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カテゴリ:判例、事件
大阪市のホームレスの方が公園を住所地として住民登録を求めていた裁判で、大阪高裁が請求を棄却。一審の大阪地裁は請求を認め、区役所に住民登録をするよう命じていたので、逆転敗訴判決となりました。
住所がない、つまり住民登録がされていないとどんな不都合があるかというと、選挙人名簿にも登録されず、選挙権が付与されないといったことが生じます。あと、生活保護の支給申請や国保への加入もできないらしい。行政手続であれ、街中で携帯電話やレンタルビデオに加入するような場合であれ、その人の氏名・住所は必ず必要とされていますから、それが「不定」だと多くの不都合が生じるでしょう。 では、公園にブルーシートを張って寝泊りしている人に、公園が住所と認めてよいか。 何をもって住所とするかは民法に定めがあり、その第22条は、「各人の生活の本拠をその者の住所とする」と定めています。 一審・大阪地裁は、これらホームレスが現にそこで生活している以上、公園が生活の本拠地だ、と認めたわけです。 高裁判決は、公共の公園にテントを張って、公共の水道やトイレを使っているような生活形態で、そこに生活の本拠があるとはいえないとした。住所と認めるかどうかにあたっては「健全な社会通念」にのっとって判断するとも言った。 この事件、最高裁まで行くのかどうかわかりませんが、個人的には、今回の高裁判決が妥当であると感じます。 市民の税金で管理・運営されている公園の中でテントを張って、それでその人に私的生活の本拠たる住所が認められ、それを根拠として各種の行政サービス(これも元は税金)が受けられるというのはどうしても違和感を感じるからです。 住所であるということは、その場所を適法に占有する権原を有することを直ちに意味するわけではないとはいえ、公園内に住所が認められるとすればきっと、今回問題になった扇町公園や、大阪城公園などは、いま以上にテントだらけになるでしょう。 それらホームレスの方も、必ずしも全員が好きでやっているわけではないだろうから、一定の保護が社会福祉政策として必要であることは認めます。しかしそれは、公園内に住んでいる人に住所を与えるというやり方より、住所不定の人にどういった保護を与えるかといったことを検討すべきであるように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/01/23 05:19:46 PM
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