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テーマ:映画館で観た映画(8353)
カテゴリ:映画・TV鑑賞記
「宇宙戦艦ヤマト2199」最終章の劇場公開最終日・最終上映を観てきた。 今回は通常より少し早めの20時スタート、それも予告編・CMをいっさいやらずに(さすがに映画泥棒さんは出てきたが)いきなり本編上映だ。それというのも、本編終了後にスタッフ・関係者が登壇してお喋りするイベント「ヤマトーク」に目一杯時間を取るためだ。通常1時間弱のところを概ね1時間半! まるで居酒屋にいるようなファントークや裏話がとめどもなく続き、誰もが終電を気にしてそわそわする頃になって無理矢理打ち切る。朝まで聞いていたかったなあ..と後ろ髪を引かれつつ、全員出口に殺到。駅に急ぐ。 いい歳をして、みんなで学生時代のようなやんちゃタイムを楽しんだわけだが、どれもこれも全てがあの「ヤマト」らしいひとときだった。 「ヤマト」といえば熱狂・徹夜がつきものだった。それに、かつての「ヤマトブーム」は"若者が徹夜で映画館に並んで漫画映画を観る"ということで当時の世間を驚愕させたわけだから、最後の劇場上映で"若く無くなっちゃった僕らが終電に急ぐ"というのは、楽しいオチだ。 終わっちゃったんだなあ.... (いや、最終章部分のTV放映は明日からだけど。) この1年半、とっても幸せだった。中学時代に舞い戻ったように、次の「ヤマト」を待ち焦がれ、友達と語らい、あれこれ予想し、パンフレットに見入り、たまに落書きしてみたり。かつての「ヤマト」の堕落(断言)と共に国産アニメへの興味を一気に失い、以降(仕事絡みと「復活編」を除けば)今まで「宮崎アニメ」以外全く観ないで過ごして来たので、本当にタイムスリップした感覚だった。 何しろ最高の人材(の多く)が制作に関わったのだから、それは素晴らしいに決まっている。まだヤマトブームが巻き起こる前からスタジオに出入りしていたファンクラブの走りみたいな出渕総監督や、父親が作ったヤマト音楽に魅了されて今の仕事を志したという宮川彬良氏が象徴的だが、とにかく"あの時"「ヤマト」に出逢って人生が決まっちゃった人達が集結して、リミッターをはずして"ファースト・ヤマト"をリビルドしたのだ。押さえるべきところは押さえ、要所は強化し、なぞるのではなく敢えて別の軌道を通ることで、オリジナルが伝えようとしていたメッセージがよりクリアになって、まさに"ファースト・ヤマト"が蘇った。 しかも、まるで「ヤマト」が切り開いたアニメブームの歴史をなぞる、あるいはタイムカプセルに詰めこむかのように、周辺のさまざまな作品のキーワードがあちこちに見え隠れしていた。「うる星やつら」やら「ガンダム」やら「ウルトラシリーズ」や、松本零士の別作品、さらにソノシートのネタ(幼き頃の駄菓子屋さん!)まで! そんなことが許されるのは「ヤマト」だけだと、個人的には強く思う。一般名称を「TV漫画」から「アニメ」に変えさせた、アニメブームの事実上の元祖(一部異論もあるだろうけど)である「ヤマト」だからこそできることだ。「ヤマト」が蘇っただけでなく、まるで70~80年代サブカルチャーそのものがリビルドされて蘇ったようだった。 それにデジタルでCGを使用しているのに、絵にぬくもりがあって画面が温かい。 キャラクターの動きに意思が感じられ、メカの動きも一回見ただけでは気づかない細かな部分まで手が入っている。(ブルーレイでコマ送りして見て欲しいそうだ。もっとも画面に見えない裏側の背景まで描きこんでいるらしいけど..) さすがにTV放映が始まってからの21話以降は時間が足りなかったのか、絵も動きも粗くなってしまったエピソードも少々あったが、全体にびっくりするほど丁寧で、細かく気配りされた画面づくりだった。オリジナルよりも遙かに綺麗で、人物の動きもきめ細かくて(きちんと演技して!)今風の絵柄に変わっているけれど一線を守っている。時々、オリジナルの白土さんバージョンあるいは芦田さんバージョンとしか思えないタッチが由来のあるエピソードでさりげなく挟まれているのも楽しい。 新しいけど、ところどころ懐かしい。 まず見せたいビジュアルがあって、見る側が快く"騙されるように"必要なところは作劇上の理論武装を施すが、理屈をこねてつまらなくなるくらいだったら理屈を無視する。その匙加減がとても巧かった。 音楽も素晴らしかった。オリジナルをそのまま使うといっても、そのままでは新しい絵柄に合わないし、譜面も残っていない。宮川氏は耳コピーで片っ端から譜面を起こし直し、絵柄に合うようにアレンジし(現在可能な楽器編成に変える苦労もあったとか)、しかも新曲をいくつも投入した。「ヤマト渦中へ」や最終章で印象的に使われる曲(たぶん次のCDの「虚空の邂逅」あたりがそれ?)などはあまりに良すぎて、一度聞くと頭の中を無限ループしてしまう。まるで昔から「ヤマト」に存在したかのようにしっくりしていて、しかも他には置き換えられない、そのシーンにはその曲じゃないと絶対に合わない!..そんな曲ばかりだった。 とにかく、すべてが素晴らしかった。"ファースト・ヤマト"には僕も深い思い入れがあるが、変な歌じゃない方のOPの映像1カ所を除いて全く文句なし、むしろ予想を遙かに超えた最高の「ヤマト」を見せてもらって、まさに"感謝の極み"。 いやいや、ネタで書くと不遜なので、ちゃんと書きたい。最高のファースト・ヤマトを見せてくれて、ありがとう!! ところで、出渕総監督が掲げていた(雑誌などで語っていた)キーワードは「責任を果たす」だった。 