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カテゴリ:私の話。
「分娩室へ行きましょう」
ようやくボウに会える時が近づいてきた。
あと少し。あと少し。もう弱音なんか吐かない。絶対に頑張るんだ。
陣痛のときは1~2分間隔で、すごくつらかった痛みが、分娩台に上がってからは 長い休み時間があるようにも感じました。
時々くるお腹のハリに合わせて、 「もういきんでもいいから、どんどんいきみなさい」 といわれていました。
いきむのは最後のギリギリなんじゃないのかな?と思いましたが ボウが大きすぎるので、どんどんいきまないと下がってこれないとのこと。
いきむたびに、助産師さんがお尻?に手を当ててくれます。
何回いきんだだろう。
2日間、ろくに寝れてないので体力も限界。 途中、オレンジジュースをもらいました。
「糖分補給して、体力つけないとね。まだまだ先は長いよ。」
どうも、力の入れ方がうまくないみたいで 分娩台の足置きから足をおろし、次にいきむときは助産師さんの肩に足をかけ思いっきり押し上げてくださいと言われる。
左右の足に1人ずつの助産師さん。何度も何度もけりました・・・・。
「そうそう、上手上手!今ね、これくらい頭が見え隠れしてるよ」
と、ほんの小さな〇を指で作ってくれ、励ましてくれた。
陣痛が来ていないときは普通に話せるので、助産師さんが話しかけてくれる。
「胎児名は?」 「ボウです。」 「なんで?」 「男の子だから。坊やのボウちゃん。」 「そっか~。よし!ぼうちゃん、がんばろうね!あと少しでママに会えるよ!」
こういう気遣いがうれしかったです。
時間は過ぎていき、1時間いきみ続けてもほんの少しの頭が見え隠れするだけ。
先が見えない不安に駆られました。
そんなとき、またボウの心拍が低下。
「心拍下がってる!先生呼んで!」
医師が走って分娩室に入ってきました。
「すこし横向きにしましょう、酸素して!」
「モコさん、しっかり酸素吸って。えらくても大きく深呼吸だよ。ボウちゃん苦しいから。」
チョチョが、すぐ横で団扇を仰ぎながら 「スーハー、スーハー、ゆっくり深呼吸だよ。ゆっくりね。おおきくね。」
しばらくして心拍が戻りました。
もう陣痛のときから3回もボウの心拍が下がってる。 このまま、無事に産んであげられるのだろうか。 自信がない。 私のいきみがヘタくそなせいで、ボウに負担がかかってる。
「心拍下がっても大丈夫なんですか?もしものことがあったら怖いです。帝王切開にしてほしいです・・・」
「大丈夫、少しずつ進んでるから、このまま頑張ろうね。」
頭の見え隠れから、あまり進まない状況に、医師がお腹を押すことになった。
「思いっきりお腹を押すので、すごく痛いと思いますが、負けないようにいきんでください。先生の力に絶対負けないでね。」
お腹のハリが来る。 いきむ。
「いたーーーーーーーーーーーーーー!!!」
あり得ない痛みが走り、思わず痛いと叫んだ。 一気に体力が消耗した。
今までの痛みとは比べ物にならない痛み・・・。
ハリが来ては何度も押され、叫び、いきむ。
「赤ちゃん、さっきの倍くらい見えてきたよ。髪の毛見えるよ。がんばって!」
ハリが来る。押される。叫ぶ。いきむ。
何度か繰り返し、ようやく頭が出た。
「頭出たよ。もう少しだからがんばろう!次か、次くらいで全部出ると思います。」
よし!もうすぐだ、がんばろう。
でも、肩がひっかかって次のいきみでは出ず。
その次でも出ず・・・・・。
ボウ、ごめん・・・早く出してあげないと苦しいのに・・・。
その瞬間、医師が 「もう、出そう、出さなきゃ。次で切るよ。」と助産師に言いました。
ハリが来てないのに、助産師が思いっきり引っ張っている。
「モコさん、がんばってお尻に力を入れて!諦めないでずっと長く頑張って!!」
緊急性があるのだろうか。 むりやりボウを出さなきゃまずい状況になったと言われた。
「いたーーーい!!!!」 「がんばって!あきらめないで!もう一回!!」
ズルリと何かが出た感触がした。
「でました」
ボウが出てきた。産まれてくれた。 でも・・・おめでとうって言ってくれない。
足元で、医師と助産師が何かしている。
産声が聞こえない。
ボウが泣かない。
「NICUにすぐコールして!呼吸してない!」
ボウ・・・。
ボウちゃん。
チョチョも私も、何が何だかわからずにずっとボウが何かされているのを見ていた。
私は、眼鏡をしていなかったので少し遠くに置かれたボウをじっと見ていた。
全身紫色だった。 それは、ぼやけていてもはっきりとわかった。
動かない。
泣かない。
なんで?
NICUの医師が、2人走って入ってきた。
「娩出時間は」
「20時2分です」
「今何分」
「5分です」
時間をしきりに確認しながら、ボウに酸素を当て、体をさすっている。
「酸素もっとあげて」
ボウの手足を持ち上げ離す。 ストンと落ちた。
人形のようだった。
「ぼうちゃん!ママだよ。聞こえる?ママだよ、ここにいるよ!」
私は、胎盤を出される痛みに耐えながらも、必死でボウに話しかけた。
「ボウちゃん!ママだよ!」
チョチョは、呆然としていた。
チョチョの手を握り、 「ボウ、絶対聞こえるから呼んであげて・・・」
「ボウ!がんばれ!ボウ!」
「ぼうちゃん!ぼうちゃん!!」
「大丈夫だよね?ボウは大丈夫だよね」
チョチョと二人で祈り続けた。
すると、名前を呼んだのが聞こえたかのように、ふにゃ・・・と細い声をだし ピクリと体が動いた。
何分経っただろう。
呼吸は不規則ながらにも回復し、ようやく小児科の医師が私たちの横に来てこう言った。
「おくれましたが、このたびは、おめでとうございます。小児科の〇〇です。 ビックリされたと思いますが、お子様は今なんとか酸素をして呼吸ができる状態になりました。 首にへその緒が巻き付いていたのもありますが、すこし呼吸が心配なので、しばらく私たちのところで預からせていただいて、いろいろ検査をしてみたいのですがよろしいでしょうか?」
「お願いします」
「何もなければ、2時間後にでもお部屋にお連れしますね。すこしだけ、写真撮りますか?」
そういって、助産師がボウを私の横に置き、2枚だけ写真を撮ってくれた。
「抱っこさせてあげられなくてごめんね。」
ボウは保育器にはいり、NICUに連れていかれました。
分娩室のドアはなく、カーテン1枚ですぐ廊下です。
そこに椅子が置いてあり、私の母が座って待っていました。
あとから聞きましたが母は、産声が聞こえなかったことや、私たちが呼びかけているのを聞いて
もしかしたら・・・・と涙が止まらなかったようです。
医師の処置をする声や私たちの呼びかけをカーテン越しにしか聞くことができなかった母は どれだけ不安だったでしょうか。
母の気持ちを想うと、私も涙が止まりませんでした。
「きっと大丈夫だ、ボウは強い子だから。信じよう。大丈夫。大丈夫。」
チョチョと母と、祈っていました。
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