カテゴリ:商法過去問答案
【問題】 平成4年・第1問
株式会社が株主以外の者に対して新株を発行する場合、商法上どのような問題があるか。 【答案】 平成4年・第1問 1 株式会社は定款により、あるいは、取締役会決議により、株主以外の者に対して、新株を発行することができる(280条ノ2第1項) (しかし) かかる場合、旧株主の利益が害される虞があるので、旧株主の利益を以下に図るかが問題となる。 2(1)(ここで)旧株主の利益=a持株比率の維持の利益、b株価の下落により経済的損失を蒙らないという利益 (2)(まず) 持株比率維持の利益を守るため、旧株主に新株引受権を与えることが直接的 (しかし) 現行法上=>原則、旧株主に新株引受権を与える必要なし(280条ノ2第1項5号) (これは) 株式会社は大規模会社が予定されている。 →株主は個性喪失、会社経営の意思も能力も有しないのが通常 →持株比率維持の利益はそれほど重要ではないと考えたから (ただ) 株式の譲渡制限がなされている会社は、通常小規模 →株主の個性が会社経営に影響を及ぼす →このような会社では持株比率維持の利益は重要 (そこで) 譲渡制限ある会社では旧株主に新株引受権を与えなければならない(280条ノ5ノ2) (3)(次に) 株価の下落により経済的損失を蒙らない利益を守る方法としては、a株主に新株引受権を与えることやb新株を時価で発行することが考えられる (この点) 新株の時価発行は義務付けられていないが、「株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ」新株を発行する場合には、取締役が株主総会でその理由を開示した上で、その特別決議を経る必要があるとしている(280条ノ2第2項) (そこで) 「特ニ有利ナル」とはいかなる場合かが問題となる。 (この点) 旧株主の利益を重視すれば、時価以下の発行ということになる。 (しかし) 円滑な資金調達という新株発行の目的も無視できない (そこで) 「特ニ有利ナル発行価額」とは通常新株を発行する際の公正な発行価額と比較して特に低い価額であり、公正な発行価額とは株式の時価を基本として決定すべきである。 3(1)以上のような旧株主の利益が害された場合、株主の救済手段としてはいかなるものがあるか (2)(この点)a取締役と通じて著しく不公正な価格で株式を引受けた者の責任(280条ノ11) b新株発行差止請求(280条ノ10) c新株発行無効の訴え(280条ノ15以下) がある (3)新株発行無効の訴えに関しては、有利発行につき株主総会の特別決議がなされなかった場合、それは無効事由にあたるかが問題となる。 (この点) 旧株主の利益を考慮すれば、無効事由にあたるとすべきとも考えられるが、特別決議の有無は会社内部の問題であり、外部からは必ずしも明らかとはいえないので株式流通の見地から、無効事由に当たらないと考えるべきである 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 30, 2004 07:31:21 AM
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