富士には桜えびが良く似合う
前回蒲原宿入り口まで書いたが、実は同じ日に蒲原宿を通り越して由比(油井)まで行った。蒲原宿も由比の宿も昔を思い起こさせる古い町並みや家がたくさん残っていて東海道を歩いている実感が沸いた。特に蒲原宿は入り口から出口まで町おこしでもしたのか、古い町を残しながら東海道を歩く旅人だけでなく観光客も楽しめる街に工夫してあって楽しかった。新しい店も何かしら郷愁を誘う嗜好がしてあったり、建物の説明の案内板も昔の高札風に作ってあって町全体が中仙道の妻籠や馬込とまでは行かないが、江戸時代にタイムスリップしたような感じがした。そうだ、中仙道の奈良井宿に良く似ている。それでも、江戸時代のままの旅籠がそのまま残っていた。富士市を出てから山際を歩いてきたので昼食を取るような適当なところが無くかなりおなかが空いて来ていたので、江戸時代の旅籠の前で、どこかに食堂がないか探していたら、ちょうど通りかかったおじいさんが、「おいしい料理屋があるよ」 と教えてくれた。なかなか綺麗な料理屋だったが、意外と値段も安く、そして何よりおいしかった。ここから由比に向かっては桜海老の産地だそうだ、年に2回桜海老の季節があって、春の分はちょうど6月で終わりだと言うことだった。間に合ったわけである。私はせっかくだから季節の料理と言うことで、桜海老尽くし。2,100円。夫はうなぎ。浜名湖に着く前にまたうなぎ。桜海老の生、ゆでたもの、佃煮と桜海老のお吸い物、桜海老の掻き揚げ。おなかがいっぱいになったところでまた歩き始める。そこからは蒲原宿の西木戸を出たので、また車道と合流した道を由比に向かって歩く。車道ではあるが、道の両側の建物の多くは江戸時代までは行かなくても昭和のはじめぐらいのものがだろうか、古い家が両側に残っていてなかなか趣がある。家の軒にはツバメの巣。親の帰りを待っている顔がかわいらしい。歩いていると分かれ道に来た。ここからも交通量の多い道から分かれて旧東海道へ。歩くとすぐに由比宿の本陣公園。公園の中には広重美術館があった。ちょうど1ヵ月前にアメリカ人の友人がここを訪れていて、東海道ウォーキングでここまで来たら寄って見るように薦められていたので、お抹茶付きの拝観券を買う。歌川広重の浮世絵は横浜の歴史博物館でも見たことがあるが、ここのは東海道シリーズ。江戸日本橋からのが有って、今まで旅の途中で看板やコンクリートの壁や消防団の倉庫や店のシャッターに書かれた彼の浮世絵に親しんできた私にはどこか懐かしい。今はすっかり車が行きかう道になってしまったが、彼の絵を時々眺めながら歩くと昔の風景が想像出来て旅が楽しくなる。これから行く先の険しい山越えの絵がちと気になるが・・。東海道五十三次浮世絵ポストカードセットを自分のために、そのほかに何枚かをバラで買った。「どこまで行った」と聞く友人のために、そして海外で日本の旅を想像してくれている友人に、目的地に着くたびにそこの浮世絵を送ろうと思う。美術館の横の茶室でお抹茶を頂く。美術館の前は歴史上かの有名な由井小雪の生家だった。今はお土産屋になっているが藍の染物甕が店内に当時のまま残っていた。旅を終えて我が家に帰って来た後の話だが、隣家のおばさんが、「あの家の暖簾は紺屋だから紺色だったわよね」という。うーん、どうだったかな、紺色だったと思うが・・・と写真を見ると白だった。紺屋の白袴と言う諺があるが、まったくその通り!お抹茶を頂いてまだまだ元気な角さん(格さんかな)は、紺屋の横の東海道おもしろ歴史館で写真を撮った。このときは喜多八さんに戻って。由比の宿場の古い家並みの中を由比駅まで歩いてまた東海道線に乗って帰って来た。由比の宿場の家々の軒先には桜えびありますのピンクの幟がはためいていた。今回見られなかったが、海辺の桜海老を干している風景は富士によく似合うんだろうな。