2012/08/02(木)22:18
第65回 富士登山競走
Nさん宅のおばあちゃんは、毎日夕方になると、三丁目を一周歩いているのだという。時間は一時間か一時間半ほど、ゆっくりと。二つ裏の筋を車で通り過ぎたとき、ちょうど歩いていたおばあちゃんを目線で追って、母はそういった。
「ああして毎日やっていても、昨日できたことが今日できなくなる日がいつかはやってくるんや」
「そんなこと、ゆーたりぃなや」
「だって、ほんまやねんもん」
酷いことを言ったという自覚は私にはなかった。なぜならそれは、自分に向けての言葉でもあったから。富士登山競走に毎年参加して時間内完走に挑む、ということを目標としている私は、そういう絶望感に常々囚われているのだ。
エイエイオーと掲げた手に、馬返しまで何分、五合目まで何分と、マジックで直に書かれてある。そういう手をみつけて『らしいなぁー』と思い、同時に、この大会ならでは雰囲気に溶け込んでいく自分をみる。
実力的に関門のボーダーラインにいることは、何も嘆くべきことではない。ボーダーラインにいるがために、どれだけ練習に熱を上げることができたろう。どれだけ完走を喜べたことだろう。どれだけ力を引っ張り上げてくれたことだろう。
今年も晴れた。記録的には小雨ぐらいが一番ありがたいが、五合目中止でなければ、なんだっていいという心境だ。7時にスタート!
富士登山競走について詳しくない人が距離を聞いてきたとき、大会の様子を正確に伝えてあげようと思うと、苦労する。
スタートからゴールまでの距離は21km。つまりハーフ相当。でも後半はずっと山道だから、平地の距離感覚と同じでは計れない。馬返しまでが舗装路で11km。ここはまぁ数字通りに捉えてもよい。完走者はだいたい70分ぐらいで通過する。キロ6分ペースだ。なんだ、結構楽じゃないかと思うは早計。平均傾斜は7度ほどで、後半になるほどじんわりときつくなる。歩きたくなる誘惑を振り切って、全力でいくところ。
馬返しを越すと山道になる。ここからの10kmを3時間20分でクリアできたら完走というわけ。10kmを3時間20分? 歩いてもいけるやん! と思うでしょ。確かに。で、だいだい歩くんだけど、これで完走率6割に満たないんだよ。
だから距離はもう全然関係ない。
金鳥居越しにピークが見えた。これだけくっきり見えたのは初めてか。
あそこまで4時間半。空気が澄んでいたせいか、少し近くに感じられて、今年は行けるぞ!と思えた。
馬返しを、過去ベストのタイム1時間6分台で通過。無茶な突っ込みもしていない。悪くない。
ここからが油断禁物。これは去年の反省点。五合目まで走れるところは走った。1時間10分以内は完走圏内だが、馬返し以降、周りと一緒になっていたらアウトなのだ。
5合目を、2時間9分台で通過。この先もトラブルなく頑張れたら、ゴールはだいたいこのタイムの倍になる計算だ。
8合目関門を約12分前に通過。山頂マットを4時間21分台で踏んだ。
タイムは一昨年とほぼ同じだけど、今年は五合目の通過が2分早かった。そのため五合目手前の渋滞ロスが1分は短かったように思う。「馬返しまで全力で行け」は今も通用するアドバイスかもしれない。(毎年言うことが変わっているので参考にしないように ^^;)
去年のお鉢巡りは、反時計だったから、今年は時計回りにする。
しばらく行くと浅間大社奥宮。今年はゴール後に出そうと思ってハガキを持ってきた。茶店のテーブルを借りて、完走報告を書いてポストに投函した。
剣ヶ峰へは、時計周りだときつい登りになる。それはわかっていたけど。酸素の薄いことを体感できるきつい登りだった。三歩登って一息入れて到達。
今年もなんとか完走できました。ありがとうございました。
最高点の碑に触れて、富士山に、大会に、そして応援してくれた皆に感謝した。 <終>