カテゴリ:イギリス
そうこうしているうちに牧師さんのお話が始まる。
いわゆる「説教」というやつである。 牧師さんがお話の途中に「Amen」と言うと会場のあちこちから「Amen」と呼応する声が聴こえる。 これは アーメン ではなくて エイ~~~メーン なのですよ。 「説教」なので、牧師さんもわかりやすい言葉を選んでいるのだろうが黒人の人特有のアクセントもあるし、それにこういうものは言葉自体を知ってはいても、下地となるキリスト教の教義や意識というものがないと概念として理解するのがしんどい。 もちろん普通にわかるところでは、一応積極的に参加していますよという意味で時々(それでも小さな声で)「エイ~~~メーン」と同じように声を出してみる。 時々「3分間祈りましょう」などと言われるのだが、そうするとみんなそれぞれに下を向いて目を閉じて、その場に立ったままでぶつぶつ祈っている人、自分の座っている場所から4~5歩ずつくらいうろうろしながら何か唱えている人、決して英語ではない言葉(ヘブライ語か、はたまたスワヒリ語か?)で比較的大きな声で頌栄を唱えている人…いろいろだ。 すると、また時々「隣人を讃えましょう」みたいな呼びかけがある。 最初、それがわからずにぼーっとしていたら、その場に参加している隣同士・前と後ろ、通路の向こう側のほうからも人がどーっと押し寄せてきて握手と歓迎・祝福の渦中におかれてしまう。 おお、そういうことか。 日本のお寺でも神社でも「ようお参りやした」というふうに、お参りに来ている者同士が、それぞれの信仰心を讃えるところがあるが、それと同じだ。 結局、私もクマイチも、牧師さんを含めて会場に来ていた全員と握手し、言葉を交わすことになったのだが、これは結構感動した。 クリスマスに朝から正装して礼拝に来るという家族・個人は、言ってみれば善男善女の集まりのようなもので、そこにはまったく敵意もなければ排他的な雰囲気もない。 どこの世の中の人も、家族や友達が元気で平和に暮らせることだけを願っている。 そのことに地域や文化で変わりのあるはずがないのだ。 私たちも、そこで袖摺り合った人たちの健康と幸せを願いながら一人ずつと握手する。 このサービスの途中、牧師さんは何度か聖書を引用し、その意味合いを説明する。 当然の如く、私たちは聖書など元から持っていないどころか旧約と新約の違いもわからない。 それに結局、今日行った教会の宗派が何なのか…英国聖公会なのかメソジストなのか、あるいは他の教派なのか…も不勉強・不道徳の極みでわからないままだったし。 ともかく話だけに耳を集中させていると、そのうちに後ろの席の家族のうちの女性が私たちに一冊聖書を貸してくれた。 お礼を言って、今はどこの節・章の話だろうと思ってぱらぱらめくっていると今度は前に座っている若い男性が「わかる?今はIsaiahの何章だから」などとちょこちょこ気にかけて言ってくれるようになったのだが、ああこれが日本で言うイザヤ書のことか等と思考がそれてしまうとすぐわからなくなってしまう。(笑) いずれにしても、参加者はものすごく真面目で敬虔な教徒の人たちばかりだという印象だった。 牧師さんの話に「エイメーン」で賛同する人、「ザッツ・ラーイト」「ハレルーヤ」と叫ぶ人、「もっと話を続けて下さい」と叫ぶ人、そこにいた人たちの反応がそりゃもうあちこち大声で響きわたり、義務的にそこにいる、というような感じの人を一人も見かけなかったことに驚いた。 そして楽器や機材が準備されていた音楽の時間。 これは、頭の中で「ブルース・ブラザーズ」の前半の教会や「ファイブ・ハートビーツ」の最後の部分の教会のようなクワイア(聖歌隊)をイメージしていたのとは違った。 要するに、その教区内で何人かの若者がバンドを組んで前で楽器を演奏し、同じく教区内の人と思われる数人が歌う、というようなコンサート形式。 それはそれで悪くはなかった。 考えてみれば、一つの教区で、礼拝に参加する人たち以外でクワイアの20人もいるような教区はものすごく大きいところに違いないし、今日行った教会はあくまでも地域の教会なのだからこんなものなのだろう。 うーん、但しもう少し歌がうまい人…鳥肌の立つような歌のうまい人が出てきてくれればもっとよかったのになぁとはちょっと思った。 (黒人の人って誰でもうまいわけじゃないのね。ちょっとほっとしたけれどもちょっと残念かな) それでもプロジェクタを使って歌詞がみんなに見えるようにしてあって、ゴスペル自体はメロディーが決して難しいものではないので、知らない歌でも繰り返し聴くうちに私たち2人もすぐ歌えるようになる。 知らない人たちとのこういう一体感はなかなかいいものだ。 礼拝に参加した人たちは、牧師さんのお話に集中していたのと同じ度合いでこの歌の時間も楽しんでいる姿がとても明るいと同時に清廉に思えた。 このサービスが2時間半弱で終わり、一応お開きとなったのだが、最初に話をつけてもらっていたエリスという男性が「どうだった?」と感想を聞きに来てくれたのだが、そのほかにもぞろぞろ私たちのところに来て「楽しめた?」「名前はなんて言うの?」「この辺に住んでいるの?」と珍客に興味を示してくれる様子がうかがえる。 「いいサービスでしたね。初めての経験だったけど、本当に印象深いものでした」と答えたが、名前や住所も書かされたし(笑)ひょっとすると後日またお誘いがあるかも知れない。 非常に場違いながらも、形だけでもブラザー・シスターの中で受け入れてもらったことはこのクリスマスの大きな収穫だ。 声を掛けてくれた人たちとまた握手をし、互いに祝福し合い、何かこれまでに経験したことのない高揚した気分で家に戻ってきたのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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