|
テーマ:最近観た舞台(124)
カテゴリ:舞台・音楽・芸能パーフォマンス等々論
2022/3/27 「コーヒーと恋愛」文学座3月アトリエの会、文学座アトリエ、原作:獅子文六、脚本・演出:五戸真理枝
吉野実紗(坂井モエ子)、原康義(菅寛一)、采澤靖起(塔乃本勉:モエ子の夫)、 大原康裕、藤川三郎、沢田冬樹、西岡野人、山森大輔、本山可久子、牧紅葉 図1 チラシと半券から構成した本講演のイメージ チラシに獅子文六をご存じですか?とあり、ギクリとした。そういえば、何十年もこの名前を聞いたことがなかったような気がする。宿主が中学生から高校生だった頃、1960年代前半、獅子文六の小説だかエッセイだか、そこら中に氾濫しており、宿主が買ったか宿主の母親が買ったか、サアッと読み飛ばしながら、ほんのり楽しい一時の持てる読み物であった。獅子文六の小説をテレビドラマ化した連ドラも人気だったが、宿子の家はテレビ無し。その頃、演歌中心の歌謡曲ベストテンとアメリカンポップス中心の洋楽ベストテンが、宿主がエアチェックしているラジオ番組の代表的なものであった。翻訳歌詞らしきものを付けた日本人歌手のアメリカンポップスは吐き気を催した。メロディは原曲と同じなのだが、原曲では音符が単語に対応する感覚で、詩の世界がドラマティックに展開していく。ところが、その翻訳版では、音符一つが仮名一文字対応という縛りに頑なな日本の洋楽慣習から、内容が削られ情感が削られ、幼稚な世界に落とし込まれている。 喫茶店は大正昭和初期からの若者文化のシンボルであった。かかる音楽はクラシックだったり米国ポップス、あるいはウエスタンだったり。戦争の間、洋楽は禁じられ喫茶店も姿を消した。戦後、それが復活してギブミーチョコのパンパン時代から第1次安保1960年を経て、高度成長期にかかり、喫茶店はジャズ・アメリカンポップスと供に隆盛期を迎える。 一つ重要なデータを忘れてはならない。喫茶店文化を支えていた学生さん達、昭和初期では大学進学率は3%程度以下、そして、戦後、国立大学が各県に作られて大学生は急増したが、まだ大学進学率は1970年になっても短大生を含めても15%程度だったのだ。実は喫茶店で紫煙をくゆらしながらコーヒーを楽しんで放談していたのは、大衆の中の一部のエリート、一部のボンボン達(漱石風に言えばやはり高等遊民の仲間)だったのだ。 コーヒー豆の銘柄選択、焙煎の仕方、抽出法はネル袋か濾紙か、挽き方、そしてサーブの仕方、日本伝統の茶道に対応させて珈琲道を確立しよう。こんなことあったあった。懐かしき60年代。この頃、戦後生まれはまだ高校生以下の年代である。喫茶店で蘊蓄を傾けていた世代は皆、戦争体験者世代。 獅子文六の小説の世界を、琲道ならぬ可否道を極めるコーヒーショップをみんなで作ろうというような骨組みに、確り時代背景と当時の風情、そして戦争体験が生々しい人々の人生観死生観、それに基づく社会観を纏わせてドラマが進む。当時、突如現れたインスタントコーヒーの殴り込みに対する珈琲ファンの対応にも当時の人生観が鏤められている。かく言う和が宿主の朝食も、あっという間にパンとインスタントコーヒーになっていったことも記憶に残っている。 五戸真理枝のシナリオと演出は、その時代と人の心、そして、本来現代日本が基づかねばならなかったはずの平和の意味の実感的基盤認識、社会の有り様を、獅子文六の雰囲気をそのままに、獅子文六の口調のような雰囲気で、訴えてくる。 ウクライナへのロシア侵攻と常軌を逸し始めている独裁者プーチンを抱えている今日、実にタイムリーな芝居であった。真に好シナリオ好演出好公演。 文学座アトリエ公演、客席110は満席であった。 【中古】 コーヒーと恋愛 ちくま文庫/獅子文六【著】 【中古】afb 【中古】コーヒーと恋愛 (ちくま文庫)/獅子 文六 コーヒーと恋愛/獅子文六【1000円以上送料無料】 【新品】コーヒーと恋愛 獅子文六/著 [書籍のメール便同梱は2冊まで]/コーヒーと恋愛 (ちくま文庫) (文庫) / 獅子文六/著 コーヒーと恋愛 ちくま文庫 / 獅子文六 【文庫】 コーヒーと恋愛 (ちくま文庫) [ 獅子文六 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.04.03 02:45:04
コメント(0) | コメントを書く
[舞台・音楽・芸能パーフォマンス等々論] カテゴリの最新記事
|