ブライアーの正体
木製製品でできているブライアーはバラの根で作られている…というのは大ウソで、ブライアーとは、地中海沿岸の乾燥地帯に自然に生えている「ホワイトヒース」と呼ばれるツツジ科の根の事です。学名:エリカ・アーボリア(Erica arborea)意外に(?)とっても綺麗な花です(因みに花言葉は“孤独な思い”)バラに似ても似つかぬこのエリア・アーボリアの根、ホワイトヒースですが、何故に『バラの根』と勘違いされる事があったのか??それは、英語でBrairというと野生のバラの茂みを指す言葉なのです。それが理由ではないか???…と言われています。ホワイトヒースの事をフランス語でBruyere(ブリュイエール)と言うのですがそれがナマってブライアーとなったらしいですよ。ブライアーに至るまでの歴史ですが…16世紀後半に粘土でできたクレイパイプ(Clay Pipe)に始まり、陶器のパイプ、その他の木のパイプを経て、18世紀前半に海泡石を使用したメシアムパイプ(Meershaum Pipe)が登場しました。そして19世紀に入り、軽くて丈夫、更に他の木材に比べて火に強いというメリットからブライアー(Briar)がパイプ使用される様になったようです。そして今や誰もが“パイプと言えばブライアー製”と想像するのではないでしょうか。勿論、ブライアー以外のパイプは今でも販売されてますし、愛用しているパイプスモーカーも多いです。で、ブライアーを…カットして…更に小分けして…煮込んだりしながら樹液等を抜く加工を施し、更に寝かせて…合計50年以上経過させたモノが、パイプへとなります。因みに、このカットされたブライアーにも名前とランクがあります。一番大きいのはデミリュンヌ(DEMI LUNEー半分の月)根隗を半分した形をしています。2番目に大きいのは、プラトウ(PLATEAUXー高原)と呼ばれ、ブライヤー根隗の表面の凹凸が残っているものを言います。次が一般的なパイプを作る材料の大きさになるエボーション(EBAUCHONー下地)。そのエボーションは直(例:ビリアード)用の材料はマルセイエーズ(MARSEILLAISE-マルセイユ人)と呼ばれ、曲り用の材料はルルベ(RELEVEES-フランスの古語で午後))、小ぶりのパイプ用にCMFというクラスに切り分けられます。更に、オウムポウル用のポンピアー(POMPIERー仰々しい)。シガレットホルダー用はティジェ(TIGEー茎や幹)、カレー(Carre)等に切り分けられます。ランクですが、最上級はエクストラ・エクストラ、次にエクストラ、プレミア(First), ドゥージエム(Second)、トワジエム(Third)の4段階か5段階に分けられてるようです。さてさて、このブライアー、地中海沿岸の乾燥地帯に生えてるのですが、イタリア南部、シシリー、コルシカ、ギリシャ、南フランスといった産地があります。産地によってもパイプの価格が変わってきます。自然に生えているモノですから、根が成長するにすれ異物を含んでしまう事があります。木目も表面は綺麗に見えても、削ってみたら「アララ?」なんて事もあるようです。ですので、その異物が入っていない&木目が美しいというのはいかに希少性があるか…というのが想像できますよね?ハンドメイドを作っている作家さんが大変なのは、この木目と傷(異物)という存在を意識しながら、思い通りの形を製作する事でしょう。そしてマシンメイドでも、“同じ形はあっても同じ木目はない”と言われるように、それぞれの表情(木目)があるのも、パイプを見て選ぶ楽しみでもあると思います。パイプの歴史については“たばこと塩の博物館”をご覧下さい。