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カテゴリ:小説
あたしの名前は、相柳 萌菜果(そうりゅう もなか)。変わった名前だけど仕方ない。
「もなかー!」「街中で大声で呼ぶなー!」 こんな時、名前にあきらめがつかない。「ナニ、大声で呼ぶ理由は?」つい卑屈に小声で 言ってしまう。友達の加倉井 美星(かくらい みせい)は豪快に笑って背中をばしばし叩く。 「やーね。呼んでみただけ」くぉんのー。ヒトが気にしていることを・・・。 「あったし、なにせスターだからさ」へえへえ。確かにあんたの名前にゃ星の字が入ってい るよ。 アンタはにしきのあきらかっ。スターの一言の時、髪をふぁさっと振るの止めてくれないか な。 花形 満を思い出すよ。 「あたしらふつーのじょしこーせー、なんだからさ。」「花の女子高生、目立ってナンボ よ、もなか」「時代は女子中だよ」「ふーんだ。青ケツのがきんちょに負けてたまるか」 どーゆー性格よ、コイツ・・・。 「とりあえずさあ、なんの用?」ため息交じりに聞いてみる。 「合コンセットしたからさー、頭数にはいってよ。スターのお願い」 「あけすけだな。断る。あたしゃ、用があるんだ」「えー、なんの?」「鐘つき」 「・・・・ なんじゃそれ」 「うち、寺なの。じゃね。またガッコであいましょ、スター」 あたしは呆然とする美星を残してさっさと家路を急いだ。 家に帰ると、じいさまが出かける用意をしていた。「法事?」「うむ。酒井さんとこ、亡 くなられてな。行ってくるわ。鐘つき、頼むわ」「わかった」 あたしは丁度に戻れたので、すぐ鐘突きに入った。うーん、この澄んだ音はいいものだな。 鐘をつき終わって家へ入ると、人相の悪そうな男達が「お嬢、おけぇりなせりやし」と声を かけてくる。「うん、ただいま。今日の食事当番、だれ?」「お嬢と、平太です」 「あー、悪いけどさー、宿題ちょっとあるから、誰か代わってくれないかな」 「あ、じゃあ圭吾がひきうけやす」「ごめんね、たのむね」 そう言って2階の自室に戻る。今日の宿題はしんどいんだわー。 あたしが通っているのは、敬虔なカトリックの女子校である。寺の娘が教会の学校って、矛 盾してると思うけど、ある理由であたしは今の学校を選んだのであった。 それは、鐘の音。鐘フェチといわれてもいい。うちの寺の鐘も澄んだいい音を出すが、学校 の知らせを告げる鐘の音も澄んだいい音なのである。澄んだ鐘の音に包まれていると、なん だか昇天しそうなくらい幸せな気分になる。 「はあ、やるかあ」 あたしは宿題を出してはじめた。窓の外には氷菓子のようなお月さま が樹にかかっていた。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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