|
テーマ:超能力(33)
カテゴリ:超常現象
7月になって、暑い日が続きます。
アジサイが暑さで枯れかけましたが、水やりと先週から続く雷雨で生き返りました。 さて、美奈子さんと一郎君夫婦の会話の続きです。 美奈子さん、自分のことを凄く褒めてくれた佐々木氏が亡くなったことには凄く驚いたし、もろヤクザの見かけと違って本当は心優しい人でしたから残念でもあったのですが、何事にも驚かないと言うか全て見通していたような夫が、彼の死に本当に驚いていたのが意外でした。 美奈子さん、夫の一郎君が、サヴァンの予知もありましたが、余りに当たるから止めたとも言われていた占いについて、何か隠しているのだろうと思っていましたから、聞いてみることにしました。 確か、結婚した時に、美奈子さんとの相性はあまり良くないと話したことがあったのです。 「あなた、私とは余り相性がよくないって言ったことがあったと思うけど、それでも今の選択がベストだったと言えるの。」 一郎君、素っ気なく答えました。 「ああ、美奈子と僕の組み合わせって、一般的な占のレベルだと、あまりよい相性じゃなかったな。」 占いに、一般的なものとそうでないものがあるのか、わかりません。 「一般的な占だとあまりよくないけど、あなたの考えではベストって、どういうこと。理解できないわ。」 一郎君、うふふと笑いました。 「占って、いろいろな角度から見るべきなんだよ。」 「一般的な見方だとダメなの。」 意味がわからず、美奈子さん聞き返しました。 「そう。例えば占星術だ。いろいろな見方があるのだが、一般的には生まれた時にどの惑星がどの位置にあったかで見ることが多い。」 美奈子さん、占星術と言われても、毎日流れている星占い程度の知識しかありませんでした。 「あれ、私ならてんびん座で、あなたは確かやぎ座だったかしら。それじゃないの。」 「それはそれで、基本の一つではあるけど、いわゆる星座の 黄道十二宮だけになると、12種類にしかならない。つまり相性としても124通りにしかならない。しかし、占星術としてみると、本当は凄くややこしい。太陽系の惑星がどの位置にあるかだけでなく、その人が生まれた時の天宮図を作って、太陽系の惑星に月を加えた10の星がどこにあって、惑星同士の角度が何度であるかとか、いろいろと情報が得られるから、それを総合的に判断すべきで、星座だけだと片手落ちというか、無茶苦茶もったいないんだ。」 「へえ、てんびん座ってだけじゃダメなんだ。」 「そう。一般的な星座だけの占だと、地水火風の4元素って考え方で見ると、風のてんびん座は知的人間、地のやぎ座は物質的人間という分類になる。また、行動様式による分け方としては、運動宮、不動宮、流動宮の三つがあって、それだと天秤座は運動宮、やぎ座は不動宮で、これまた一致はしない。だから、星座だけからみた性質の相性は余り良くないと答えたんだ。」 「なぜ、相性が良くないの。」 「一方的な見方と言ったが、性質が似た者同士は相性がよいという短絡的な考え方だからだな。今日の運勢なんて発表されているのは、あくまでこのレベルだ。」 「なるほど。」 これだけでも、一郎君が占星術は奥が深いと言った理由が理解できました。 では、精密に占ったらどうなのだろう。新たな疑問が浮かびました。 「じゃあ、本当に精密に占ったら、私との相性はやはり余り良くなかったのかしら。」 そこまでやらなかったと言われたが、彼のことだから、そこそこ詳しくは占っているはずです。 「そうだな。ある面普通だったかな。」 「何が普通なのよ。」 「とっても良くはないが、悪くもない。いい所もあれば、悪い所もある。ある面、それが普通であり、一番幸せなのではないかな。」 「それで幸せなのかしら。」 美奈子としては、大安大吉が一番だと思っているのですが、夫はそうではなさそうです。 「とっても幸せな状態がずっと続くのならそれに越したことはないが、そうはいかないだろうし、人生山あり谷ありでいいんだよ。」 