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カテゴリ:判例、事件
チロルチョコに関する裁判。昨日の朝刊から。
新潟市で、自宅を「チロルチョコ株式会社」の新潟出張所兼用として勤務していた男性が、16年間、自宅の六畳間をチロルチョコの置き場にさせられたとして同社を提訴。 同社がその男性の六畳間を物置がわりに使って得た利益として、600万円を請求したらしい。 訴状を見ていないので想像で書きますが、請求の根拠は、「不当利得」でしょう。 法律上の根拠なく、一方の損失において他方が得をすると、損した方は得した方にその分を返せと言える(民法703条)。 チロルチョコ株式会社が(今般知りましたがチロルチョコを作っている会社は「チロルチョコ株式会社」というそのままの社名なのですね)、何のいわれもなくその男性の自宅を物置にし、本来なら支払うべき倉庫代を浮かした(それにより男性は自宅の一室を使えないという損失を受けた)ということです。 不当利得の返還請求権は10年で時効にかかるから、16年間のうち10年以上昔の分は時効になっている。 一部新聞によると、「利益の一部として」600万円を請求、とあったので、時効にかかっていない過去10年分を請求したと想像できます。 計算してみると、10年で600万円だから1年で60万円、1か月で5万円。 新潟市内で六畳一間の1か月の賃料相当額が5万円。ちょっと高い気もしますが、それはさておきます。 法的なところはともかく、よくわからないのは、どうしてこの人は16年間もチロルチョコを自宅に置かせ続けたのかという点です。 最初は半畳程度だったのが、チロルチョコがどんどん送られてきて六畳間いっぱいになったとか。その間、そしてその後16年間、文句を言わなかったのか。 この事件の記事を見て私は、原宏一氏のショートショート集「天下り酒場」所収の「ダンボール屋敷」を思い出しました。 とある事情で買い物癖がついてしまった母親が、生活用品などをダンボール丸ごと買い込んできて、主人公(その息子)が四苦八苦する話です。 この事件では、モノがチロルチョコであるだけに、不謹慎ながらおかしみを感じてしまいました。 しかし、この原告男性は、自宅を兼営業所とし、チョコのサンプルを長年自宅に置き続けていたのであり、少なくとも当初は献身的にチロルチョコ販売に尽くしていたと思われます。それが何らかの事情でこじれてしまって、提訴に至ったわけです。 チロルチョコをめぐる、原告男性とチロルチョコ株式会社の16年間の愛憎に思いをはせてしまう一件です。 子供のころ毎日のようにチロルチョコを食べた者として、円満解決を祈ります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/03/13 10:24:14 AM
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