カテゴリ:雑感
いつも楽しみな日記の一つ、パリ在住のMAOさんちのページをのぞいたら、今日はコーヒーの話に力がはいっていて、ふと思い出した。
ここしばらくは全然行けなくなったのだが、ロンドンの中心近辺で働いていた時によく行くカフェがあった。 ロンドンに来たことのある人なら、ピカデリーサーカスに大きなTower Recordがあるのを知っている人も多いと思うが、そこからリージェント・ストリート沿いに少し北に上がると、北西角にTalbotというレディスのブティックがある。 その角を左に曲がり、20mほど先の北側にそのカフェがある。 京都にいた頃、私は仕事が終ると、それが9時になっても10時になっても、四条裏寺の「はなふさ」で必ず一杯コーヒーを飲んでから家に帰るのが日課だった。 バーテンダーの人たちは、一見さんたちからするとちょっと無愛想に見えたかも知れないけれども、なぜか最初の頃から私はとても親切にしてもらっていて、一緒に馬鹿話に興じることもあれば、本を読んでいる時は話しかけずにいてくれたり。 結局13年くらいは通っていたことになるし、ロンドンに来てからも帰省のたびに顔を出していたが、とうとう一昨年の夏に閉店してしまった。 ロンドンに来た当初、私は独身。 仕事が済んだ後、そのまままっすぐ帰るのも気が向かず、あちこちぶらぶらしながらおいしいコーヒーが飲めるお店がないか探していた。 ロンドンにもカフェや喫茶店ぽいものはあるが、なかなかお店の色合いが感じられるところに会えず「コーヒーは飲めるけど」という中途半端な気持ちになっていた。 そんな時にたまたまはいったのが、さっき書いたカフェだった。 お店をはいると、右側においしそうなケーキがあれこれ並んでいる。 ロンドンに多い「大きければいいでしょ?」的なケーキとは何か違っていて、作っている人の繊細さが感じられるようなケーキだったことにとても眼をひかれたのを覚えている。 「はなふさ」のようなカウンター式ではもちろんなく、テーブルが15くらい並んでいたかと思うが、夕方の仕事帰りの時間に満席であることは一度もなかった。 そこで飲んだ濃いめのコーヒーがおいしいのと、案外居心地がいいのとで、そのうち毎日通うようになった。 毎日通っているうちに、そこのオーナーらしき優しいおじさんがいつもどこかから帰ってくることがわかる。 そのおじさんは、毎日そこにいる私にとても丁寧に挨拶をしてくれるようになった。 会社の同僚以外には知っている人もいない頃、このおじさんの顔を見るといつもほっとしてコーヒーを楽しんだ後、バスに乗って、当時間借りしていた家の自室に帰った。 ある日、そのカフェでいつものようにコーヒーを飲みながら本を読んでいると、隣りのテーブルに一人の日本人のご婦人が座り、夕食というには少し早い時間にサラダと飲み物を注文した。 そのご婦人はやがて、ぽつぽつ私に「こちらにお住まいなんですか?」といったような他愛のない質問を始めた。 彼女は一人旅のようで「ミュージカルをいろいろ楽しみに来ていて、だからちょっと早いけどお腹に何か入れようと思ったの。」ということだった。 どんな話題ということもなく、会話が30分くらい続いたが、50歳を超えたかという年齢の中に非常にすがすがしいものを感じる人で、会ったばかりなのに私は猜疑心も気負いもなく、隣同士のまま会話のキャッチボールを続けていた。 そろそろ帰る時間になった私は「じゃあこれで失礼します。どうぞ、お気をつけてご旅行をなさって下さいね。」と言うと「あなたもどうぞお元気で。」と彼女。 二人とも相手の名前も住所もきかないまま、もう会うこともないだろうとどちらもが静かに思いながら別れた。 その後、簡単に言えば電撃的に結婚してしまい、職場が中心から東のほうに移転した後、ダンナと二人でそのカフェを訪れた。 久しぶりに会ったオーナーのおじさんに「私、この人と結婚したんです。」と言った。 おじさんはいつもの優しさの中に、さらに破顔一笑で「それはよかったね。」と心から喜んでくれたようだった。 日本に帰省した時はちょっとした日本のお土産をおじさんに持って行ったりして、もう少しおじさんと話すようになっておじさんがフランス人ではなく、スペイン人だと聞いて二人とも驚いたものだ。 お店を出る時に、そこのケーキやタルトをいくつか買って帰って、フラットで食べると見た目を裏切らないどころか「これはかなりのヒットやね」と二人がお互い眼を見張る味でうれしくなった。 それから私たちは仕事の関係もあって、南のほうに引っ越してきた。 会社と家との往復で一日が終わってしまう私がおじさんのカフェに行くことは久しく途絶えてしまった。 自分一人だけの郷愁と言ってしまえばそれで終わりだし、おじさんも別に私たちくらいが来なくてもなんでもないかも知れないけれども、だんだん冷え込んでくるこの時期に久しぶりにおじさんのカフェに無性に行ってみたくなった。 別に子供ができましたよ、というようなお知らせもできないけれども「おじさんの顔が見たくなって」とだけ言えばいい。 ちょっと暖かい気持ちになってみたいロンドンの初冬の夕暮れである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