そうだった、彼は、人生山あり谷ありと言いつつも、その潜在能力からすれば信じられないほど平凡な道を選んでいるのです。 「私、常々不思議だったのは、あなたがその能力を十分に発揮しないことだったわ。」 すると、一郎君聞き返しました。 「能力を十分に発揮することが、幸せとつながるのかな。」 この質問って、全てを見切ったような彼だからできることではないだろうか。 「そうね。確かに幸せとは直結しないわね。でも、私、あなたのことを知って以来、才能が、能力が、本当にもったいないなってずっと思ってた。」 「じゃあ、別の方向から聞いてみようか。僕が能力を十分に発揮したら、美奈子や子供たちが幸せになっただろうか。何よりも、僕自身が幸せになれただろうか。」 誰にも答えることができないであろう質問ながら、彼だけには答えることができそうな質問でもあります。 「そんなことわからない。としか答えようがないわよね。でも、あなたになら答えられるんでしょうね。」 一郎君の答えは面白いものでした。 「そう。スーパーコンピューターを超えるサヴァンの予知ならぬシミュレーションで、いろいろやってみた結果、今の自分がベストな状態だと考えた。だから、そこそこの能力発揮で、そこそこの幸せを得ることにした。」 美奈子さん、気になったので、確かめてみました。 「もしあなたが能力を目いっぱい発揮していたら、私はどうなっていたのかしら。」 一郎君、さらっと恐ろしい答えを返しました。 「美奈子は死んでいたし、子供たちも危なかっただろう。」 「だから、あなたは今の自分を選択したってことなのね。」 「そう。」 彼が言うならそのとおりなのだろうし、はっきりとは言いませんが、私が死ぬ未来は、自分の誇りにかけて絶対選択しないであろうことも、美奈子にはわかりました。 でも、今日は更に食い下がってみました。 「あなたの能力を発揮しないことは、私はとてももったいないと思ってしまうんだけど。」 一郎は、さらっと答えました。 「私にとっては、美奈子や子供たちが普通に生きていることの方が大切だ。」 なるほど、やはり私たちの命の方が大切だったのだ。 そこで、聞き方を変えてみました。 「大金持ちや偉人になろうとは思わなかったの。」 この問いに対する答えが、また興味深いものでした。 「そんなもの、別になりたくもないな。大体、いろんな前世で経験したから、つまらない。今がベスト。」 彼にそう言い切られると、何とも答えようがありません。 「それがあなたの幸せってことでいいのね。」 「そう。ベスト。」 何も言えないでいると、一郎君、変なことを言い出しました。 「そうそう、占と少しだけ関係するけど、私が常々不思議に思っていることが一つある。」 「なあに。」 「よく離婚の原因の一つとされる、性格の不一致だ。価値観の不一致ならわかるが、性格が一致することは逆に問題だと思う。」 確かに、サヴァンの夫は、極端に言えば感情と言うもの自体が欠けていますから、性格の不一致ごときで離婚することが理解できないであろうことは、美奈子さんにはよくわかりました。 「あなたには性格の一致など問題ではなく、価値観イコール現実的な利益の一致を優先することはわかるんだけど、多くの人々は、性格の不一致が許せないこともあるようよ。」 一郎君、それがどうにも理解できないのです。 「性格だけなら結婚する前にわかるだろう。まあ、表裏の有る人間も多いから、結婚するまでわからなかったと言うかもしれないが、性格が一致したからいいとも限らないし、その不一致だけなら、問題にすべきじゃないと思う。」 夫に聞いても無駄だと思いながら、美奈子さん、確かめてみました。 「あなた、私の性格が自分と全然違っていたこと、気にならなかったかしら。」 「いや、逆で、僕と全然違うからいいと思った。」 彼ならそう答えるだろうとは思っていましたが、普通の人はそうではないことを理解しないのが、感情欠陥の彼らしいと言えば彼らしいのです。 