ロマンチック 旅

2008/10/08(水)06:54

肥後熊本の通潤橋は・・・豊饒を約束してくれます。

旅は楽しく朗らか紀行(113)

  九州を旅すると、やたら棚田や段々畑が目に飛び込んで来ます。傾斜地に城壁のような本格的な石組みを施し平坦にした、この歳月を掛けた田畑造りは片手間で無いことが分かります。 九州は台地や丘陵が多い地形からか、長崎・熊本・宮崎・鹿児島各県はひときは石橋が多い地域で、生きて行く知恵が生かされているようです。こんな地域環境ですから、後年、日本橋・皇居二重橋などを造った石橋造り軍団(種山石工)が熊本県東陽町(現八代市)に存在していました。そんなことで今回は生活道や田畑灌漑などに貢献した、日本のアーチ式石橋の旅になります。 熊本県五老ヶ瀬川に架かるアーチ式石橋の通潤橋 150年程前に工期1年8ヶ月で完成。 長さ75.6m、幅6.3m、高さ20.2m、アーチ径27.9m、放水は圧巻です。   熊本市から東へ車で約1時間、南阿蘇の矢部町(現山都町)に水路橋の通潤橋があります。 台地の白糸地区へサイフォン原理で水路を造り、田畑用水や飲み水解消を目的とした橋です。 橋下への壮観な放水、道水管の土砂詰り防止から年1回行っていましたが、現在は観光を目的に土日祝日の正午1回行われ、事前予約すれば5千円で臨時に見せてくれる配慮もあります。   水路橋だけに通潤橋の上には手摺りが無く、25m程の下を覗くと身震い恐怖、三列の石橋パイプが埋められた中央を歩くように心掛けなければ危険です。水抜き穴を塞ぐ木栓は布を巻いただけの至って簡単仕様、老作業員はバールとハンマーで栓の抜き差しを巧みに行っていました。   尊王か佐幕かで揺れる江戸時代末期、地区の惣庄屋の構想と依頼、種山石工集団の宇市や丈八(後の橋本甚五郎)兄弟達の技術、そして住民の献金や労働奉仕などで、困難を乗り越え橋を完成させています。この実績で橋本甚五郎は明治政府大蔵省土木寮御雇(明治6年)に任用、日本橋・皇居二重橋・浅草橋・神田橋などの造営を手掛け歴史に名を刻んでいます。石橋の鑑賞ポイントはアーチ、壁の石組み、欄干の3点になり、石工の個性を峻別して見たいですね。   砥用町(現美里町)の一級河川緑川に架かる日本最大の単一アーチ石橋『霊台橋』、通潤橋より7年も早く完成しています。渡川目的の全長90mのこの橋も、種山石工集団の卯助や丈八達兄弟が手掛け、大掛かりな橋造営に試行錯誤を繰り返し、工期7ヶ月(一説では10ヶ月)で完成させたといわれています。昭和41年まで大型車両も通行していた精緻な橋で、欄干から川下を覘くと澄んだ水が豊かに流れ、春は両岸に桜が咲き渡したロープに鯉登りが何十と泳ぎます。   橋下にはとうとうと水が流れる『下鶴橋』、酒好きな石工の弥熊が架けたもので、遊び心からか欄干には徳利と杯が造られています。この上益城地域一帯に石橋が多いのは、谷や台地が多く木橋では流され易く、阿蘇山の加工しやすい熔結凝灰岩があり、そして石工集団の存在と言われています。歴史とか文化は、このような環境があってこそ生まれて来るものと実感します。   地域一帯で幾多の石橋造りを行った種山石工集団、度々、卯助・宇市・丈八(橋本甚五郎)・甚平兄弟の活躍を紹介していますが、それには祖父藤原林七の英知と努力が隠されていました。 林七は異国窓口の長崎奉行所勤務、市内名所の眼鏡橋(日本最古のアーチ式石橋、興福寺二代目住持 唐僧の黙子如定の技術指導)に興味を持ち、出島滞在のオランダ人に教えを請いました。円周率など計算方法も学びましたが、鎖国時代は外国人との交流はご法度、危険を感じ肥後藩に移り種山地区に逃れ、その時に石工宇市と出合い、石工に身分を変え、城の石垣技術なども取り入れ学び磨き、名声が響くようになったのは丈八など孫達の代になってからになります。 それにしても実技無しで、良く技術習得が出来たものと先達の偉業に感嘆するばかりです。 と同時に、志というものは一朝一夕には成就しない見本みたいなものを見せられた感じです。   肥後の石橋群は、2000年前に造られたスペイン(セゴビア)のローマ水道橋には敵いませんが、京都の赤レンガ造りアーチ型水路橋(水路閣)には引けを取りません。水路の街オランダアムステルダムだって、こんな立派な石橋は見当たりませんでしたから、今日では役目を終えた石橋が肥後各地に沢山残っているようですから、実績は後世に大切に残して置きたいものですね。 こんな先人達の浄財・工夫・熱意を参考に、今日の食料自給率向上に結び付けたいものです。 九州のさとるさ~ん元気ですか! 収穫は天からの恵み物です・・・今年も大豊作でしたか! 次回は宮崎駿監督のアニメ『ポニョ』が大ブレーク、三鷹の森ジブリ美術館を予定しています。

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