おじさんの喜ぶ顔が見えそうです。あぁ!私もとてもおいしいコーヒーを飲んだような気分です。
おいしくて目を合わせる瞬間も居合わせたかのような! 「一見さん」これもまた最近読んでる本ではじめて知った言葉です。常連になって通うことによって生まれる関係っていいですよね。友達?うーん・・・ほら、前に私のほうの掲示板に書いてくれたような、握手しているような感じ!そうそう、それ。 (2003年10月23日 06時49分52秒)
あるよね~。
わざわざ行くほどのところじゃないから 引越などの理由で足が遠のいてしまったけど ふと、そこのおじさんの顔が見たくなるような、そんな店。 たまには感傷に浸るのもいいじゃない? ところで、栗ですが(ケスクセちゃん宅のBBSから) 日本の「いが」と、そっくりなものは食べられます。 たぶん、フランスでいうシャテンヌ、と同じだと思うの。 日本の栗よりも味は薄い気がするけど 問題なく食べられるよ。 栗ご飯に鶏肉の煮込みに豚肉の付け合せに うちなんて最近栗だらけ。 マロニエの木から落ちるマロンは、イガがぜんぜん違うし、あれは食べられません。 (2003年10月23日 07時15分02秒)
イエペさん
>おじさんの喜ぶ顔が見えそうです。あぁ!私もとてもおいしいコーヒーを飲んだような気分です。 おいしくて目を合わせる瞬間も居合わせたかのような! →本当にこのおじさん、丁寧で、わざわざ腰を折って「How are you, Madam? Good?」って言ってくれるんですよね。 日本語で「えーえー、おかげさまで。」と答えるのがいちばんふさわしいかも、と思うほどです。 「一見さん」これもまた最近読んでる本ではじめて知った言葉です。常連になって通うことによって生まれる関係っていいですよね。友達?うーん・・・ほら、前に私のほうの掲示板に書いてくれたような、握手しているような感じ!そうそう、それ。 →そうねぇ。気持ちの握手っていうのがやっぱり人生では何回か起こるというか「これがそうだ!」と思う時がありますね。 (2003年10月23日 08時11分42秒)
何を隠そう、今日のネタはまおさんのコーヒーネタからだったし・・・結構インパクトがあったな。
>わざわざ行くほどのところじゃないから 引越などの理由で足が遠のいてしまったけど ふと、そこのおじさんの顔が見たくなるような、そんな店。 →なんとなく、まおさんがそこに行っても喜んでくれるんじゃないかとふと思う。 とは言っても、やっぱりパリのほうがいいところが多いからなぁ。 >ところで、栗ですが(ケスクセちゃん宅のBBSから)日本の「いが」と、そっくりなものは食べられます。 たぶん、フランスでいうシャテンヌ、と同じだと思うの。 日本の栗よりも味は薄い気がするけど 問題なく食べられるよ。 栗ご飯に鶏肉の煮込みに豚肉の付け合せに うちなんて最近栗だらけ。 →いいなぁ。うちの近所はリスも多いのですでにかじられちゃってるかも。 マロニエの木から落ちるマロンは、イガがぜんぜん違うし、あれは食べられません。 →ほー、勉強になりましたと言いたいところですが、マロニエから落ちるマロンっちゅーのを見た覚えがないがな、こりゃ。(笑) ----- (2003年10月23日 08時14分52秒)
う~~~ん映画のワンシーんみたいな風景が浮かんできた。
いきつけのカフェか・・・ゆとりのない生活をしている(時間的に精神的に金銭的に)私には憧れだな。 そんな、ちょっとした人のふれあいを大事の思うちゃとさんが素敵!! で、ちゃとせんとご主人は電撃的な結婚だったの???そちらの話にも興味あり。 (2003年10月23日 08時40分57秒)
私もはなふさ、何度か行きました。
中学のころから、??歳まで京都の南部の方に住んでいたもので。 ほっこりできる喫茶店って、今は少なくなりました。 カウンターでマスターとお話するのは、私も好き。 私は、専ら、コーヒーじゃなくて、お酒の方だったけど。 1人でふらっと、入って、一杯ひっかけてマスターとしゃべって帰るって感じ。 家に帰るまでの、スイッチの切り替えって感じでしょうか? 母は、お盆すぎから、肝臓に腫瘍が見つかって、ずっと入院しておりました。 入院していたときは、気弱な声をだしていたのに、退院したとたん元気になっておりましたとさ。 (2003年10月23日 10時26分37秒)
