テーマ:モバイルよもやま(4414)
カテゴリ:企業
フラッシュメモリーは電源を切ってもデータが保持されるタイプのもので、スマートフォンやタブレット端末、携帯電話に多く用いられる。一方のDRAMはパソコン用途が中心だ。スマートフォンなど携帯端末の市場が急速に伸び、それに押されてパソコン市場が縮小し始めていることを考えれば、DRAM専業メーカーが淘汰される構図がはっきりと見えてくる。
だからエルピーダメモリの経営破綻は、DRAMに固執しすぎてフラッシュメモリー市場に参入しなかったことに一因があったとも言えるだろう。 同社の坂本幸雄社長には「ライバルはDRAM市場で勝負をかけてくる」という認識があったのかもしれない。ところが、ライバルたちは「フラッシュでシェアを取り、収益を確保した上でDRAMを継続する」という戦略であって、フラッシュメモリー製造こそが勝ち残りのための本命だったわけである。 フラッシュメモリーの開発者は東芝であったが、DRAMをやめてフラッシュメモリーに絞ったことの真意が読み切れていなかったのかもしれないし、トップのサムスン電子は自ら携帯やタブレットでトップを走るのでフラッシュの方でかなりの利益を出しているものと推察される。 エルピーダメモリはNECと日立がDRAM事業を切り離す形で1999年に設立された。この時、経営を一任された坂本社長に対してアドバイスできる人材も一緒に「切り離された」のではないだろうか。市場動向を的確に把握して助言できるアドバイザーの不在、これもまたエルピーダメモリ破綻の一因だったと考える。 坂本氏は2009年ごろ、「V字回復を果たした」ことで業界の寵児となり、マスコミ取材や講演などで成功体験を語っていたことを私は記憶している。それは実は砂上の楼閣に過ぎず、彼は成功体験を語っているうちに視界不良となり、DRAM市場が頭打ちになると同時にスマホの爆発的な普及でフラッシュ勢に煽られたことを読み切れなかったのだと思う。 スマホゲームの興隆で一気に斜陽化した日本のコンソールゲーム会社と瓜二つの、まさに「産業突然死」の典型例である。 こうした半導体業界の勢力図を俯瞰すれば、日本の経産省がDRAM製造を支援することは時代錯誤と言わざるを得ない。税金を使って支援すべきは、価格の取れる新しい技術であり、機器の心臓部の独自技術を持つメーカーである。 コモディティ化したDRAMの製造メーカーを国家が支援するのは、日本政府の時代認識が15年は遅れている、ということでもある。 東京電力・福島第一原発事故への対応の遅れ、そしてエルピーダメモリ破綻と、このところ経産省は大きな失点が続いている。それは経産省が機能不全をきたしていることの証明に他ならない。倒産しても続投が決まった坂本社長とともに博物館入りをすべきは経産省自体ではないだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 14, 2012 08:14:45 AM
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