護国寺の中華屋さんに緊張を強いられる
「東京の都心にありながら 江戸の面影をいまに伝える護国寺は 訪れる人々の心のふれあいの場として 昔も今も変わりなく親しまれています。」(公式HP)という護国寺界隈は、その正面となる江戸川橋方面こそ講談社があったりとそれなりの賑わいがありますが、他方面は住宅街と地域を分断する大きな道路、そして墓地が大部分を占める閑静といえばこの上なく閑静なエリアであります。そんな土地柄だから呑み屋どころか飲食店もごく限定される訳で、その分、界隈の人たちはこれらの店のことを大事に思っているように感じられるのです。店が少ないから愛されるのか、それとも大事にされている店だけが生き延びているのかは、それぞれの店の今を実際に訪れて食べて呑んでみるしか確認のしようがないのです。それにしても護国寺のような広大な敷地を持つ施設を背にして商売するというのは相当なプレッシャーがあるように思うのだろうけど、どうなのでしょう。 この夜は、「中華 栃尾」にお邪魔しました。ごく真新しく、町中華らしい風情は微塵も感じられぬ構えの店なのですが、この界隈で暮らす住民や講談社の関係者たちのような比較的リッチ層の人たちを満足させるためには店も小汚い訳にはいかないのでしょう。この夜は下戸の年長の友人と一緒でした。店に入り、店の方にビールの有無を尋ねるとぶっきらぼうに「ビールしかない」とのお答えであった。もう少し言い方ってのがあるんじゃないなんて思いつつもおくびにも出さぬよう気遣いつつ2人掛け席に腰を下ろすのでした。注文時に言葉が発せられる以外は、店内には厨房からのガコンガコンという中華鍋を叩きつける音が響き渡るのみでありまして、雑談しつつ長っ尻することを拒絶するという強い意志が汲み取られるのでした。しかしいいオヤジの我々は店主らが苛立ちをあからさまにするギリギリ手前を見極めてせいぜいくつろぐことにするのでした。にしても今改めて見てもここの焼きそばと餃子は立派だなあ。見た目の麗しさが若干実際の味を凌駕しているような気もするけれど、ちゃんと美味しいんだからねえ。ネットで他の料理も確認してみたのですが、とにかくチャーシューを筆頭に具材がごっつくでかくて実に魅力的なのだ。これは確かに長居されたくはないはずです。ここではグイグイガツガツに徹してちんたら過ごすことは諦めた方がいいかもしれません。きっと、我々が去ったら入れ代わり立ち代わりにお客さんが訪れるのでしょう。