カテゴリ:♪本の覚え書き♪
1945年バルセロナ。霧深い夏の朝、少年ダニエルは父親に連れて行かれた「忘れられた本の墓場」で1冊の本に出会い深く感動するのだった。そしてその作者フリアン・カラックスに強い興味をよせその謎に包まれた過去を調べだした。それは内戦に傷ついた都市の記憶を甦らせるとともに、愛と憎悪に満ちた物語の中で少年の精神を成長させるのだった…。 どこかの図書館が閉鎖されたり、本屋が店じまいしたり、一冊の本が世間から忘れ去られてしまうと必ずここへやって来るという『忘れられた本の墓場』。 「ダニエル、きょう、これから、おまえが見にいくもののことは、誰にも話しちゃだめだぞ。」そう硬く約束させられ、十歳になったダニエルは古書店店主である父親に『忘れ去られた墓場』へと連れてゆかれるところから話は始まります。 「この場所にはじめて来た人間は、一つの決まりがある。ここにある本を、どれか一冊えらぶんだ。気に入れば、どれでもいい。それをひきとって、ぜったいにこの世から消えないように、永遠に生き長らえるように、その本を守ってやらなきゃいけない。とっても大事な約束なんだ。いいか、一生の約束だぞ。」と言い聞かせられてダニエルは迷路のような本の墓場へと歩き出します。 もうこの最初の部分だけで私の心はがっしりと鷲づかみにされていました。 ダニエルを囲む内戦後のバルセロナだけでも異様な空気が流れています。しかし徐々に明かされる謎の作家フリアンの過去は、腐敗と愛と冒険に満ち溢れスリルとサスペンスで窒息しそうな展開を見せるのです。 さらにさらにダニエルとフリアンが交錯するような事態に…!?もう読む目を休めることはできなくなっていました。 読書とは体力との勝負!肩が凝りだして頭痛でも起こったら大後悔するに違いない!! そう考えた私は上巻を読み終えると買い物がてらウォーキングを開始し、腕を上下させることを重点としたストレッチを充分にして、二日分の献立を考え、この物語に集中する環境を整えたのでした。…そこまでするか(笑)。 しかしそこまでするに値する物語でした。 訳者のあとがきにも書かれているのですが、ちょっと出の人物でさえもその人となりが表れるように描かれていて、登場する人物すべてが個性的で頭の中でも描きやすく印象的なんです。 この本の作者はカルロス・ルイス・サフォンなのですが、読み終えたとき、私の中ではフリアン・カラックスとインプットされていました。 『風の影』この本を忍ばせているだけで私も彼らの物語に取り込まれている気になってしまうのでした。 今年最高の一冊!と読後の余韻にまだまだ囲まれつつ豪語するのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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