カテゴリ:商法過去問答案
【問題】 平成2年・第1問
合名会社と株式会社における社員の地位の違いは、投下資本の回収の方法にどのように反映しているか。 【答案】 平成2年・第1問 1 合名会社と株式会社における社員の地位の違い (1) 合名会社の社員は、会社債権者に対して直接無限責任を負い(80条)、会社の経営に関して重大な利害関係を有する。 そこで、合名会社の社員は業務執行権、代表権(70条、76条)をもつ。 したがって、合名会社においては社員の個性が重視される。 (2) これに対して株式会社の社員は、間接有限責任しか負わず(200条1項)、その地位は細分化された割合的単位の形をとる。 また、会社の経営は第三者に委ねられている(254条2項)。 したがって、株式会社においては社員の個性が重視されていないといえる。 2 投下資本の回収方法 (1)合名会社の場合 ア 持分譲渡による方法 合名会社の社員は個性が重視されるので、社員の交替は会社経営に重大な影響を与える。 (よって) 容易にその地位の譲渡を認めるわけにはいかない。 (そこで) 持分の譲渡には他の社員の承諾が必要とされ(73条)、持分譲渡の方法による投下資本回収はきわめて制限されている。 イ 持分払戻による方法 (よって) 合名会社の社員には持分払戻を認める必要性が大きい。 (一方で) 合名会社の社員は直接無限責任を負うので、会社財産確保の要請は強くない。 (そこで) 持分の払戻は比較的自由に認められている(84条、85条)。 (2)株式会社の場合 ア 持分払戻による方法 (一方) 株式会社の社員は間接有限責任しか負わないので、会社債権者の担保となるのは会社財産だけであり、資本維持が要請される。 (従って) 持分の払戻は認められないのが原則となっている。 イ 持分譲渡による方法 (よって) 株式会社の社員には持分の譲渡を認める必要性が大きい。 (一方で) 株式会社の社員は個性が重視されず、社員の交替による会社経営への影響は少ない。 (従って) 持分譲渡は原則として自由とされている(204条1項本文)。 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 30, 2004 07:33:24 AM
コメント(0) | コメントを書く |
|