カテゴリ:本
私がいつも見ているロンドンの日本人向け掲示板には売り買いのコーナーがあって、いろいろな人が毎日何かの広告を出している。
ここで広告を出している中でいちばん多いのが、いわゆる「帰国売り」。 駐在員などで、帰国が決まった人たちがこちらの電化製品などを在英の日本人に安くで売り渡していく。 その次に多いのが、日本語の本が売られるもの。 捨ててしまったり、二束三文で古本屋で買ってもらうよりもちょっとは高く売れる・・・儲かるというほどでもないけど。 本を読みたい側は、日系のお店で高いお金を出すこともなく、読みたかった本が手にはいるのでありがたい。 このコーナーで売られるのは、英語の勉強に関係ある本や、旅行のガイドブックが多い。 私自身は別に英語の勉強の本はいまさら読む必要はないし、旅行のガイドブックというもののお古がキライで、高くても新品を買ってしまうので、そういうたぐいに興味はない。 読みたいのはやっぱり小説とかエッセイだ。 広告を出している人は、だいたい一人でだいたい10冊くらいの本を1ポンド前後で売っている。 しかし、売られている本が小説等である場合でも、売りに出されている10冊が、まったく自分の趣味に合わなさそうな感じはすぐわかる。 言っちゃ悪いが「アンタ、こんな本を買って読んできていたの?」と言いたくなるような本ばかりで誰かの広告が埋め尽くされていると、こういう人とどこかで会っていてもすれ違いだっただろうなぁなんて思ってしまうこともある。 で、実際、本の広告を出している人の中には、私にとってはタダでも読まない本をいっぱい出している人のほうが多かった。(ごめんねー。) 3ヶ月ほど前、その売り買いコーナーで広告を出していた人から、日本語の本を何冊か譲り受けた。 売り手だったMさんのその広告には、確か20冊くらいの本が紹介されていたはずだが、私はその広告を見た途端に彼女に「全部譲って下さい。」というメールを書いた。 中にはタイトルも知らない本もあったのだが、広告を見た瞬間に、機会があれば読みたかった本が半分くらいあったことから、恐らくこの人が持っている本なら、たとえ私が知らない本でも、私の趣味を大きくはずれていないんじゃないかと直感したのだ。 その時、彼女から返事があり、4~5冊は先に売れたので、それ以外は譲ってもらえることになったが、手にはいらなかった本にどうしても読みたいものがあり、残念なことをした。 彼女は、こちらがお願いしておいた通り、中心街に勤めるダンナのオフィスに足を運んで本を持ってきてくれ、あらかじめ預けておいた代金をダンナから彼女に支払ってもらった。 その時から今まで、結構あれこれで忙しく、なかなか実際に手にとって読める時間がないのだが、このロンドンで「これから読む本がある」という先々の気構えができたのがちょっとうれしい。 今日の昼、家に帰ってメールを開けると、そのMさんから「帰国が決まったので、広告を出す前に売りたい本があるがどうか」という内容のメールが来ていた。 彼女は、以前と同じく丁寧に本のタイトルと作者とちょっとしたあらすじを書いてくれていた。 それに「もう一人知らせている人があるのでお早めに」と断りを入れてくれていたが、今回の本のラインナップも「もしも私が日本にいたら、どこかの時点で買って読んでいたのではないか」と思う種類がほとんどだったので、買いたいものを知らせておいた。 私の反応が速かったからか、それとももう一人の人がどれもいらなかったのかはわからないが、今回はお願いした本がすべて手にはいることになった。 彼女には来週のいつか、またダンナのオフィスへのご足労をお願いすることになるが、この本がきっかけで何度かメールをやり取りしていると、不思議な気持ちになってくる。 彼女に自分のことはほとんど話していないし、彼女のことも何も知らない。 彼女に会ったのはダンナだけで、ダンナも顔を見ただけだし、何かを詳しくきいたわけでもない。 私はただ彼女が日本に帰ることになったというのを知っているだけで、後は彼女が読みたい本と私が読みたい本がかなり近いということを知っているだけだ。 彼女は、今回売りに出した本も、本当は手放したくなかったようだが、他にも引越しの荷物がいろいろあるのに、わざわざ日本の本を持って帰る算段までしていられないということで手放す気になったらしい。 会ったことも話したこともなく、恐らくこれからも会うことはないだろう彼女が大切にしてきた本に、今度は私が愛着を持って大切に読みたいと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年03月28日 09時31分53秒
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