現代美術作家　玉本奈々

3/9（土）に玉本奈々さんの個展オープニングイベントでは下記のようなお話から入ってゆきました。
会場で配布している拙稿「月と星にみちびかれて」より、シリーズ《LUNA》の世界観を表した作品「新月」にまつわる前半部を紹介します。
文中言及のタロットの画像とイェイツ自筆のノート（アイルランド国立図書館蔵）もあわせて。
-------------------
　冥王星が水瓶座に入った2023年3月21日春分に、玉本さんから「新月」を作っているとのメッセージがあった。その後ほどなくして制作途中の作品画像が届いたのだが、F3の小ぶりなパネルを四枚組にしたそれは、四枚に跨って十二の円相が環になっていた（数を意識して描いたわけではない）。四隅には星座が配されている。左上が乙女座、左下が射手座、右下が魚座、右上が双子座。対話を通して、それらが作家と家族の誕生日の太陽や惑星の位置する星座であることが浮かび上がってきた。四隅には、西洋において万物を構成する四元素を象徴する星座が配されている。乙女座は〈土〉、射手座は〈火〉、魚座は〈水〉、双子座は〈風〉と。〈十二〉は12星座、12ヶ月、12色相環、十二支などに照応するではないか。このとき私は雷に打たれるように、ある図像を思い出したのだ。
　それはアイルランド独立の功労者である詩人W・B・イェイツが高位会員だったことでも知られる、魔術結社「黄金の夜明け団」タロット21番〈THE UNIVERS〉の図像である。イェイツが「黄金の夜明け団」の秘儀的な瞑想に使ったこのカードには十二の色相が円で描かれ、四隅には四つの元素を象徴する牛〈土〉、ライオン〈火〉、天使〈水〉、鳥〈風〉が配されている。21番はタロットの世界観、宇宙の秩序そのものを表した特別なカード。玉本さんの直観がタロットと符合したことをもって、シリーズ《LUNA》の世界観がこの第一作「新月」によって方向づけられることを確信したのだ。
　その旨を玉本さんにお知らせすべくカードをスマートフォンで撮影し、画像を送信したところ、まばゆい光に包まれた心地がしたのだった。シリーズ《二十四節気》から引き続き、天体の循環と心身の周期との一致にまつわるテーマとして、毎日その姿を変える月の相貌が選ばれた。
（以下、略）
----------------------
※ほとんど機密文書みたいなテキストなので本来はギャラリーまでお運びの上でお読みいただきたいものですが、ひとまずタグ付した「友達の友達」までの範囲でシェアします。
※配布テキストを書いたときには気づいておらずトークでも言及し忘れていましたが、四つのパネルの継ぎ目の境界線は右が春分、上が夏至、左が秋分、下が冬至、との解釈ができます。
また、黄道12星座に太陽が入る最初の日は、牡羊座初日が春分、牡牛座初日が穀雨、双子座初日が小満、というように二十四節季とひとつ飛びで一致します。



【玉本語録】
「シナベニヤのパネルを眺めているだけで、ストーリーがみえてくる。それにしたがって描くだけ。昔は半強制的に超越者によって創らされている感覚であったが、いまはもっと自由。厳しく創らされている感覚ではなく「宙に浮く」感覚。」

「作品が完成する瞬間は、わかる。鐘の音が鳴って、顔が紅潮する。「鐘が鳴る」。鈴みたいな音のときもある。」
（教会の鐘やお寺の鐘みたいな音とか、神楽鈴みたいな音とか、だそうです）

----------------------
『玉本奈々展-LUNA-』
会期:3月9日(土)〜24(日)
時間:13:00〜18:00/水曜日休廊

Gallery Land's End 
兵庫県姫路市南八代町17-4-104

＃玉本奈々 #nanatamamoto #京谷裕彰 #LUNA #ランズエンド