晝行燈のゲーム万歳！

水の滴る音。湿った空気。どこか遠くで重い物を引きずるような音が聞こえる。
あたりは魔法生物であるゴーレムが闊歩し、人間の気配は殆ど無い。
ここはビスク地下に広がる遺棄された下水路だ。

いつものように仕事トレハンに勤しむ。
今日はビスク地下水路の１５２番地図を手に入れたので、お宝をいただきに来たのだ。

宝を守るガーディアン達はどれもこれも強力だ。
しかし、こちらも熟練とまでは言わないものの手慣れた冒険者である。
今回のようなゴーレム相手に遅れをとることはない。
この小部屋自体にもトラップが存在するという話は聞かない。
つまり美味い仕事というわけだ。


どうやら、今回の仕事も成功だ。
紙巻きタバコに火をつけ、紫煙をくゆらせる。
内心の安堵は出来るだけ表に出さないよう務めるが、この瞬間だけはつい頬が緩む。

さてと・・・ふと顔をあげると入り口に別の冒険者がいた。
この小部屋にやってくる冒険者はあまり多くはない。
同業者だろうか。顔に覚えはないが。
戦闘中は居なかったと思うがいつから見ていたのだろうか。

そこに立っていたのはニューターの男性だった。
まだ若いか、とエリブは装備を一瞥する。
（といっても見た目と中身が一致することは冒険者では珍しいが。）
身なりは小奇麗で、モール（モグラ型のモンスター）の被っている帽子を参考に
制作されたヘルメットを装備している。装いは軽装備であるが盾を背負い、
片手剣を携えている。

観察しながらも、こちらに敵意がないことは伝えておくことは忘れない。
朗らかな挨拶、交渉の基本技術である。

「お邪魔して申し訳ない」
彼は心底申しなさそうな顔をしながら切り出した。
「ウィンドという人物を探しているのですが、ご存知ありませんか？」

つづく？