カテゴリ:雑感
一昨日の夜遅くに、以前の同僚だったひろみさんから電話がかかってきた。
彼女とは昼間に定期的に月1回くらいは会っているので、なんだろうと思っていたら、彼女から(私にとっては)衝撃的な話を聞いた。 えりこちゃんが会社を辞めて日本に帰る… いや、私たちは日本人なのだから、人生のどこかで日本に戻ることは不思議ではない。 しかし、ひろみさんから聞いたえりこちゃんの話は私にとってはかなりショックなものだった。 何度か日記に書いてきたことがあるえりこちゃんとは、もう3年ほどの付き合いになる。 今年初めまで一緒にいた会社に、彼女はちょうど3年前に面接を受けに来た。 とはいっても、私がたまたま帰省中か何かで会社にいなかった時に、デイヴと、当時私とは飛車角の間柄であったはるさんと2人が面接し、この子がいいということで、私が会社に戻る前に採用を決めていた。 見た目からして物怖じしなさそうな彼女を選んだデイヴとはるさんの目は確かで、その後、彼女は持ち前の根性でいろんな仕事やうるさいお客にめげることなく格闘し、だんだん職場になくてはならない存在になってきた。 去年、私がアジア支部に出張した後、交代で出張に出てくれた彼女はその時は普通のスタッフ。 いわばヒラの立場で手伝いに行ってくれたのだが、もともと決断力のない人たちの多かったアジア支部では、彼女はヒラではありながら大いなるリーダーシップを発揮し、非常に感謝されながらロンドンに戻ってきた。 その後、えりこちゃんは、実力もキャリアもトップのみかちゃんとともにスーパーバイザーの昇進試験に挑戦したが、この試験の最中にいろいろ起こった出来事で試験の結果が出るまでの期間が2ヶ月近くに及んでしまい、そのことでプレッシャーを感じたみかちゃんは途中で棄権。 残ったえりこちゃんは、自動的に昇進が決まるわけではなく、それからさらに数週間のモニターに耐え、みかちゃんより経験がかなり浅いにも関わらず見事スーパーバイザーの座をもぎ取る。 しかし、これまで私と一緒にスーパーバイザー職だったはるさんやひろみさんに比べると、えりこちゃんは物事を深く考え、先を読み、アジア支部ではなくヨーロッパ支部のリーダーシップを取るところまではなかなか行かず、本人も私も焦った時期もあった。 その後、去年の今頃、全員解雇の見通しという大騒動の中、私は今の会社の社長である山村さんに請われ、みつこさんやゆみさん・ゆきちゃんを連れて一足先にチームを去る。 ひろみさんやえりこちゃんはとりあえず仕事の最後の日を見て退職するはずだったが、最後の日の5日前に決定が覆ってチームは残った人たちで存続させることになり、ひろみさんが代表となり、えりこちゃんはその片腕として今日までやってきたのだ。 ひろみさんからは「あれからえりこちゃんは『他に自分の仕事を分けてやれる人がいない』という自覚が出て、かなり頼りになる存在に着実に育った」と毎回聞いていたが、彼女は実は個人的には大変つらい思いをしていた。 ちょうど彼女の昇進が決まった頃に、止むに止まれぬ事情でご主人と別居・離婚。 その後、新しく付き合い始めた彼氏ができて、夏には一緒に焼肉パーティで騒ぎ、それに何より、つい2週間前のゆみさんちのパーティにも来ていたのに、えりこちゃんにおかしなところがあるとは思っていなかった。 ひろみさんに「なんでまたそんな急に…」と絶句しながら聞くと、えりこちゃんの先月の日本の帰省の真っ最中に、お父さんが事故で亡くなったことを聞かされた。 10月頃、えりこちゃんは「ちゃとさんが日本に帰る頃に私も帰るんです」と言っていたこともよく覚えている。 但し、彼女が日本に戻ってくる時には私は東京での会議があったので、たぶん日本で会う時間はないなぁと答えていたのだ。 えりこちゃんは今回の帰省中に、ご家族と一緒にお父さんのお葬式を出し、休暇が終わってロンドンに戻ってきてからも、周りにそれをほとんど言っていなかったらしく(だからこの間のパーティの時も誰もそれを知らない)ひろみさんも私に電話をくれた日まで知らなかったそうだ。 しかし、気持ちがめっきり弱くなったえりこちゃんのお母さんは、えりこちゃんの兄弟がもっと近くにいるにも関わらず、えりこちゃんに日本に戻ってきてほしいと頼んだということだ。 えりこちゃんはその新しい彼氏とも別れ、来月、単身で日本に戻ることを決めたと聞き、言葉を失った。 一昨日、それを聞いたばかりのひろみさんは、とにかくえりこちゃんが早く今の環境の後片付けができるよう、彼女の退職を早めるように算段し、えりこちゃんは、苦楽を共にしたチームを来週で去ることになったのだが、ひろみさんは自分自身も片腕を失うショックに耐え切れず電話をくれたのだ。 その夜は朝方に目が覚めた後、もう眠れなかった。 ひろみさんから、うちの3人にこの話をしていいと聞いていたので、昨日ヒマになった時に「仕事の話ではないんだけど」と言いながら、この話を始めると、自分では想像もしなかったのに涙が溢れ始めた。 えりこちゃんが来た日のことに始まり、去年の彼女自身の激動の日々を思い出さずにいられなかった。 昇進試験で巨大なプレッシャーがかかっていたこと、せっかく光が見え始めたら離婚せざるを得なくなったこと(彼女は昇進したことで元のご主人についていかないことを決めたのだ)、その後、会社ががたがたし始めて一時は職探しを始めていたのに会社の存続がぎりぎりに決まったこと(これは決して「よかったね」と言えるようなものではなかった)、ともに生活するパートナーがそれから見つかったこと、そしてお父さんが今般なくなり、そのパートナーとも別れて日本に帰国を決めたこと。 泣けて泣けて、涙が止まらなくなって、しばらく仕事は中断した。 来週のえりこちゃんの退職日のパーティにはうちのチームもみんな行くことになる。 できたら参加したくない気分でいっぱいだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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