ジョー・ルイス・シアターの人形劇は一見の価値アリ
2006年プラハの世界人形劇祭で、 最優秀文化伝統人形劇賞を受賞したバンコクのジョー・ルイス人形劇団。 「スワン・ルム・ナイト・バザール」にその伝統的操り人形劇「フン・ラコーン・レック」を観賞できるジョー・ルイス・シアターがある(まもなく場所を移るという情報もアリ)。 フン・ラコーン・レックは、日本の文楽と同じく3人1組で1体の人形を操る。音楽もどこか日本の浄瑠璃の節回しに似ていて、不思議に懐かしい。日本風にいえば「大夫」が物語を語っていくのも同じ。ただし、人形遣いは3人全員が協調した動きを見せ、その流麗な所作も見所になっているところが、黒子という存在のある日本の文楽と大きく違うところ。ホテルのコンシェルジュに聞いたら、ホテルで予約を取ったほうがいいと言われたが、そうそう平日から満席にもなるまい、と自分で直接早めにシアターに行くことにした。先月も行ったスワン・ルム・ナイト・バザール。ホテルからもそんなに遠くないので、午後5時過ぎに気軽にタクシーに乗り込んだ。ところが……!ここで、噂のバンコクの渋滞に初めて本格的に巻き込まれた。シー・プラヤー通りからラマ4世通りに近づいたところでだんだんにクルマが進まなくなり、なんとかラマ4世通りにはいったら、先方に見えるルンピニー公園までクルマが行列になっている。スワン・ルム・ナイト・バザールのあるルンピニー公園はオリエンタル・ホテルのほぼ西にあるのに、この運転手はなぜかわざわざ左折して北上し、距離的には遠回りになるシー・プラヤー通りを使った。渋滞を回避しようとしたのかどうかわからないのだが、判断は悪かったと思う。これじゃわざわざ遠回りして大渋滞のラマ4世通りを走る距離を延ばしたようなもの。一方通行なども多いから、一概に「わざと遠回りした」とも言えないのだが、もっと渋滞に巻き込まれない別ルートが絶対にあったはずだ。故意なのか、知識が足りなかったのかはわからない――バンコクのタクシー運転手は道を知らない人間も多いということが、使っているうちにだんだん身にしみてわかってきた。全然進まないうちにメーターがどんどん上がっていくし、ラマ4世通りに入ったらますますピクリとも動かなくなったので、ちょうど窓の外に見えたサームヤーンの地下鉄の駅の前で降ろしてもらう。「地下鉄で行くなら、ルンピニーで降りるんだよ」と人のよさそうな顔(ツクリモノか?)で教えてくれるタクシー運転手。言われんでも、わかってるって。地図手に持ってるやろ!どうもバンコクの人は地図というものを見る習慣がないらしい。道を歩いてる人もタクシーの運転手も、地図で指し示しても見ようとしない。知ってるか知らないか、だけ。地図というのは実は、読める人間と読めない人間の能力差が非常にハッキリするツール。バックパッカー街で白人の若い男女が何度も辻で立ち止まり、地図を広げているのを目撃したことがあった。最初ははるか先にいたのだが、あんまり止まってばかりいるので、ついには追いつき、「お手伝いしましょうか?」と声をかけた。「ここに行きたい」と青年が指を差す。が~ん!声をかけたのはMizumizuだったのに、差された場所が一瞬ではわからなかった。ところが横にいた連れ合いは一瞬で理解し、「ぼくらは今、ここ。だからここに行くには、この道をまっすぐ行って右へ」と教えてあげている。すると青年が地図を「グルッ」と回して、「ああ~! ここにいるんだ! で、こっちへ行くんだネ!」と理解したのだった。こうやってグルグル回す人はあまり地図を読む能力が高くない(実はMizumizuもこのタイプ・笑)。教えてあげたので、2人は意気揚々と目的地(恐らくはゲストハウス)に向かっていった。たぶん彼らはMizumizuたちを親切な現地のタイ人だと思っただろう(笑)。さて、サームヤーンから地下鉄で2駅でスワン・ルム・ナイト・バザール最寄りのルンピニー駅に到着。あっという間だった。あのままタクシーに乗っていたらどれだけ時間を食ったかわからない。よかったよかった。ジョー・ルイス・シアターを探しながら歩いていると、ねーちゃんが、「ジョー・ルイス・シアターのチケット、900バーツを800バーツで」と寄ってきた。劇場近くまで案内してくれて、「これから先には私は行けない(なんでよ?)。チケット売り場で値段を聞いてみて。900バーツだから。戻ってきてくれれば800バーツで売る」とのこと。チケット販売所で聞くと、席は十分余っていたので、わざわざアヤシイ800バーツのチケットを買う気にはならず、そのまま正規チケットを購入。劇場の外で見ていたねーちゃん、残念そうに立ち去った。まだ開演までには時間があったので、熱帯の夜にふさわしい、ゆる~い雰囲気のバザールを見て歩き……先月も食べた屋根つきの屋台村で食事した。ところが、これが信じられないくらいの大ハズレ。先月はまぁまぁだったのに、こんなに店によって違うとは思いもしなかった。だいたいご飯の炊き方からして最低だった。水が多すぎて、長米が思いっきり水を含んで膨れ上がり、日本米のような粘りや弾力性もなく、タイ米特有のさらっとした風味もなく、「こんなまずい米食べたことない」状態に…… あの店のおばさんは、基本的に料理が下手だったんだな。やれやれ……ほとんど気分が悪くなるほどまずい屋台食を早々に切り上げて、シアターに向かうと、シアター前の野外レストランは白いオーニングの下、テーブルにキャンドルを灯して欧米人が大勢食事をしている。