家主はこれは「人間の言葉を話す学者犬です」と親しいものにはよく言っている。小生がまだ6ヶ月ぐらいの頃から毎朝、家主は「ボンジュール」と小生 の両腕をつかみ「言ってみな、ボンジュール」と繰り返し、小生が呆れて何もいえないと「うーん、まだやな、もうちょっとやな」と。家主には珍しくこの挨拶 は1年以上続いた。小生も最初は、冗談であろうと思い、そのうちにあきらめるであろうと、寝起きの家主の顔を眺めていたが、1年を越えてもまだまだ続ける ので、このままでは何とかしないと一日の最初がすっきりしないとに或る日気づき、「ウーゥ」と軽く答えたのである。家主の反応は「やっ、よし、もうすこし や」と大喜びで、相方に見せようともう一度「ボンジュール」と言ったが、小生は「同じ日に二度目のボンジュールは言わない」とマジマジと家主の顔を覗き 込んだ。