「そして、奇跡は起こった!」にワンピースのテーマを見た
ジェニファー・アームストロング著の、「そして、奇跡は起こった!」を読みました。副題に「シャクルトン隊、全員生還」とあるように、この本は南極探検に出て遭難し、18ヶ月の間氷に閉じ込められながらも、探検隊の28人全員が生還したドキュメンタリーです。まず、シャクルトンという名前は私は知りませんでしたが、南極点に人類初到達したアムンゼン、アムンゼンに一ヵ月半遅れて到達し涙を飲んだスコットとは違う輝きで南極探検の記録に刻まれているようです。彼も南極点に到達することを目標にしていましたが、人類初を先取りされてしまったので、今度は南極を横断すると言う冒険に挑みます。しかし、例年にない程の寒さに、船は早々と流氷に行く手を阻まれ、閉じ込められたまま次の夏を待つことになります。この探検を率いていたのがシャクルトン。船長は航海術に長けたワースリー、以下船医、コック、船大工、学者、カメラマンなど、総勢28名の探検隊でした。シャクルトンはとてもリーダーシップのある人で、この絶望的な状況から全員を生還させたのは彼の人柄だったと思います。氷に閉じ込められた船は、やがて氷の圧力で壊れてしまいます。そんな状態の中でも、シャクルトンは希望を捨てず、どうすれば全員が助かるのか常に考え続けます。元々ほとんど見ず知らずの荒くれ船乗りたちが、この絶望的な中でチームワークを乱さずいられたのが生還への一歩で、それを支えたのがシャクルトンだったということです。最後に乗り込んだ三隻のボートは南極の一番北の土地にたどり着きます。しかし、ここで待ち続けても助けが来る可能性はありません。シャクルトンは航海士を含む6人を連れて、助けを呼ぶべく小さなボートで1600km先のサウスジョージア島の捕鯨基地を目指し航海に出ます。シャクルトンはたどり着けるのか?待っている探検隊は助かるのか?結果的には全員生還することが出来ることは分かっていながら、その全ての探検行の厳しさがひしひしと迫ってきて、最後は本当に感動しました。シャクルトンは仲間というものを大切にします。ただ、待つだけの退屈な日々、船乗りはそういうものなのかもしれませんが、自ら楽しいイベントを考え出しては航海を楽しむ船員たち、とても楽しそうです。その内どんどん絶望的になっていく状況、この状態に全く関係ない話を隊員たちに一人づつ話かけてみんなの気を紛らすシャクルトン。隊員たちもシャクルトンに絶対の信頼を置き、最後まで彼を信じ続けます。「ワンピース」のルフィは海賊、シャクルトンは南極探検隊、全く違うにもかかわらず、仲間を大切にする姿勢、楽天的な性格が、重なって見えました。タッチは淡々としていますし、感情をあおるような仕掛けは何もないのに、とても重く感動する本でした。機会があったら読んでみて下さい。