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カテゴリ:映画
「プロフェッショナルな男たち」、4日目は、サン・テグジュペリ原作の「南方飛行」です。
見たことがある人自体が少ないと思われる。IMDBにはまだ1つもコメントがなかった。原作は「星の王子様」でとても有名なサン=テグジュペリである。主人公は、アフリカ大陸の西岸を一線に貫く航空路カザブランカ・ダカール線の操縦士ジャック・ベルニス(ピエール・リシャール=ウィルム)。フランス本国にいる従妹で幼なじみのジュヌヴィエーヴ(ジャニー・オルト)と一時は駆け落ちして同棲を始めるものの、同僚で親友のユベールが砂漠で飛行中に行方不明になったという知らせを会社から受け、彼を捜しに飛び出していく。恋よりも仕事を選択した男の話、と簡単に言ってしまえばそれまでなのだが、恋愛と仕事・友情が絡む、複雑でセンチメンタルな出来となっている。 ジュヌヴィエーヴは人妻である。しかも、夫エルランはフランスのポーランド駐剳大使という、地位も名誉もある名士で、歳も離れており、よりによって、ベルニスとジュヌヴィエーヴが幼少時代にすごした土地を売り払おうとしていた。最後の思い出に、その懐かしい場所で会おうとして、ジュヌヴィエーヴはベルニスをフランスに呼び寄せたのである。しかし、結局土地は売られ、エルランは仕事のためにロンドンに立つ。その間に、ベルニスはジュヌヴィエーヴを連れ出し、逃走するのである。ふたりはパリでいっしょに住み始めるのだが、すぐにベルニスが砂漠へと旅立ってしまう。残されたジュヌヴィエーヴは、パリに住む伯母に助けられ、宿にかくまわれるが… これ以上書くと、ネタバレになってしまうので書けないのがツライ!テグジュペリの小説(と言っていいかわからないが)は、「星の王子様」しか読んだことがないのでなんとも言えないのだが、この映画も、思いきり哀愁に満ちている。切ないのだ。テグジュペリは、映画化にあたって、自ら映画向きに改作して台詞を加筆したり、飛行指導にあたったりしたという。原作者の全面的な協力によって作られた映画と言えるだろう。去年だったか、「アビエイター」という映画があったが、ヒューズより、テグジュペリのほうが、よほどドラマティックな人生だったように、私には思える。箱根にある「星の王子様ミュージアム」には、もう2回ほど行った。行くたびに、胸が痛くなる。飛行家として様々な危険な航路を飛び続け、作家としても印象深い作品を残し、そして最後は1944年7月、戦闘機に乗って写真偵察飛行に出て、そのまま消息を絶ってしまった。 この映画は、テグジュペリの投影に他ならないと思う。恋愛はともかく、仕事にかける情熱は並大抵のものではなかったはずだ。仕事に生き、仕事に死んでいったテグジュペリ。彼は、常に死と隣り合わせであったからこそ、心を打つ物語を作ることができたのではないかと思うのである。★★★★ COURIER SUD 1935年フランス ピエール・ビヨン監督 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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