米国はイラクとの開戦理由について「大量破壊兵器の保有」を挙げ、パウエル国務長官は国連でCIAが調べあげた証拠を提示し開戦の正当性を訴えた。しかしその後「イラク調査グループ」のデビッド・ケイは「イラクに大量破壊兵器は全く存在しなかった」と発表したため米国のイラク開戦に対する正当性が大きく揺らいだ。
何故CIAは情報を間違えたのかボブ・ウッドワードは著書「ブッシュのホワイトハウス」でデビッド・ケイの言葉を生々しく伝えている。2004年1月に任務を終了したデビッド・ケイはブッシュとの昼食会に呼ばれた。そこでブッシュはケイに「何故そのような結論に達したか」「何故CIAが間違えたのか」を質問している。
ケイの分析では「湾岸戦争以降フセイン政権は腐敗にまみれ大量破壊兵器を作れる状態ではなかった」ようだ。ウラン濃縮用と疑われた高精度アルミ菅も調査の結果「通常兵器」の原料であった。なんとフセインの息子の友人が製造していた低品質のロケット推進薬をカバーするため高精度アルミ菅が必要だったというお粗末さである。
またケイは「フセインは大量破壊兵器を保有していると思われたかったためCIAはそれにひっかかった」と説明した。フセインはまさか米国が攻め込んでくるとは思っておらず、むしろ国内のクルド人やシーア派を恐れており大量破壊兵器を保有しているという脅しのポーズが必要だったのだろうと推測している。
ケイはブッシュに対しCIAは「最新情報にばかり目をむけ全体の流れを捉える事ができなかった」と指摘、また「大統領が興味を示したことを最優先事項としてしまう」ため「大量破壊兵器がある」とか「アルミ菅は核開発に使われている」ことを前提に情報を集めていたと述べている。
さらに「人的情報収集」をおろそかにし通信傍受など「技術的情報収集」に頼りすぎて重要情報を見落とたことも指摘している。最期に首席補佐官の「世界で最も優れた情報機関は?」の質問にケイは英国のSISやイスラエルのモサドではなく中国の情報機関を挙げた。現在、日本で問題化している「イージス艦機密漏洩」もひょっとすると中国が関っているのかもしれない。
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