ううっ、この賑わいを見ると、少なくとも欧米の観光客には人気のレストランだったのかも。屋台であまりにハズレで、一食ムダにしたので、うらやまし~い気分でうらめし~く眺めた。案内係に導かれて席へ。ところが「こちらです」とアームレストに触れたとたん、「ポロッ」ともろにはずれしてまう! だが、案内係ははずれた布張りのアームレストをただそのままポイとのっけて、気にする風でもなく行ってしまった。だからさ~、直しなよ。ネジがあれば留められるんだからさ~。「ネジありませんかぁ?」と、こういうのを見ると、すぐに修理しなくては気がすまない連れ合いが、モロはずれのアームレストを手にとってブラブラさせる。人形劇は、予定から5分ほど遅れてスタート。出し物は日によって違うそうだが、その日は「ガネーシャの誕生」だった。写真は禁止なので、お見せできないのが残念だが、3人が一体となって操る人形は、空中を闊歩する人形の滑らかな動きとともに、操り師たちのピタリとそろった足の運びが非常に美しく、これで900バーツ(3000円弱)なら、何度でも観たい! と思った。ところが劇の途中から、後ろの席のバカップル(死語?)の若いねーちゃんがベラベラ隣のにーちゃんに話しかけはじめた。しかも、嘆かわしいことに話してる言語は、あろうことか日本語! しばらく我慢していたが、あまりに長々と、しかもだんだんに声高におしゃべりするので、だんだん耐えられなくなった。語りや音楽が聞えない! 連れ合いがついにキレて、「静かに!」と後ろに向かって叱責。それで静かになってくれたからよかったが、恥ずかしいこと、このうえなし。日本の皆さん、劇場では劇が始まったらしゃべってはいけないんですよ。よ~く憶えておきましょうネさて、人形劇を堪能して、外に出ると、通りにはタクシーがたむろしている。ところが!ここでアユタヤ旅行の帰りのようなことが起こった。タクシーの運ちゃんが一斉に、まるで示し合わせたように、行き先を告げるとメータータクシーのくせに、「150バーツ」「200バーツ」と吹っ掛けるのだ。うそぉ。オリエンタル・ホテルなんてせいぜい50バーツでしょ(と、すっかりもう土地勘ができている)。もしかしたら、このバザールの中の道に入るのに、手数料でも払っているのだろうか? トゥクトゥクもいたので、「50バーツでどう?」と言ったら、笑いながら、「ノー、ノー。遠すぎる。150バーツ」と、まるで他のタクシーの運転手と事前に談合してるかのよう。だめだ、ここは――と思い、道に出る。ところが、行列してタクシーが待っている。……ということは、同じく吹っ掛け組かも…… と思い、流しのタクシーを停めようと行列タクシーのもとを離れようとした。すると、Mizumizuたちの動作で思惑がわかったのか、目の前にフラフラと入ってくるタクシーがいた。行列の前に割り込んでるようなものだが、こういうタクシーなら、ちゃんとメーターで行くのでは、とアタリをつけて、乗り込む。案の定だった。この運転手はちゃんとメーターを押す。アジア系で、とても気弱そうなタイプ。「あ~、よかった」とリラックスして乗っていると……あれっ!?道が違う? もうじきホテルというところで反対の道に曲がって入ってしまった。運ちゃんも、「あっ」と思ったらしく、キョロキョロしはじめた。連れ合いも気づき、タクシーの運ちゃんに「違う」と話しかける。運ちゃん、頷いてUターン(オイオイ!)。一度道を間違えたとはいえ、51バーツで来た。間違えなかったら、たぶん47バーツといったところかな。ホテルにつけたところで、運よく次の客が待っていて(たまたま客がタクシー待ちをしていた場合のみ、タクシーは客を乗せることができるが、誰もいない場合は、さっさとホテルから追い出される)、この道に不安のある気弱そうな運転手は得したことになった。しかし、ホテルのドアマンが必死に道を説明している(オリエンタル・ホテルのドアマンは客がタクシーに乗るときは必ず行き先を運転手に説明してくれる)のに、なかなか飲み込めていなかったから、また次でも道を間違えたかもね(笑)。とても親切なオリエンタル・ホテルのドアマン。ところが、部屋の日本語の案内には、「公共タクシーの運転手は英語ができない、道を知らないといったことがあるので、当ホテルではそのような公共タクシーの利用はお勧めしておりません」なんて書いてある。最初はホテルからメータータクシーに乗るのは、はばかられる行為なのかと思った。ところが白人客はバンバン呼んでもらって乗ってるし、Mizumizuたちもドアマンに頼んだら、すぐに呼んでくれて、運転手に行き先を説明し、トラブルがあったときのためのカードもさっと書いてくれる。確かに部屋の日本語案内に書いてあることはそのとおりだが、英語ができなくてもタイ語で行き先を見せれば、知っていれば行ってくれるし、道を間違える場合も確かにある(笑)が、完全に知らない場合は知らないと言う。「そのようなタクシーの利用はお勧めしない」なんて、ことさらバンコクのタクシーの印象を悪くする書き方をしなくてもいいと思うし、実際タクシーに乗りたいといえば、ホテルのドアマンは非常に親切に対応してくれるのだ。もちろん、まったくトラブルがないとは言えないのは当然のこと。タクシー運転手に観光客が殺されるという事件もあった。でも、そんなことはどんな国だってあることじゃないだろうか。運転手のレベルはともかく、バンコクのタクシーは安くて数が多いので、とても便利だ。