「そうね。確かに私とあなたは、性格的には対照的でしょうね。」 美奈子さん、快活で人付き合いも良いし、対する一郎君は、余計なことは一切喋らない寡黙な男ですし、友達なんて必要ないと言い切るぐらい、人間関係は全く無視するのです。 「でも、見かけの性格と本当の性格が一致するとは限らない。美奈子と僕は、性格は違っても二人とも堅実だし、羽目を外すようなバカなことはしないし、酒もタバコも嫌いで節制するし、価値観という点では一致している。そうであれば、むしろ見た目の性格が違うことは、相互に補完する方向に働くからよいことだと思う。」 確かに一郎君の言うとおりなのです。 彼が見た目と断ったように、快活で人付き合いが良さそうに見える美奈子さんの方が、実は人と付き合うのは嫌いで、逆に人間関係でんでんむしの一郎君の方が、誰とでもうまく付き合うことができる能力を持っているのです。 ですから、家庭に、職場や近所の人たちとの人間関係を一切持ち込まなかった一郎君に救われたのが美奈子さんでしたし、人付き合いが悪いからとごまかしながら誰とでも適当に付き合う一郎君にも、一見人付き合いが良さそうな美奈子さんの存在は、世間的には助かるものだったのです。 結婚してからの二人は、共通の価値観からひたすら生活の充実を図ったのですが、そのために見事な分業も行いました。 昔の日本的にと言うか、夫は仕事、妻は家庭を徹底したような夫婦で、一郎君はひたすら仕事して稼ぎ、美奈子さんは、働くことは諦めて、家事育児に専念したのです。 この段階で、一郎君が美奈子さんを大変高く評価していたのは、彼女は学歴こそ高卒でしたが、働かせてもそんじょそこらの大卒男性よりもはるかに優秀だったにもかかわらず、家事育児の能力も抜群で、専業主婦に満足し、家に閉じこもっていると時代に乗り遅れるとか、知識が偏るとか、余計なことを全く考えずにいてくれたことでした。 その結果、夫婦で子供3人を育てつつ、30歳の時には、少し不便なところながら、広い庭付き一戸建ての家を建て、車もベンツに買い替えることさえできていたのです。 美奈子さんと結婚する前に、10年後には広い家に美奈子さんと子供と猫と一緒に住んでいる光景を見たという一郎君の予知のとおりになったのです。 結婚当初は働いた分収入が増えた時期でしたが、酒もタバコも女性にも興味のない一郎君、家庭生活、特に子供の教育にお金を注ぎ込みながらも、ずっとベンツに乗っていますし、その上で将来的な投資も堅実にしていたのです。 ですから、60歳で退職し、65歳で継続雇用の期間が過ぎた時には、60歳時の退職金と同額以上の額を不動産投資で得ていました。 家や土地のローンも、55歳までには全て返し終わっていて、家のリフォームも全て済ませましたから、必要と言われる老後の資金2千万ならぬ倍の4千万以上の貯えを実現していました。 ですから、65歳で年金をもらえるようになると、強いて働く必要はなかったのですが、仕事しないで暇になるとろくなことはないと、65歳過ぎても日々雇用で働いていました。 本人は、健康管理のための仕事だと笑い飛ばしていましたが、日々雇用で給与が半分になっても同じ仕事をしているのですから、理不尽と言えば理不尽です。 美奈子さん、今になってようやく一郎君が40年前に言った言葉の意味がわかるようになりました。 「行き当たりばったりに見えるかも知れないけど、最適な選択をしていくから、心配はいらないよ。」 堅実を絵にかいたような生活ながらも、人生の選択においては、天才ギャンブラーのようなことをして来たのです。 続く。 画像は、我が家の庭のビオトープに毎年咲いている睡蓮です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 9, 2023 10:01:57 AM
コメント(0) | コメントを書く
[超常現象] カテゴリの最新記事
|
|