からだ・気づき・アプローチ
心身症や機能的な身体の症状が出る疾患では、自分の感情に気づきにくくなったり、からだの感覚に気づきにくくなったりすることが、病態に関わっていると言われています。アレキシサイミア(Alexithymia; 失感情症)は感情の気づきや表現が困難で、内面への気づきに乏しい状態です。アレキシソミア(Alexisomia; 失体感症)は身体感覚の気づきが低下した状態です。心身医学の草分けである故池見ら(1986)は「アレキシサイミアのケースでは感情だけでなく、身体感覚の気づきも低下していることが多い」と述べ、その状態をアレキシソミアと呼びました。一方で、身体の感覚が過敏になるという報告も多くあります。現代のストレスフルな生活の中では、ストレスやアンバランスな生活などからさまざまな乖離が起こってきます。例えば、感情と知性のコミュニケーションがうまくいかない、身体と知性のバランスが悪くなる、などです。感情の気づきが低下した状態では、本能的なレベルの情動が感情として発散されないために抑圧され、抑圧された感情が身体の症状となって表れるということが考えられます。それが、身体感覚の過敏性という形になることもあります。また、慢性的なストレスにさらされた状況では、感情や身体の気づきを鈍くすることで自分を守る(=防衛)ということもあります。このような状態では、自分のからだの感覚や感情に気づいていくというプロセスが必要です。言い換えれば、無視していた、あるいは、聞かないようにしていた「身体の声」や「心の声」に耳を傾けるということです。そして、身体の症状の持つ意味(からだが伝えていてくれること)を知ることも重要です。そのようなプロセスを促すのが「からだ・気づき・アプローチ(Mind-Body Awareness Approach)」です。「身体の声」が聞けるようになると「心の声」にも気づきやすくなります。その第一歩として「身体の声」に耳を傾けるところから入るのが「からだ・気づき・アプローチ」です。例えばバイオフィードバックでは、普段は気づかない、刻々と変化するからだの状態をとらえます。フィードバックされた身体の状態と、自分で感じるからだの感覚のとの間の乖離に気づくことが手掛かりになって、「身体との対話」が可能になります。「身体との対話」を通して、徐々に感情との対話(心との対話)もできるようになり、心身の本来の姿を取り戻していきます。