「杉藤SUGITO」の弓には初心者用の楽器にセットになっている安物、というイメージしかなかった。中学生の時に使っていたスズキの楽器についてきた弓にSUGITOという刻印があったように思う。そんな量産の弓をプロのヴィオラ弾きの息子が勧めるとは、と思ったが、今はかなり変わってきているらしい。
1946年から1975年までの三代目社長(杉藤武司さん)が量産を推し進めて成功を収めた功労者だったらしい。私が中学生の時使っていたのはこの時代のものだろう。武司さんは安価な弓を大量に作るだけでなく上級者やプロのための弓も研究し、腰の強い「マイスター・ボー」シリーズを開発した。1975年から2008年まで社長を務めていた四代目の杉藤浩司さんはヴァイオリンをかなり上手に弾きチェロも弾いたらしい。この浩司さんはヨーロッパに留学したりして研究を重ねたくさんの弓を手作りした後、「センシティブ・ボー」を開発したそうだ。
このセンシティブ・ボーは木取りが普通の弓と違う。普通の弓は木目に沿って真っ直ぐに木取りし弓の形に削り、完成後に熱で曲げて反りをつける。センシティブ・ボーは最初から反りのついた形で木取りをする。だから、弓元と弓先では木目が弓の軸に対して斜めになっている。この工法に耐える上等の材料しか使えないし、材料の無駄も多くなるらしい。浩司さんは独自のアイデアでこのセンシティブ・ボーを開発・製作し、納得できる弓が作れるようになり商品化したが、製作の勘所を後進の職人に伝授する前に癌で亡くなった。社長は浩司さんの奥様が継ぎ、古くからの職人の向井さんが自分で研究を重ねてセンシティブ・ボーを作れるようになり、現在製造販売中だ。
杉藤の弓にはスタンダード・シリーズ、マイスター・シリーズ、センシティブ・シリーズがある。マイスターは税込みで22万円から110万円まで5グレードあり、値段が高いほど腰が強いらしい。センシティブにも税込みで27万5千円から143万3千円までの5グレードがある。息子が勧めるのはセンシティブだ。
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Last updated
2021.03.28 08:15:07
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