テーマ:モバイルよもやま(4414)
カテゴリ:企業
満を持して打ち出した経営戦略に、ここまで厳しい指摘が相次ぐのも珍しい。富士通が10月29日に公表した経営方針のことだ。経営資源をIT(情報技術)サービスに集中し、パソコンや携帯電話事業は分社化する。事業の中身を入れ替えながら、2016年3月期予想で約3%の連結営業利益率を10%に引き上げる。こうした説明に対し、市場からは「具体策が少なく抽象論ばかり」「達成までの時間軸が不透明」との声が目立った。富士通は市場の批判にどう応えるのか。
説明会は今年6月にトップに就いた田中達也社長が新たな方向性を示す場として注目されていた。富士通の売上高営業利益率は過去20年、一度も5%を超えたことはない。最近数年は2~4%で推移している。説明会に参加したアナリストからは「いきなり10%の目標とは」との戸惑いも広がった。 「営業利益率10%」は田中社長の思いを強く反映している。「長期目標として高いと言われるかもしれないが、どういう変化をすればいいか社内で議論して大きな方向を決めた」。「長期」とは5年後の2020年を念頭に置いている。「大きな方向」は、ITシステムのハードやソフトに加え、システム構築や運用サービスまで顧客に幅広く提供する「テクノロジーソリュション事業」に経営資源を集中することだ。 連結売上高の7割を占める同事業の営業利益率は前期で6.7%。ここを重点的に強化して連結で10%の利益率に向けて弾みを付ける狙いだ。ただ、目標は掲げたものの、市場が納得するような具体策は少なく、利益成長のイメージが描きにくいのが実情だ。 一方で、パソコンと携帯電話事業は16年春をメドに分社化する方針を打ち出した。パソコンや携帯電話などの「ユビキタスソリューションソ事業」の営業利益率は前期で0.8%。今期は減収が響き、営業赤字を見込む。塚野英博最高財務責任者(CFO)は「親元から離れて独立してもらう」と話すが、再編や売却を含めて現時点で分社化後の姿は固まっていない。 今回の経営方針では人員削減を連想させる「構造改革」ではなく、長期的な利益成長を意識した「ビジネスモデル変革」という表現を使った。資産売却も考慮してネットで300億円の「変革費用」を見込むが、踏み込んだ説明はなかった。関係者は「顧客や従業員、取引先などに配慮して、現時点では言えることと言えないことがある」と明かす。 「大まかな方向性はいいとして、課題は具体策の実行とスピードだ」。市場の声を集約すればこうなる。経営陣にも当然、こうした声は届いている。塚野CFOは「(事業を入れ替えて)まず18年3月期までに巡航速度で5%の営業利益率を達成できる形にする」と話す。合わせてグローバルにコスト効率を上げれば10%に向けて利益率の上乗せが期待できるという。 社内では「より現実的な5%の目標を掲げたのでは富士通は変わらない」との声も聞かれた。10%の目標は市場の「圧力」をうまく取り込んで、経営規律につなげるための手段といえる。自ら高いハードルを課しただけに、結果を伴わなければ市場の失望も大きくなる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 30, 2015 09:42:56 AM
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