カテゴリ:音楽
昔、もう10年以上前、フジテレビの深夜に、
葬送行進曲という番組が放映されていた。 著名人に自分の死を演出させるという趣向のものだった。 「自分の葬儀に、どんな葬送行進曲を流しますか?」 勝新太郎、戸川純、立川談志……。 映像・選曲・人選ともにすばらしく、 弟と私は毎週心待ちにして、それをビデオに納めていた。 なかでも、何度もビデオを見返した回があった。 女優の斉藤由貴さんの回。 横浜の川を船で行く風景から始まり、 動物園、古本屋、最期はどうやって亡くなったのか、 今ではよく思い出せないが、 20代の少し情緒不安定気味な彼女の世界をつづった30分弱。 そこに流れていたのが "エイプリル・フール"という曲だった。 静かで甘く憂鬱な旋律。 心地よくも泣きたくなるような男性の歌声。 まるで春霞のような歌だった。 私たちはどうしてもその歌を手に入れたくなった。 きっと有名な、外国の昔の歌なのだろうと思い、 昔のヒットソングが収まったCD集などを見たり、 音楽に詳しそうな友人にたずねてたり。 聴きたくなると、ビデオを見た。 何度も見すぎて、そのうち ビデオはガサガサに擦り切れてしまった。 でも、見つからなかった。 ネットも使われていないような時代、 制作会社に電話する知恵も働かない子どもだった。 それから何年もたって、私たちは インターネットという道具を手に入れた。 エイプリル フール/エイプリール フール/April Fool…… たまに思い出すと、検索をした。 なのにやっぱり出てこなかった。 一度だけ、ファミレスで食事をしていたとき、 エイプリル・フールを聴いた。 インストロメンタルだったが、 間違いなく、あのメロディだった。 有名な外国の昔の歌。 あの歌は誰が歌っていたんだろう……。 ずいぶん時間がたって、 パソコンが私の中で日常必須の道具になったころ、 ふと、斉藤由貴のアルバムを検索してみた。 すると彼女の新しいアルバムのなかにあったのだ。 「The April Fools」 なんだ、複数形!!?? 四月馬鹿=an April Fool/April Fools’Day 辞書を引けよ、っていう話なんだが、 sをつけるかつけないかで、まったくひっかからなかったのだ。 この曲は映画「幸せはパリで」(原題が「The April Fools」) この中で使われたバート・バカラックの曲だった。 きっと映画好きには常識のような歌なのだろうな。 バート・バカラックの曲は名曲だらけで、 有名なところでは カーペンターズのクロース・トゥ・ユー。 エイプリル フールの旋律を思い出せば…ああ、納得。 ただ、そこまでわかったものの、 あのときあの番組で聴いた「あの歌」がわからない。 執着心が一気に増し、検索に次ぐ検索。 そしたら、誰かのレビューでヒットした。 外国の歌手だとばかり思っていたあの人は ……なんと高橋幸宏氏。 ああああ、この声この声……またまた納得。 なーんだってな感じだったが、 10年かけて、とても会いたかった懐かしい人に 近所で出会ったような不思議な心地がした。 colors ~ best of yt cover tracks vol.2 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.04.02 17:40:45
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