カテゴリ:商法過去問答案
【問題】 平成10年・第1問
甲および乙の2つの事業部門を有するA株式会社が甲事業部門を別会社として分離独立させるため、商法上採り得る方法とそれぞれの方法の特色について述べよ。 【答案】 1 A会社が事業部門の一つを独立させ別会社にしようとすることは、一つの会社を法律上独立した二つの会社に分けようとするものであり、会社の分割である。 以下、明文上の会社分割と事実上の会社分割とに分けた上で、その場合の特色を述べる。 2 明文上の会社分割について (1) 明文上の会社分割 a事業の一部を分離して新しく会社を設立する方法(新設分割)←本問はこちら b分離された事業部門を既存の会社が承継する方法(吸収分割) (2) 新設分割における要件、手続 a「営業ノ全部又ハ一部」の移転(373条) b分割計画書につき株主総会の特別決議(374条第1項、5項) ∵会社経営に重要な影響ある。株主保護の必要 c会社債権者保護手続(374条ノ4、374条ノ20) ∵債権者にも影響ある (3) 「営業ノ全部又ハ一部」の移転の要件満たすか (ここで) 「営業」の移転=一定の営業目的のため組織化され有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を移転し、これによって分割会社がその財産によって営んでいた営業活動の全部又は一部を新設会社に受け継がせたものを言う。 (なぜなら)競業避止義務については分割計画書に委ねる趣旨と解されているから (この点) 本問事業部門は有機的一体として機能する財産であり、これを新会社に移転し、営業活動を引き継がせようとしている→要件満たす 3 事実上の会社分割について (1) 甲事業部門を現物出資して新会社を設立する方法 ア 新会社側の手続 a定款に記載(168条第1項5号)、b原則検査役の検査必要(173条第1項、181条第1項) ∵目的物の過大評価により会社債権者を害する危険(会社財産が唯一の引当) ∵金銭出資をした他の株主との不公平のおそれ イ A株式会社側の手続 移転によってA株式会社が競業避止義務を負う場合→特別決議必要(245条第1項) それ以外 →特別決議不要。取締役会決議は必要(260条第2項1号) ∵営業譲渡=一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡し、これによって譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うもの (2) 金銭出資により新会社設立後、新会社に甲事業部門を現物出資する方法 ア 新会社側の手続・・・原則検査役の検査必要(280条ノ8) ∵(1)と同様 イ A株式会社側の手続・・・(1)と同じ (3) 新会社設立の際に財産引受の形でA株式会社より営業譲渡を受ける方法 ア 新会社側の手続・・・a定款に記載(168条第1項6号)、b原則検査役の検査必要(173条第1項、181条第1項) ∵現物出資の潜脱防止 イ A株式会社側の手続・・・(1)と同じ (4) 新会社設立後にA株式会社から新会社に事後設立の形で営業譲渡を受ける方法 ア 新会社側の手続・・・a特別決議(246条第1項、245条第1項)、b原則検査役の検査必要(246条第2項、第3項) ∵現物出資、財産引受の潜脱防止 イ A株式会社側の手続・・・(1)と同じ 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 24, 2004 12:11:20 AM
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