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カテゴリ:歯とアゴと顔の人類学
ミトコンドリア・イブと呼ばれている女性がいる。20万年前、アフリカにいたらしい。この女性は現代のすべての人間の祖先だとされている。大祖母なのであ る。今、地球上に60億を越える人間が生きている。そのなかには、1億の日本人がいる。37億のアジアの民がいる。アフリカには8億、ヨーロッパは7億、 北米5億、南米3億、そしてオセアニアには3千万人の人々がいる。これら全ての人間はただ一人の大祖母・ミトコンドリア・イブの子孫だということらしい。 60億の人間は皮膚の色からして違う。北方系は概して白く、南方系は黒い。その中間に黄色い人種がいる。とても親戚とは思えない容貌をしている。それが、 すべてただ一人の大祖母・ミトコンドリア・イブから生まれたというのである。まさに人類皆兄弟ということなのである。この仮説は、1987 年アメリカのアラン・ウィルソンを中心とする科学者がミトコンドリアに含まれるDNAを検討した結果、人類はアフリカで生まれ、各地に広がっていったと解 釈できた。その上、現代人のご先祖はたった一人の女性で、他の系統は消えてしまったと結論づけたのである。この大先祖こそ、ミトコンドリア・イブと呼ばれ ている女性なのだ。ミトコンドリアのDNAは16500対あまりの塩基配列で構成されている。ミトコンドリアは人体のすべての細胞に含まれる細胞内器官で あり、生体内のエネルギーを作り出している。このミトコンドリアが持っているDNAは母親からのみ受け継がれ、父親のミトコンドリアDNAが子に伝わるこ とはない。こういうミトコンドリアDNAの特性に注目し、先のアランらはミトコンドリアDNAの突然変異の確立を100万年に2%と推定し、世界各地の 147人を無作為に抽出し、系統樹を作成した。その結果、147人のミトコンドリアのうち、133の異なるDNA配列が見つかり、7例のアフリカ住民の型 とその他の各地の型に大きく二つに分かれ、アフリカ系は他のものに比べて、それぞれのグループ内の突然変異率が2倍であった。つまりアフリカ型が年代的に ずっと遡ることが明らかとなり、人類はアフリカで生まれ、各地に広がっていったと結論づけられたのである。にわかには信用できない結論ではあるが、現代の 白人のミトコンドリアには必ず、黒人のミトコンドリアDNAが含まれているにも拘わらず、黒人には白人のものが含まれていないという事実からも、この結論 は妥当なものとして、受け入れられている。やはり、人類は皆兄弟なのだ。そしてこのイブのミトコンドリアDNAは7人の娘たちに受け継がれ、その娘たちが 現代人のそれぞれの先祖になっていったということだ。(ブライアン・サイクス「イブの7人の娘たち」ソニーマガジンズ、webpage;http: //homepage2.nifty.com/joumon-hakodate-ky/mitoibu.htmより)
>> >>>>>>>>>>>>>>ラッキー・マザー説< <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<< ミトコンドリア・イブとは、人類の進化に関する学説のひとつで、人類のルーツがアフリカの一人の女性に集約する、という説。アフリカ単一起源説を支持する有力な証拠の一つである。 人 体の細胞の内部のミトコンドリアが、母からしか伝わらない(ミトコンドリアは卵の細胞質から受け継がれる)という性質に基づいて、ミトコンドリアDNAの 変化を追跡した結果、すべての人が持つミトコンドリアDNAはアフリカのある一人の女性に由来する(彼女自身もミトコンドリア・イブと呼ばれている)、と いう結果が出た。 しかし、この結果が「人類はイブ独りから始まった」という事実を示すものではないことが既に広く受け入れられている。そ れを説明するのがラッキー・マザー説である。ミトコンドリアは母からしか伝わらないため、男性は自分のミトコンドリアDNAを後世に残すことができない。 また、女性は自分が産んだすべての子にミトコンドリアDNAを伝えるが、その子らがすべて男性だった場合、彼女のミトコンドリアDNAは廃れることにな る。もし子に女性がいても、娘が産んだ孫に女性がいなければ、やはり母のミトコンドリアDNAは廃れる。つまりある個人のミトコンドリアDNAが子孫に伝 わるためには、その間のすべての世代に少なくとも1人は女性が産まれなければならない。 ここで人類発祥後まもない頃の集団を考えよう。そ の構成員は複数の家系に属する、したがってミトコンドリアDNAの系統も複数存在すると仮定する。集団の人数は少ないので、どの系統のミトコンドリアが多 数を占めるかは、遺伝的浮動により変動しうる。ここで偶然、ある家系の子孫が男性だけになったとすると、その家系のミトコンドリアDNAはやがて廃れる。 人数が少ない家系ほどそれが起こりやすい。これを繰り返すと、すべての家系が十分に人数を増やし、少なくとも1人の女子を得ることがほぼ確実になるより先 に、もっとも人数の多かった家系以外のすべての家系が「男子のみの世代」を経ることがありうる。すると上のような結果が説明できる。 この ような変化が実際に起こったならば、確かにイブは「すべての人の祖先」だが、ほかの家系とも十分に混血が進んだはずなので、「すべての人の祖先」はほかに もいる可能性が大きい。ラッキー・マザー(lucky mother)とは、その子孫に女子が産まれつづけたという偶然によって、全人類に自分のミトコンドリアDNAを残したということから名づけられた、ミト コンドリア・イブの別名である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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