>私もはなふさ、何度か行きました。
中学のころから、??歳まで京都の南部の方に住んでいたもので。 →うれしーい。結構有名なところだったので、知っている人もいるとは思っていたけど、きゃらめるさんも行かれてたとは! でも、そしたら会ってたのかもよ! ほっこりできる喫茶店って、今は少なくなりました。 →確かに。ドトールとかスタバとかシアトルとかも今は多く・・・。それが悪いとは思わないですがね。 カウンターでマスターとお話するのは、私も好き。 私は、専ら、コーヒーじゃなくて、お酒の方だったけど。 1人でふらっと、入って、一杯ひっかけてマスターとしゃべって帰るって感じ。 家に帰るまでの、スイッチの切り替えって感じでしょうか? →その通りです。しかし、実は私はこう見えてアルコールが1滴もだめで・・・だからコーヒーに走ってしまいましてん。 母は、お盆すぎから、肝臓に腫瘍が見つかって、ずっと入院しておりました。 入院していたときは、気弱な声をだしていたのに、退院したとたん元気になっておりましたとさ。 →うちは母が4月に肺がん切除。手術は成功で、今はかなりの度合いで回復しました。 親は大事にしたいものです。 (2003年10月23日 14時56分21秒)
自分の「居場所」「帰る場所」みたいな所ってありますよね。何故か、カフェとか飲み屋が多いけど。
店が魅力的なだけじゃなくて、そこに魅力的な人が居ないと駄目なんだよね。 そういう場所が、不況のせいか?段々無くなっていってるのが寂しいこの頃です。 (2003年10月23日 17時23分20秒)
>自分の「居場所」「帰る場所」みたいな所ってありますよね。何故か、カフェとか飲み屋が多いけど。
店が魅力的なだけじゃなくて、そこに魅力的な人が居ないと駄目なんだよね。 →その通りです。お店の人だけじゃなくて、そこの常連となんか横につながっちゃったりして。 別にそれをことさら望むわけではありませんが、自然にそこに属していることに気づく時があります。 ただ、深入りし過ぎると、聞きたくない話まで聞こえてきたりすると「一見さん」に戻りたいと思うこともね。 そういう場所が、不況のせいか?段々無くなっていってるのが寂しいこの頃です。 →この「はなふさ」もそうですが、京都も帰るたびにどこかがコンビニか携帯電話屋になっていて寂しいです。 先日、ふと一瞬ですが「この感覚が私はやっぱりよそに嫁入りしてしまったということかなぁ」と、実家の近所をバスで通りながら衝撃的な痛みとして感じてしまいました。 (2003年10月23日 20時29分40秒)
えー話や。(涙)
なんか勝手にほのぼのしている私がココに・・・。 行ったら会える、でも敢えて連絡していない人との関係って 不思議な感じ。暗黙の了解があるというか・・・。 はー ええ話や。。。 今日はこれでイイ夢見られれる。 私もそんなcafeがいつかできるといいな。 自分の場所があるようなお店。 ところで京都って 最初は無愛想って感じだけど だんだん中に入ると 気安く話してくれますよね。 最初はほんとに怖じ気づいてしまう事もあるのだけれど。 でもそのギャップが、更に楽しさにプラスされるんですよね。 (2003年10月24日 01時31分11秒)
ケスクセ?さん
>えー話や。(涙) なんか勝手にほのぼのしている私がココに・・・。 →ケスクセ?さんの眼にも涙。うれしおす・・・。 (きしょくわるいな!) 行ったら会える、でも敢えて連絡していない人との関係って不思議な感じ。暗黙の了解があるというか・・・。 →人間同士の距離って、それぞれの関係ごとに決まるところがあるよね。いちばんいい距離のうちはいいけど、近すぎても遠すぎてもうまくいかない、というような。 こっちが気に留めていて、いつか行ったら絶対会えると思っているだけでもいいと自分で思っています。自己満足と言われても、私は自分がよかったらそれでいい。 はー ええ話や。。。 今日はこれでイイ夢見られれる。 私もそんなcafeがいつかできるといいな。 自分の場所があるようなお店。 →あのー、悪いけど、ケスクセ?さんってそういうとこいっぱいありそうなんやけど・・・ それとも多すぎてもう分別できないとか。(笑) ところで京都って 最初は無愛想って感じだけど だんだん中に入ると 気安く話してくれますよね。 最初はほんとに怖じ気づいてしまう事もあるのだけれど。 でもそのギャップが、更に楽しさにプラスされるんですよね。 →京都以外を知らん、という部分もあるけど、確かにこういうギャップがよけいに感動したりする元になりますな。同意。 (2003年10月24日 01時35分31秒) |
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