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カテゴリ:司法試験
Aは、Bに対し、A所有の甲絵画(時価300万円。以下「甲」という。)を200万円で売却して引き渡し、BはAに代金全額を支払った。Bは、その1か月後、Cに対し、甲を300万円で売却して引き渡し、CはBに代金全額を支払った。現在、 甲はCが所持している。AB間の売買は、Bの詐欺によるものであったので、Aは、Bとの売買契約を取り消し、Cに対し甲の返還を求めた。 1(1) Aの取消しがBC間の売買契約よりも前になされていた場合、AC間の法律関係はどうなるか。考えられる法律構成を2つ示し、両者を比較しつつ、論ぜよ。 (2) (1)の場合において、Cが甲をAに返還しなければならないとき、BC間の法律関係はどうなるか。 2 Aの取消しがBC間の売買契約よりも後になされた場合、AC間の法律関係はどうなるか。考えられる法律構成を2つ示し、両者を比較しつつ、論ぜよ。なお、これらの構成は、1 (1)で示した2つの構成と同じである必要はない。 一 小問1(1) 1 まず、AがAB間の売買契約を取消すと買主Bは遡及的に無権利者となり、Bからの譲受人Cの即時取得(192条)の成否によってAC間の法律関係が決まる、という法律構成が浮かぶ。 2 次に、Aの取消しによる所有権の回復を復帰的物権変動とみれば、取消後の第三者である譲受人Cと法律関係は二重譲渡類似の関係となる。そこで、対抗要件(178条)の有無によってAC間の法律関係が決まる、という法律構成を思いつく。 3 前者の法律構成によれば、CがBとの「取引行為」により「平穏」「公然」と「動産」である甲絵画の「占有」を始めたとみられる本問では、CがAの取消しにつき「善意」かつ「過失がな」ければ、Cが所有権を即時取得する(192条)。 後者の法律構成によれば、178条は「第三者」の主観を問わないので、Cが悪意であっても背信的悪意者でないかぎり、「引渡し」を受けたCが所有権の取得をAに対抗できる。 後者の法律構成は、取引の安全にはかなうと思われる。ところが、法は動産取引の安全のために公信の原則を採用して即時取得を定めた。その際、取得者に善意無過失を要求して、静的安全との調整を図っている。したがって、前者の法律構成によってAC間の法律関係を処理すべきである。 二 小問1(2) 本問では、BC間の甲絵画売買は他人物売買(560条)であったことになる。そこで、Cは、契約の解除をすることができる(561条本文)。 いっぽう、損害賠償を請求するには買主が善意であったことを要する(561条但書)。ところが、Cが甲を返還しなければならなかったときは、先のいずれの構成を採用しても、Cは悪意だったことになる。したがって、損害賠償の請求(561条但書)はできない。 三 小問2 1 まず、Cが詐欺による意思表示の取消しを対抗できない「善意の第三者」(96条3項)にあたる場合にCを保護する法律構成が考えられる。 2 次に、取消しにより遡及的に無権利者だったことになるBからの譲受人Cに即時取得(192条)が成立する場合にCを保護する法律構成が考えられる。 3 本問では、前者の法律構成を採るべきである。 なぜならば、小問1のいわゆる「取消し後の第三者」の場合とことなり、「詐欺取消し前の第三者」の場合には、96条3項が取消しによる遡及効を制限して第三者を保護する特則となっているからである。 以上(49行) ほんとに本試験って感じですね。 あとは追いおい・・・ あまり期待しないで(笑) コメントいただけたら、うれしいです! てか、見てる人あまりいないと思いますけど(爆) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年07月28日 16時07分36秒
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