「うつせみ」とは「この世に生きている人間」のことなのだとういう。古語の現人(うつしおみ)が訛って「うつせみ」になったそうで、転じて「生きている人間の世界、現世」という意味になるらしい。むろん、蝉の抜け殻という意味もあるし、「源氏物語」の五十四帖の巻名でもある。
2番目と3番目のことは知っていても、最初の意味を知っている人は案外少ないのではないだろうか。げんに、私も知らなかった。たぶん、中学か高校の国語の時間に習ったのだろうけれど、すっかり忘れている。記憶に残らなかった、ということだ。
毎年、蝉の鳴き声が聞こえてくると、「夏が来た!」と実感する。今年は鳴き始めるのが去年より遅いし、うちの近所ではなぜかニィニィゼミとミンミンゼミばかりが鳴いていて、アブラゼミがほとんど鳴いていない。その年によって違うのが蝉の不思議だと思う。