カテゴリ:イギリス
昨日の7時半過ぎ、家の最寄の駅でクマイチと待ち合わせ。
クマイチはすでに駅に着いていたのだが、売店でコーヒーを買って飲みながら、反対方向からの電車で帰ってくる私を彼はそこで待っていた。 いや、別にそこで待ち合わせてどこかへ行くわけでもなく、そのまま徒歩5分の我が家に一緒に帰るだけのことで(爆)いつも電話で「先に帰ってていいよ」と言うのに彼は待っている。 そして、駅から家までのその短い道のりの間から「今日な、こんなことがあって・・・」というような話が始まり、それは家の中まで延々続くのだが、この時間にいつも一人のランナーに会う。 普通の気候の時は白いTシャツ(しかし、イギリスで白いものを洗濯していると、日本よりも遥かに速く色がくすんでくる)に紫のジャージ。 少々気温が高い時には、紫のジャージの代わりにピンクのランニングパンツ。 そして、その主は・・・なんと 完璧に70歳にはなっているおばあさんだ。 このおばあさんを見かけるようになって、たぶん3年は経つと思う。 おそらく近所に住んでいるとは思うが、まあ家までは追いかけていったことはないから、具体的にどこの家の人かは知らないし、挨拶もしたことはない。 挨拶なんてできないはずだ。 そのおばあさんに出会うすべてのタイミングは、ただ走っている時だけで、そのひたむきさというか黙々と走る姿からは、つまらない挨拶で人の足を止めるのはご無用という孤高の雰囲気がひしひしと伝わってくる。 そのおばあさんはだいたいその時間、2人で帰る私たちの横を斜めに横切るので、いつも一瞬びっくりするのだが、どうも走り方自体は左にかなり傾いている。 しかし、長距離ランナーたるもの、ある程度走りこんで自分なりのフォームができてしまうと、矯正された美しいフォームよりもスピードも距離もイケるというのは、かつての谷口浩美氏を見ていてもわかると思う。 このおばあさんに追い抜かされた後、おばあさんは私たちの家の前を通ってさらに進んで行くが、一旦抜かされた後は普通に歩いていたのではこのおばあさんには追いつけない。 せいぜい小走りに追いかけるようにでもしなくては追いつけない。 2日ほど前、私は早出だったのですでに家についていたが、いつものその時間にクマイチが帰ってくるなり「走ってたよ、また」と言う。 その日は一日イヤな天気で、クマイチが帰る頃には雨が降っていたのだが、おばあさんはいつものスタイルの上にケープ状のウィンドブレーカーを着て、裾をはたはたとなびかせながらクマイチを追い越して行ったので彼は一瞬ぎょっとしたらしいが、正体はそのおばあさんだった。 週末になると車で買い出しに出かけるのだが、その時に行くスーパーの一つは、国鉄の駅にして最寄駅から4つ離れたところにある。 その間の距離はずばり6km半ある。 そのスーパーから500mくらい手前のところの信号待ちで車を止めた時、なんとその横の歩道の向こうから紫のジャージが傾きながら近づいてきて、さっと車の横を通り過ぎた時には絶句した。 普通、うちのエリアからあそこのスーパーまで徒歩で行く人すら、まずいない距離を、いつもの傾き加減のフォームでおばあさんは事も無げに走っていたのだ。 昨日は、先週あたりに比べるとちょっと気温が高かったのでピンクのランパンだったおばあさんが通り過ぎた後、思わず太腿から膝裏、そして足首をしげしげと見つめてしまった。 浮き出ているしみはあったものの、余分な贅肉はなく、かといって折れそうな細い小枝のような脚ではなく、筋肉が静かにそれを形作っているという立派なランナーの脚であることを見逃がさなかった。 おばあさんが横切ると、私とクマイチはそれまでのバカ話をいつも2人同時にやめてしまう。 クマイチは言う。 「オレ、20何年こっちに住んでいる中で「もっとも尊敬する5人のイギリス人」の1人に間違いなくあのおばあさんがはいるよ」 「ほな、後の4人てダレ?」と私が混ぜ返す。 クマイチはうーんと30秒くらいうなった後でこう言った。 「時間がかかりそうだから、また後で考えるよ」 ***** 今晩くらいから3~4日の間、日記はお休みしようと思っています。 ここのところ、どうも書くテンションが下がってしまっているのと、ちょっと来客があったりもするので、一度リセットするほうがいいという気がしています。 皆様も暑さに負けず、どうぞご自愛下さいまし。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[イギリス] カテゴリの最新記事
|
|