寄る年波
この春、18歳になるソクラテス。
1歳の時の交通事故で視力を失ったものの、その後は大きな病も無く今日を迎えた。
久々に血液検査をしたところ腎臓の数値が少し悪く、ここで腎臓サポートの療法食に切り替える事にしたのだが、とはいえ毛艶は良く、シニア組の中では最も健康状態が良さそうに見える。
瞳同様、被毛は健康状態を観る上で重要な一つのバロメーターである。
近年は耳が遠くなり、気配で他の存在を確認しているが、人でも耳が遠くなると長寿、とも言われるので長生きしてくれることを期待する。
ソクラテスは数年ぶりの病院であった。
移動中は外気とキャリーの揺れを楽しんでいたかに思えたが、着いた先が病院で、声の大きな院長先生にワサワサと触られているうち次第に御機嫌斜めになり、シャーシャーと盛んに威嚇していたけれど、キャリーの中に戻すと嘘のように静かになり、うとうとし始めた。
10歳頃までは病院でも断然社交的な子であったが、今となっては視力を失ってからのほうが長くなり、地震も経験したからか、慣れない場所では以前よりも警戒するようになった感が見て取れる。
ソクラテスは威嚇はしても、噛み付いたり素早く引っ掻くことをせず、一頻り撫でてなだめて落ち着かせられるのだが、過日、別の場面で大騒ぎしている猫の患畜さんに出くわした。
飼い主の呼び掛けも耳に入らず断末魔の叫びとはこの事か⁈と言うほど、それは大変なものであった。
先生曰く、近年は産まれた時から室内飼いで、過剰なくらい怯えて怒り方がハンパないくらいスゴイ子が増えてきたように思う、とのこと。
外の世界を知っていると、他の猫や人間と触れ合う機があり、室内以外で起きる出来事も経験しながら成長する為、観察力も鍛えられていたという事のようで、先生の主観の範疇ではあるけれど、近年増えたように感じるあんなに闇雲に怒る子、は昔は居なかった、のだとか。
思えば歯周病も尿路疾患も人間同様、生活習慣が関係している事が多く、性格もまた環境の影響は大だ。
生後、十分な時間、親兄弟と一緒に居られなかった犬猫もまた、精神面に問題が生じる事が明らかになり、生体販売や譲渡するまで一定の期間が設けられるようになったのはまだ記憶に新しいところであるが、それはまた別の機会に。