カテゴリ:イギリス
具合が悪いのに、また、皆さんから「やめろ」と言われたのに、この間の「ウイルス感染」レポート(爆)なんか書き綴っていたおかげで昨日は疲れて日記が書けなかった。
本末転倒の見本みたいなものだ。 さて、実はこの火曜日と水曜日にいきなりハマり始めた番組登場。 番組自体は今月の最初からやっていたし、今回はシリーズ2で、いつかの時点でシリーズ1があったらしいが、私は今週の火曜日になって初めて見た。 BBC2の「The Apprentice」という番組。 これ、内容はぜんぜん違うが、私がよく書いている新人発掘のオーディション番組としくみは一緒。(だから好きなんや、きっと) サー(の称号付き)・アラン・シュガーというおっさんがいる。ロンドン東部に生まれたユダヤ系(さすが!)のこのおっさん、今年59歳。 ![]() イギリスの億万長者の一人で、いわゆる立身出世伝の出そうなおっさんだ。 財産はなんと日本円で1兆6000万ほど。 洋服屋の息子として生まれた彼は16歳までは学校に行き、その後はトラックに積んだ野菜や果物の行商から仕事を始め、その後、役所の統計課に勤めたが、次に電化製品の販売を生業とする。 21歳でAMSTRADという音響機器メーカー(量産品)を設立。 今でもここのメーカーの製品は当然どこの電気屋でも売っているが、とにかくここの商売が当たり、上場後、80年代からは株価はうなぎのぼり。 90年代にはチャーター機のブローカーであるAMSAIRを設立して息子に経営させ、4時間以内で配機可能なチャーター機は世界に5000機。 とにかく一代で財産を築いたイギリスの有名人なのである。 この「The Apprentice」という番組では、われこそは会社に最大の利益をもたらす人材と思う20代~30代の男女を12人募り、12週間同じところで起居させ、毎週このおっさんが出した課題を達成させ、毎週1人ずつがこのおっさんの判断でクビにされていく。 クビにされずに最後まで生き延びた勝者には、このおっさんの会社でいきなり年収2000万のポジションが確保されている。 タイトルの「The Apprentice」というのは「見習い・丁稚・奉公人」といった意味で、この番組では12週の苦行に耐え、最後におっさんの会社に丁稚奉公できる権利を獲得するのだ。 応募者の経歴は多岐に渡り、営業・教育・大学院卒・マーケティングと、いろいろなバックグラウンドを持った人たちだが、毎週の課題の中で、おっさんは必ずこの12人(これは毎週減っていく)を2チームに分け、それぞれのチームリーダーを決め、課題の成果をチーム同士で競わせる。 おっさん自身が参加者を目の前にして毎回の課題のコンセプトを説明し、課題達成の本番日には、おっさんの両腕となる側近2人がそれぞれのチームの働きぶりをつぶさに監視している。 課題としては、ある時はおっさんのチャーター機のAMSAIRのメンバーシップカードの購入者獲得のための販促ツール(CM・街頭ポスター)作成とプレゼンを実施させて、おっさんのイメージしていたプランに近いほうのチームが勝ち・・・すごい基準だ。 ある時はいきなり中古車販売会場に連れて行かれ、簡単な商売の説明の後、2チームで車を実際に販売させ、売った車のコミッションの多いチームが勝ち・・・等々。 自分一代でビジネス帝国を築き上げてきたこのおっさんは、仮に自分が20~30代でこの番組に出たら、課題が何であっても絶対に自分が勝つに決まっていたという確固たる自信あり。 そんなおっさんだから、番組でももちろん、にこにこなんかしていない。 いつもクサいようなしかめっ面を貼り付けている。 各回の課題実施の後で会議室に参加者を集め、それぞれの成果を確認し、まず参加者2チームの勝負をあっさり決める。 勝ったチームにも「よくやった」というような評価なんかしない。 「下がってよろしい」で終わり。 そして、敗者チームの中から1人がクビにされるが、とにかく参加者の誰に対してもいちいちケチをつけて非難しまくっているものだから、最後の決め台詞が出るまで、集められた敗者チームの面々は誰がクビにされるのか戦々恐々なのだ。 そして最後に決め台詞 「You’re fired!(オマエはクビだ!)」 おっさんから文字通り指差され、引導を渡された脱落者はそのままスーツケースを持ち、参加者の誰にももう会わずに帰っていくのだ。 見送るほうにも去った人を思う余裕もなければ郷愁もない。 この番組を今週初めて2本続けてみたが、苛酷。 簡単に書いているが、番組を見ると窒息しそうになる。 与えられた課題の中には、運よくその分野の経歴を持つものもあれば、その分野にはまったくの素人もいるが、だからといってそれが結果にうまく結びつかない場合もなぜか出てくる。 それにだいいち人間には得手不得手というものがある。 しかし、本当に苛酷なのは課題そのものではなく、そこに集まっている参加者たち同士の関係だ。 友達ではない、一緒にがんばっていこうという仲ではない。 この番組で最後まで勝ち残った勝者には、このおっさんの会社でいきなり年収2000万のポジションが確保されていて、そのために参加者はこれまでの経歴を振ってこの番組に参加しているわけで、もちろん自分以外はすべて蹴落としたい人物なのだが、その相手に対する敵視のしかたは、歌のオーディション番組である「X-Factor」や「アメリカン・アイドル」の比ではない。 なので、総括の時のおっさんから非難を受けた参加者はみな「私がこれを達成できなかったのはチームリーダーの采配や方向付け不足で、あれさえなければ達成できていた」「私は今回のチームの方針には最初から賛成していなかった。この方針をチームの他のメンバーが指示してしまったからチームが負けたのであって自分には責任はない」と、他人に責任を転嫁し、おっさんに対しても釈明をいとわない。 そういう中をおっさんは、その日の最低の成績の参加者に「くどい言い方はするな。チームで今日商品の売れ数がいちばん少なかったのはオマエだな?イエスか、ノーか」と責め立てる。 で、その人がクビになるかと思いきや、おっさんはいきなりチームリーダーに向き直り「チームリーダーとしてチーム内のレベルの低い部分をいちはやく察知して補佐できない責任は大きい。オマエがクビだ」と言ったりするわけだ。 参加者はチームとして2つに分けられ、分けられたチームの中では相手のチームに勝つために知恵を出し合って必要な協力をしながらも、本当の意味のチームメイトにはなり得ない関係だ。 最終的に自分が勝つために、その週、同じチームになった他の人間の能力を最大に活かすにはどうしたらいいかを考えるわけだが、それを考えてばかりいて、蓋を開ければ自分の成績が最低ということになると、他のチームのメンバーから葬り去られてしまうことになる。 男もきついが女もキツイっ! ここに出てくる参加者たちは、こうしてこういう目的のテレビとして見ているにはおもしろいが、自分の人生の周辺で友達としては絶対お付き合いしたくないタイプだ。 この番組を見ていて、参加者同士の協力と、背後での糸の引き合いや画策を見ていると、人生憂鬱になってくる気がした。 しかし、それを補って余りあるだけの「ビジネスとは何か」というおっさんの哲学の一部が見えるようで、しばらくの間この番組から目を放せそうにない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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