健康コラム

　１８世紀から１９世紀にかけて起こった社会的な構造の変革、産業革命ほどではないにしても、一つのテクノロジーの登場で社会が大きく変わり、それまでとは大きく違ったものになってしまうという事は、これまでも多く見られてきました。

　近年はＩＴに関する事が多く、通信技術や端末をはじめとする機器の進化など目覚しいものがあり、次にどのような変革が行われ、社会が変わっていくのか予想もつかないものがあります。

　そんな中、後の歴史に第二の産業革命として位置付けられるのではないかといわれる技術があります。その技術の中核となる物はプリンター、電子化が進む中でどちらかというと紙に情報を印刷するという旧時代の存在のように思える存在です。

　プリンターの進化というと印刷するドットをより細かくして画像をきめ細かくする、データが入力されてからの印刷時間の短縮、印刷後、安定して長い時間に渡って印刷の品質を保つといった事しか思いつきません。そんなプリンターに与えられた新たな可能性、それが３Ｄ印刷となっています。

　３Ｄプリンターの産業への応用についてはコストや一つの印刷を仕上げるまでの時間が掛かり過ぎ、大量生産には向かない技術であり、用途が限られているとされていました。しかし、従来の概念とは異なる利用法への応用が進められ、それによって俄かに大きな可能性を持つものへと変化しています。

　先日、３Ｄプリンターは医療への応用として生後、６週間の男の子の命を救ったとされます。先天的な異常として片方の肺へと通じる気道が頻繁に閉塞してしまう症状を持ったその子は、毎日のように緊急蘇生を受ける事で命を繋いでいました。

　そんな男の子に対し、気道のＣＴスキャンデータと精密な加工が可能な３Ｄプリンターを用いてバイオポリマーを塗料とした印刷を気道内に行い、乳児の細い気道内に柔軟性のあるチューブを作成して男の子の自力での呼吸が可能な状態を作り出しています。

　また、テキサス州のベンチャー企業では３Ｄ印刷を用いてピザを調理する計画が進められています。ピザというのは象徴的な存在に過ぎず、実現すれば宇宙空間において美味しく、栄養豊かな食事を提供する事が可能となるといいます。

　タンパク質や炭水化物、油脂といった成分を大量に保存可能な状態にして塗料代わり使い、微細な３Ｄ印刷する事で料理を再現するという技術は、宇宙空間だけでなく人口の増加による食料の不足を補う技術となる可能性も考えられ、世界を救う技術ともなっています。

　今のところお手軽な食事となると冷凍食品やフリーズドライの食品を思い浮かべますが、やがて食用トナーを使った電子データによるプリントアウトという事が定着するのかもしれません。かつて指定した料理が出てくる機械が登場するＳＦ映画の一場面に憧れた事があるのですが、それが実現するとなると意外と味気なく思えてしまうのはわがままなのかとも思えてきます。