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目と耳が悪いビジネスマンの一筆

目と耳が悪いビジネスマンの一筆

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2009/10/07
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台風の前触れとして降り出した雨は、今朝も淡々と降り続けていました。

相変わらず空は真っ白い雲に覆われて、太陽の気配は微塵も感じられません。

傘の柄に弁当袋を提げ、小脇にかばんを抱える最近なじみの格好で、会社へと歩き始めました。

ビニール傘を叩く雨音が小気味よく鳴り響き、時折どこかで自動車が水を裂くひやりとした音が紛れ込みます。

このところずっと雨の中を歩いているので、それらの音がまるでずっと前からそこにあったようにごく自然に感じられます。

湿った風に金木犀のやさしい香りが溶け込み、鬱々とした気分をずいぶん和らげてくれます。

ちょうど二週間前、仙台でもこんな匂いが立ち込めていましたっけ。

故郷は、ちょうどそれくらい季節が先を進んでいるのですね。

やがて視界が開けた道に出て、遠くに佇む高層マンションに目が留まりました。

地面から立ち上るような濃い霧に包まれて、その輪郭は曖昧ににじんでいます。

「あぁ、この感じ、前に経験したことがある・・・」

ふとそんなふうに感じました。

それは同じ景色を見た覚えがある、いわゆるデジャヴではなく、視界全体が霧に霞むような見え方を、以前経験したことがあるという意味です。

わたしはある時期白内障がひどく、あらゆるものが深い霧の中にあるように見えていました。

多くのものは色褪せ、輪郭はぼんやりと捉えどころがなく、テクスチャ(ものの表面の質感)は何もわたしに訴えてはきませんでした。

あの頃は夜道で誰かにすれ違っても、行き過ぎるその瞬間までその人の存在に気づくことはできず、肝を冷やしながら歩いていたものです。

思い出してみると、困ったことが他にもずいぶんありましたっけ。

味噌汁を作る時は粉末だしの分量が目視できないので、仕方なく一度手のひらにこぼし、それからつまんで煮立つ湯の中へ投入していました。

歯磨き粉も適当な分量を見極められないので、チューブを少しひねって人差し指の上に乗せて、そのままパクリとやっていました。

新幹線の指定席も自分で見つけることができず、駅員さんに事情を説明してシートまで案内してもらいました。

ひと頃の変わった経験を数え上げれば、キリがありません。

そんな状態が数年も続いたでしょうか・・・。

信頼できるお医者様に出会い、ようやく決心がついて手術を受けることを決めて、わたしは光を取り戻しました。

突然あらゆるものが鮮明に映り、あれも見える、これも見えるとひとり子どものように興奮していました。

世界が色を取り戻したあの日の感動は、きっと死ぬまで忘れられないでしょう。

とは言え、ささやかな日常を営々と暮らしているうちに、いま目に見えていることが当たり前になってしまいます。

忘れるわけではないけれど、やはり見えにくい頃の視界がどんなだったか、記憶が次第に薄れていってしまいます。

しかし幸いにも、霧にむせぶ景色を前にして、久しぶりにあの頃の見え方を思い出すことができました。

真っ暗なトンネルの中を当てもなく歩いていた時の暗澹たる記憶は、後の歩みを支える太いふとい柱となります。

あの暗闇がどんなにわびしいかを知っているからこそ、今のほの明かりを心から喜ぶことができます。

どんなに長いトンネルにも必ず出口があるのだと知っているからこそ、苦悩に飲み込まれても前を見る気概が生まれます。

わたしにとって忘れてはならないものを、再発見することができました。

ありがとうございました!!

【三文日記】

伊勢神宮への旅行へ向けて、本格的に準備を始めました。

ホテルの予約を済ませ、これから新幹線の切符を取ります。

風邪などひかぬよう、気をつけなければなりませんね。

●今日の天気
雨。

●今日の運動
ジョギング30分。





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Last updated  2009/10/08 05:17:24 AM
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はじめまして   haruurara25 さん
いつもブログを拝見させて頂いております。
毎朝、携帯の方から覗いておりまして、ミンミンぜみさんの描く美しい情景は、情景だけなくその質感や音、香り、空気までを一緒に体感しているかのような気持ちになります。
暗闇を知っているからこそ、灯火の有難さが分かるのですね。ありがとうございます。
伊勢神宮近辺で暮らしておりますので、毎年参拝しています。伊勢神宮の神殿まで続く参道は、そこだけ異質な空間のようで神々しくもあり懐かしくもあります。ミンミンぜみさんが、伊勢神宮の情景をどのように表現されるか今から楽しみです。
では、また伺わせて頂きます。 (2009/10/08 09:23:40 PM)

ありがとうございます   ミンミンぜみ さん
haruurara25さん

はじめまして、ミンミンぜみです。いつもお読みいただき嬉しいです。

たとえ自分がいいなと感じることを書いたとしても、お読みになる方みんなに何かを感じていただけるわけではないと思います。

お読みになる方が何かを感じ取ろうという態度で向き合ってくださるからこそ、そこにあるものを受け取っていただけるのではないでしょうか。

そういう意味で、haruurara25さんには本当に感謝しています。

伊勢神宮、見所がありましたら、どうぞ教えてください(もちろんお時間があれば、ということですが)。

いい旅になるよう、よく準備しておきたいと思います。

それでは、これからもよろしくお願いします。

(2009/10/09 06:50:47 AM)

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ミンミンぜみ@ ありがとうございました! はちの家さん いつも気にかけてくだ…
はちの家@ お別れの言葉 ブログ(日記)は、毎日一定の質の文章を…
ミンミンぜみ@ ありがとうございました まめあちゃさん 温かいメッセージを…
まめあちゃ@ Re:お別れの言葉(07/26) 間の抜けた頃に、コメントさせて頂きます…
ミンミンぜみ@ Re[1]:お別れの言葉(07/26) 和1号さん こんばんは、コメントあり…

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