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カテゴリ:小説
いいといったくせに、いざ音を出したら「この罰当たり」とじいさまにスリッパで叩かれ
た。亡者が起きるって、あたしも言ったけど、実際起きたところで、あたしは視えやしない のだ。そういえば、土葬の墓もあったけど、あれは年代物だし、もう土に帰っていることだ ろうなあ。あとは、火葬だし。実際亡者が起きて踊っていたら笑ってやる。スリラーって。 まいったなあ、これじゃ、あたしも練習できない。どこかいい場所ないかな。 あたしはまねきさんにメールを打った。 【ノリとも話したんだけど、どこかスタジオ借りようかって言ってたんだ】 【スタジオ?皆からお金集めて借りるんですか?】 【そう。うちらの衣装も作らないといけないし】【衣装!?】 【ノリがデザインしてる。楽しみにしていて。明日、臨時に集合しよう。他の子に連絡、回 して】【わかりました】【じゃ、よろしく。お休み】【お休みなさい】 まねきさんに連絡したら、ほっとした。昨日の睡眠不足がくらりとくる。さよりと美幸に連 絡入れた。今日はもう寝ようっと。 朝、相撲部屋みたいに、早朝からご飯作りに厨房に入っていた。圭吾と代わったのだ。 「お嬢、いいんですかい?」「ヤスはほんとにその口調ぬけないねえ」 かぶの皮剥きをしていたヤスはへへへと照れて笑った。まだ若いのだ、なのにその言葉遣い。 「おれ、”極妻”が好きでもうのめりこんじゃって・・・岩下志摩さんや、高島礼子さん、 もうさいっこー!」「世界に浸るのはいいけど、手元きをつけてね」「あ、はいはい」 今日の朝食は、豆腐の味噌汁にかぶの浅漬け、ほうれん草の胡麻和え、雑穀ご飯、青汁。 ある材料でメニューを決めたらこうなった。あたしのお昼は学校の購買部で買おう。 人数がいるから、量をつくるのが大変なのだ。 更生者達は、迷っている。このまま寺に残って、仏門に入るか、それとも世俗へ戻るか。 更生施設はいっぱいで入れない。かといって、職もみつからない。普通のアパートにもはい れない。ないないづくしの彼らは明るく振る舞いながらも、悩んでいるのだ。 ヤスと2人で朝食の用意をしていく。食事の間にそれぞれの用意を置いて行く。 他のメンバーは、読經に掃除にと動いている。これが彼らが決めたルールだ。 じいさまが朝の鐘をつき、戻って来て皆で朝ご飯となった。 「じいさま、今日ちょっと帰り遅くなるかもしれない」「なんじゃ、あいびきか」 「肉じゃないんだからさ。クラブだよ。練習なの」「ふん。夕の鐘までは戻れるんじゃろ な」「んー、ちょっと、わかんない」「若い女子が男勝りに」「イマドキよ」 時計を見て「あ、遅刻しそう。じゃ、ごちそうさま。いってきます!」 そしてまた阿吽号をかっとばして学校へ向かった。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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