イラク紛争を収めるための次官級による「イラク復興関係国会議」が3月10日に開かれ、米国が紛争の黒幕と非難するイランやシリアも参加した。4月中には外相会議も開かれる予定で、これが開かれるとブッシュ政権の穏健派が苦労してきたイラクの復興にも光がさし米国とイラン、シリアとの緊張が緩和される可能性もでてきた。
ところが3月23日にイラク南部に駐留する英国海軍の15人の兵士がイラク・イラン国境付近の海域でイラン軍(革命防衛隊)に拘束されるという事件が発生した。ブッシュ政権の強硬派は昨年来、イランを挑発することでイランの核開発設備を空爆する口実を得ようと様々な陰謀を巡らしてきている。
例えば今年1月、イラク北部のイラン領事館に外交官として駐在していた5人の工作員をイラク駐留米軍が「ゲリラ支援」の容疑で拉致・拘束している。どうやら今回の事件もチェイニー等強硬派と通じた英国の「軍産複合体」がイランを挑発する目的でイラン・イラク双方が自国内と主張する海域に英軍兵士を越境させた可能性がある。
事件後の3月27日にロシアの諜報機関は、イラク駐留米軍がイラン国境近くに結集していると指摘し、また欧米の分析者の間では米国がイランを空爆するという見方が強まった。ブレア首相は3月28日までにイランとの経済関係を凍結するなど強硬姿勢であったが、紛争拡大を恐れ3月31日には柔軟姿勢に転じ兵士返還の交渉を進めている。
一方、イランのアハマディネジャド大統領も米国の動向を察知し、挑発に乗らないよう4月4日には恩赦によって英兵士全員を釈放した。イランの英兵返還によって米国は空爆の理由を失ない戦争の危機は一時回避された。果たして次なる強硬派の挑発は何時どのような形で行なわれるのであろうか。危機は依然として続いている。
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