すでに存在している家畜で共通して現れている特徴に、耳が垂れる、ブチの毛皮、鼻面が短くなる、などがある。ヒトに馴れるという性質を持つキツネを選抜・交配してペットのようなキツネを作り出したところ、同様の特徴が現れた。この原因の解釈に関する論文が10年ほど前に発表された。これらの特徴はすべて「神経堤細胞」に結びついているというのだ。「神経堤細胞」!その論文のタイトルを見た瞬間、それが正しいことを確信した。同時になぜ自分がそれに気づかなかったのだろう?というショックを受けた。
「神経堤細胞」(Neural crest cells)は発生過程で一過性に現れる細胞群だ。哺乳類では共通して現れる。他の脊椎動物にあるかどうかは確かめていないが、おそらく共通だろう。哺乳類の発生過程は「二層性杯盤(胚盤葉上層と胚盤葉下層の二枚のシートができる)」、「三層性杯盤(外胚葉、中胚葉、内胚葉の三枚のシートとなる)」と進み、その直後背中側の皮膚の表皮を作る外胚葉の正中部分が肥厚し神経板となり、ここに溝ができて丸まって管状(神経管)になり、表皮部分から切り離され深部の中胚葉の中に埋没する。神経管は脳と脊髄になる。この過程で外胚葉の一部が表皮からも神経管からも分離して中胚葉に侵入する。これが神経堤細胞だ。この細胞は外胚葉由来だが中胚葉の細胞と混ざり、遊走性を持ち体のあちこちに移動し、様々な細胞群の原基となる。表皮の最深部にあるメラニン細胞、顔面の骨格や軟骨の一部、脊髄神経節、副腎髄質などは神経堤細胞に由来を持つ。
家畜化された哺乳類ではこの神経堤細胞の数か活性が少し弱いのだろう。すると皮膚のメラニン細胞に異常が出て毛皮の色が変化してブチが現れる。顔面の骨格の発達が悪く鼻面が短くなり、軟骨の発達が悪く耳介軟骨が弱くなり耳が垂れる。副腎髄質は交感神経の一部でアドレナリン・ノルアドレナリンという攻撃性のホルモンを出す臓器だが、これが弱くなるのでヒトを攻撃しなくなる。
これですべの事実を説明できるのだ。
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Last updated
2024.02.22 08:02:32
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