皆既月蝕 南風一
忘年会というのに
きみは車で来たという
最初から飲むつもりじゃないんだ
俺が言葉を失くしていると
隣りのボランティア仲間が「目的があるんですよ」という
俺は「もしかしてデートかな?」と余計な不安が頭をよぎる
案に相違してきみは「皆既月蝕」を見に行くという
11時から12時までのたった1時間のために
コテッジまで予約したという
うーん
興味のまま
気の向くままに
家の掃除とか家事を省みることなく
小娘そのままに振舞えるなんて
きみはなんてお気楽な幸せ者だろう
いつまでもそうやって楽しく遊んでいる分には
それ以上愉快なことはないだろうけれど
結婚というのはそういうもんじゃないだろう
楽しくないことでもやっていく
俺はこれまで楽しくもないこともやってきたから
残りの人生くらいきみのような女性とお気楽に遊んでいたい
(それではきみが結婚する意味がなくなってしまうのだろうけれどね)
忘年会の帰り際
ボランティア仲間から「南風さん 早乙女さんのこと好きなんじゃないの?」と
訊ねられた
「もちろん!プロポーズまでしましたよ
でも若い人がいいのよね?」
きみに水を向けると
きみは「そう」と軽く受け流している
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