツがいる」
      「そいつは狡猾で、知恵も働く。そして俺以上の霊感をもってやがる」
小鉄 「霊感……?」
アビオルグ 「第六感だ。生き物は生まれつき、大なり小なり第六感を持っている」
      「俺はそれがとびきり強い」
小鉄 「迅雷をさらったタイクンザムザも……霊感が強いのかニャ……」
アビオルグ 「あァ……」

アビオルグ 「小僧の変身に何かを感じ取ったらしい」
      「不意をついて連れ去りやがった」
小鉄 「迅雷を……どうするつもりだニャ!!」
アビオルグ 「十中八九、あの雷の力を手に入れようとするだろうな」
小鉄 「!!」
アビオルグ 「それに俺は、あの小僧の中に何か異質なものを感じた」
      「その正体を知りたいがために、てめぇを助けた」
      「吐け。てめぇら、普通のモンスターじゃねぇのは見て分かる」
      「お前のお守りと、小僧の力……」
      「それがあれば、俺はタイクンザムザを根絶やしにすることができるかもしれねぇ」
小鉄 「………………」
アビオルグ 「…………?」
小鉄 「取引だニャ……」
アビオルグ 「あァ?」
小鉄 「情報を教えるニャ……タイクンザムザを倒す方法、オイラ知ってるニャ……」
アビオルグ 「何だと!?」
小鉄 「だからお前……迅雷を助ける為に、オイラに協力するニャ……!」

アビオルグ 「協力……頭でもおかしくなったか、猫」
      「ラージャンの血族は皆殺しにする」
      「てめぇは助けてやっても構わねぇ。情報を吐いたらどこへなりと勝手に行け」
      「だが力を手に入れた後、俺は小僧を殺す」
      「それは決定事項だ」
小鉄 「お前なんぞに迅雷は倒せんニャ……!!」
アビオルグ 「ヘェ……随分な自信だな」
小鉄 「…………」
アビオルグ 「…………いいだろう。なら条件の条件だ。先に全て話せ。話だけは聞いてやる」
      「俺に嘘をついてもすぐに分かる。『第六感』でな」
      「適当なことを抜かしてたら、その場で頭を噛み砕いてやる。流石に死ぬだろう」

小鉄 (ゴクリ……)
   「分かったニャ……」
   「まずはオイラがタイクンザムザについて、知っていることを話すニャ……」  
アビオルグ 「…………」
小鉄 「オイラ達の里にも、昔タイクンザムザが現れたことがあったニャ……」
   「かなり小さくて、子供のガミザミくらいの大きさだったけど、すごい勢いで増えて、畑を食い荒らしたニャ」
   「タイクンザムザは、食べたものの力を吸収するニャ……」
   「オイラ達の里では、『氷』を食べたタイクンザムザが、冷気を吐いた例があるニャ……」
アビオルグ 「知ってる。あいつらは普通の『カニ』じゃあない」
      「呪われてるんだ」
小鉄 「呪われてるかどうかは分からんニャ……でも、不気味な生き物であることは確かだニャ」
アビオルグ 「で、だ。問題はてめぇらがどうやってそのタイクンザムザを撃退したかだ」
      「小さいとはいえ、猫が殺せる相手だとは思えない」

小鉄 「『毒』を使うニャ……」
 >ゴソゴソ
 >スッ
アビオルグ 「……毒?」
小鉄 「だニャ。これは、タイクンザムザが嫌う毒の臭いを出すキノコ爆弾だニャ」
   「臭いって言っても強烈だニャ。長い間吸い込んだら、オイラ達もお陀仏だニャ……」
   「これで追い出して、粉にした毒キノコを里の周りに埋めて、あいつらをシャットアウトしたニャ」
アビオルグ 「成る程、非力な猫らしい発想だ。殺すんではなく、臭いで追い出したか……」
小鉄 「猫を馬鹿にしたら……許さんニャ……(ふらふら)」
アビオルグ 「まァいい。このキノコ爆弾とやらはもらっておこう」
 >サッ
小鉄 「あっ! 返すニャ!!」
アビオルグ 「まだ話は終わってねぇ。あの小僧と、ラージャンの関係について話してもらう」
小鉄 「(くらくら)……そ、その前に、少し休むニャ……」
   「血が足りんニャ……」

アビオルグ 「……チッ」
      「ケルビの肉を食え。無理に胃に詰め込むんだ」
小鉄 「………………」
   (仕方ないニャ……!)
   >ガツガツ……
アビオルグ 「それでいい」
      (……嘘をついている様子はねぇ……)
      (それにこの猫からは、邪気を全くと言っていいほど感じない)
      (こいつはあの小僧の力については、ほとんど何も知らねぇな……)
      (……だとしても、利用価値はある)
      (猫がモンスターの主導権を握ってるってのは初めてのケースだが……)
      (あの小僧を制御するときの切り札になるかもしれねぇ)
      (隙を作って、万が一の場合殺すことも出来る)
      (もう少し生きていてもらうぞ、猫……!)

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最終更新日  2013.01.02 21:25:31
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