「必ず地球に帰ってくると約束して、本当に帰ってくる話ですからね。困難にぶつかったとき、諦めずに頑張る象徴がヤマトなんです。」 絶対に無理だと思っても、まず一歩踏み出してみよう。諦めずに進んだ先には必ず何かがある。実際の日常で"壁"に出くわしたら、思い出せ。 ひ弱な自分探しの物語ではなく、暗い世の中に唾を吐く物語でも滅びの美学でもなく、真正面から皆で頑張って未来を勝ち取るポジティブな集団ドラマ。 かつて自分達を今の人生に導いた作品を、その人生で培ったクリエイティヴィティーとエネルギーで蘇らせる。「時代が違うし、コアなファンがうるさいから、どうせコケるんじゃないの?」と誰もが判ったように言ったであろう、"火中の栗を拾って"結果を出す。今のアニメ界の主流とは真逆のような「ヤマト」を敢えてぶつけて、今の世にこそ必要な「ヤマト」の強いメッセージを伝える。かつて自分達が受け取ったものをきちんと次の世代に伝える。それが彼らの言う「責任を果たす」ということだろうと思う。 「世の中に責任を取らない大人が溢れてしまいました。若い人達に、責任を果たす大人もいるのだということを伝えたかった。」 そして、彼らは責任を果たした。途中で打ち切られることもなく、観客動員やDVDの売上げは右肩上がりで伸び続け、若いファン層も多少なりとも?獲得した。 清々しいというか、頼もしいというか、この1年半というもの、「ヤマト2199」を観るたびに『自分ももっと頑張らなくちゃな』という思いにかられた。彼らと同世代で、全く同じ時期に「ヤマト」に感化されて今の道に進んだ自分も、この道でやるべきことをしっかりやっておかないと、あっという間に歳を取って後悔しそうだ。 それにしても(繰り返しになってしまうけれど)、これで終わっちゃったんだなあ... 少なくとも、劇場のスクリーンでヤマトを観るのは昨日が最後。やっぱりちょっと寂しい。 「さらば..」以降の「ヤマト」は蛇足以外の何者でもないと思うし、今回の終わらせ方は全力で"続編封じ"しているようなので、ここで幕を閉じるのが正しいと解っているけれど、..それでもちょっと続きを観たくなってしまった。 あのスタッフが創るのであれば、きっと「ヤマト」は二度と"ご都合主義でなんでもサブキャラの特攻で解決する、愛愛(あいあい)お猿さんドラマ"にはなるまい。
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本当に見事過ぎるリビルドでしたね!
近年、「石原ヤマト」とか、「キムタク・ヤマト」とかで期待裏切られぱなしでしたからねぇ、今回も「またか!?」って感じでしたが、その不安を見事に振り払ってくれました。 オールドファンの一人として「よくぞここまで…!」と最高の賞賛と感謝の言葉を贈りだいです。 この成功を汚さない為に続編は創って欲しくない気もしますが、その片方では彗星帝国編あたりをより平和的な方向でリビルドしたものを観たい気もします。 いずれにせよ今回もし興行的にも成功したとすれば、嫌でも「これで終わり」という事はなさそうな気がしますが…!? (2013/09/07 11:21:11 PM)
ENGEGE!さん
「さらば宇宙戦艦ヤマト」の原案は、復興を果たした地球がやがてかつてのガミラス帝国のように他星を侵略して版図を広げようとするのを、ヤマトが身体を張って止めようとする物語だったと聞いています。 そういう方向であれば、今回のラストからも繋がりそうですが、それは辛くて見たくないな...と思います。 (2013/09/08 12:39:10 AM)
ネットでの書き込み等自粛中ですが、もう少しだけ。
最初にヤマト2199のキャラクターデザインを見た時は、「これは違う!ヤマトじゃない!今度もきっと残念な事になるのだろうな…。」と思っていました。 制作者の皆さんに全力で謝ります。そして感謝します。 幸せな日々でした。 嫁は未だに「このキャラデザはヤマトじゃ無い!」と言いはってますが。(>_<) 「ヤマトーク」行きたかった… (2013/09/08 12:42:50 AM)
assyさん
>嫁は未だに「このキャラデザはヤマトじゃ無い!」と言いはってますが。(>_<) やっぱりね(笑) 僕らはコンセプトから入るけれど、キャラ(あるいは俳優)から入る人は意見を変えようがないかも。 どんなに傑作でも俳優が嫌いだから駄作とか、どんなに変な脚本でも俳優が好きだから傑作とか、(前にも書いたけど)どうにも歩み寄りの余地がない..(^^;) >「ヤマトーク」行きたかった… またやりそうですよ。(^^) 映画上映は終わったけれど、ヤマトークだけ続けようという話になっていました。そもそも劇場でやるのは限界なんだそうです。(劇場にすれば、1時間半もあったら普通は映画をもう一回流せるので。) 初めて知った事実がありました。 総監督の1歳年上だったかな..、ファン活動時の仲間に山本(旧作)が大好きという女性がいたんだそうです。70年代のあの時期にブラックタイガー隊のコスプレをして、名前を「山本玲」と名乗っていて、後に亡くなってしまったんですね。 今回の2199で山本を"女性"に設定変更することが決まっていたので、そこに彼女の名前を(読みも含めて)そのまま付けたそうです。 (2013/09/08 11:35:13 AM) |
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